興奮と困惑がない混ぜになっていて、まだ事態がうまく掴めていない。あのエンドムービーにはいったいどんな意味があったのだろうか……。
“病み可愛いで世界征服”をヴィジュアルコンセプトにした5人組のアイドルグループ、ぜんぶ君のせいだ。が7月24日(金祝)に中野サンプラザホールにて有観客のワンマンライブ「生鳴兆候(バイタルサイン)」を開催した。YouTubeにて同時中継もされていたが、彼女たちが観客を入れたワンマンライブをするのは、18公演中7公演が中止になってしまった未開拓&生誕ツアー「未夢命TOUR 2020~Imada mumei~」の秋田公演(3月21日)以来、実に5ヶ月ぶり。マスクをつけた観客はソーシャルディスタンスを保った状態で入場し、検温と消毒を経て、前後左右が一席ずつ空けられた客席へ。ホールは場内を仕切る扉だけではなく、屋外へと通じる扉も全て開演直前まで開かれており、徹底的に換気がなされていた。さらに、場内アナウンスでは、飛沫感染防止の観点から、コールや発声の禁止と着席による観覧の徹底が告げられていた。これまでに見たことのない風景ではあったが、推しのグッズを身につけて、ライブ会場に集まれるというだけでも、少し前進したという特別な感慨と喜びがあった。
開演時間になるとオープニングムービーが流れ白衣に身を包んだバンドメンバーに続き、ぜん君。メンバーが一人ずつステージに姿を見せた。小さな声で言葉を呟いているメンバーの声がだんだんと重なっていき、5人揃ったところで髪の毛をかきむしりながら「ぜんぶ君のせいだ!」と絶叫。如月愛海が「全員、コブシあげろ!」と煽ったハードでメタリックなロックナンバー「When you 2 WANT」でライブの口火を切り、「メスゲノムフェノメン」では観客も一緒にファニーなダンスを手振りだけで踊り、愛海と一十三四のデスヴォイスが交錯する「みすふぃっとらゔぁーず」では自然とクラップが沸き起こった。凪あけぼのを追いかける愛海の笑顔が印象的だった「Antilyours」では戦隊もののヒロインのようなポーズを見せ、うずくまる征之丞十五時とましろを飛び越えていく「オルタナティブメランコリー」では、観客が大きく手を振る中でましろが乱調の中の美のような歌声を響かせ、ささやかな投げキッスも届けた。
ましろによる自己紹介から流れるように「無題合唱」へ。5人それぞれが別の方向を見ながら絶唱したあと、お互いの顔を見つめながら手を握った。続くポップチューン「キミ君シンドロームX」ではよつが「最後まで楽しんでいきましょう~。いくよ~」と笑顔で語りかけたが、途中で十五時が歌いながら涙を流し、気付いたぼのが手を握るシーンもあった。「無題合唱」の余韻なのか、愛海も感極まっている様子で、歌い終わると、観客に向けて「待っててくれてありがとう」と感謝の気持ちを述べ、深々とお辞儀をした。
ぼのを中心に5人で星の形を作ったエモロック「ねがおじぇらすめろかおす」では、患いさん(ファンの総称)に向けて<ぜんぶ君のせいだー!>と叫び、両手を使ってぐるぐると一緒に踊った「独白園」では、愛海と十五時が両手を繋いでぐるぐるとまわり、ぼのとよつはハイタッチを交わした。愛海がぼのを抱きながら熱唱した「Cult Scream」ではライブハウスのようにコブシが上がり、場内の熱量は次第に増していった。よつのデスヴォイスから始まり、愛海とましろも応戦する「WORLD END CRISIS」、愛海が歌うましろをおんぶした「せきららららいおっと」、観客が一斉に手を上げ、メンバーと小指で約束を交わした「僕喰賜君ノ全ヲ」。そして、みんなで一緒に笑い合いたいんだというメッセージを込めた「唯君論。(ZKS EDIT)」によって、ホールには言いようのない一体感が生み出されていった。ライブの鉄板曲である「ロマンスセクト」や「Sophomore Sick Sacrifice」で観客が挙げたコブシには、ここまで以上の強さが感じられた。声は出せないし、モッシュやダイブもできないものの、心の中で<ファイ! ファイ!>と叫んでることが十分に伝わってくる熱量があった。メンバーが何度も倒れては立ち上がる「ぜんぶ僕のせいだ。」では<ただそこで生きて>と歌いながら、愛海が涙を流し、ましろがそっと寄り添うシーンもあった。ここで5人は整列し、生声で挨拶して、ステージを降りた。
ここまで約1時間のパフォーマンス。突然の終わりに戸惑う観客だったが、ステージ後方に設置されたスクリーンに「換気完了まで10:00:00」というタイマーが表示され、換気タイムが設けられていることを理解。10分間の換気を経たアンコールでは、キュートなポップナンバー「やみかわぐんぐんか」で5人がわちゃわちゃと触れ合い、「わがまま新生Hominina」では、ましろを中心に5人が抱き合ったままで歌唱。五人五色のソロコーナーを挟み、「世界にたった一人ちっぽけな君を」ではメンバー同士で手を握りながら歌い継ぎ、十五時は再び感涙。最後に、愛海が会場全体をゆっくりと見渡し、「みなさん、今日は来てくれて本当にありがとうございます」と語り、ましろがスピーカーに片足を乗せながら熱唱した「革鳴前夜」では、5人がアイコンタクトをとりながら声を重ねていき、ぼのの瞳から流れる涙と共に5ヶ月ぶりのワンマンライブは締めくくられた。
終演後には、心電図の波形が直線になり、心音が止まるというエンドムービーが流された。ぜん君。の心臓は再び動き出したのではなかったのか……。戸惑ったままで帰途につくと、午前0時を過ぎた頃、公式アカウントから<昨日7/24(金祝)中野サンプラザ公演を経て、この度ぜんぶ君のせいだ。は8月の初旬を目処に"一時"活動休止致します>という発表がなされた。詳細は後日、改めてアナウンスするという。この“一時”が何を意味するのか。エンドムービーの続きはあるのか。今はまだ、何もわからないままでいる。
SET LIST
01.When you 2 WANT
02.メスゲノムフェノメノン
03.みすふぃっとらゔぁーず
04.AntiIyours
05.オルタナティブメランコリー
06.無題合唱
07.キミ君シンドロームX
08.ねがねおじぇらすめろかおす
09.独白園
10.Cult Scream
11.WORLD END CRISIS
12.せきららららいおっと
13.僕喰賜君ノ全ヲ
14.唯君論。(ZKS EDIT)
15.ロマンスセクト
16.Sophomore Sick Sacrifice
17.ぜんぶ僕のせいだ。
ENCORE
EN1. やみかわぐんぐんか
EN2. わがまま新生Hominina
EN3. Lil’ Shine Bright Three oclock
EN4. 秘夜サブリミナル
EN5. Coquetry Biting
EN6. Cartain Call
EN7. ルーズリーフ
EN8. 世界にたった一人ちっぽけな君を
EN9. 革鳴前夜