Xmas Love
2019年12月21日(土)TSUTAYA O-EAST
毎年恒例とも称せるORIGINAL LOVEによるクリスマス限定のスペシャルライヴが東阪にて行われた。東京公演は12月21日、会場はここ例年行われているTSUTAYA O-EAST。昨年のバンドスタイルを挟み、今年は当初からのスタイルであるアコースティックセット。田島貴男の充実した1年間の活動を振り返り、歌とトークと共に今後のさらなる成功をあらためて確信した一夜となった。
当日、田島本人も振り返っていたのだが、今年は例年以上にORIGINAL LOVEの名前が多く世に響いた年でもあった。初頭の最新アルバム『bless You!』のリリースと、収録曲たちの街鳴りを始め、春には恒例の『弾き語りツアー』。夏に入ると、上記新作を掲げて全国を回った『bless You!Tour』に加え、初の『FUJI ROCK FES.』への出演。はたまた秋には恒例の『ひとりソウルツアー』や、松田龍平×松山ケンイチ主演の連続ドラマ『歪んだ波紋』で「四季と歌」が主題歌となり、そして冬には『井上陽水トリビュート』への参加や、草なぎ剛とのライヴ共演も記憶に新しい。それらも関係したのだろうか? この日はコアなファンのみならず、これまで以上により幅広く多くの方の来場が見受けられたのも印象的であった。
場内に入ると、無人のステージにセッティングされた各位の機材の他に、電飾を煌びやかにさせた巨大なクリスマスツリーが我々を出迎えてくれた。暗転すると、各位サンタ帽をかぶった田島を筆頭に、木暮晋也(A&E.ギター)、鹿島達也(ウッドベース)、真城めぐみ(コーラス&パーカッション)、冨田謙(マンドリン&鍵盤)がステージに現れる。木暮はサンタ然とした白髭までも着用だ。
配置に付いて準備を整えると、「The Little Drummer Boy」(インスト)がセッションのように滑り出す。田島はフルアコ、木暮はアコギを用い、まるでホームパーティーにでも誘われたかのような温かい雰囲気が会場の隅々にまで浸透した。田島のギターが他著名クリスマス曲のフレーズを交え、白熱や高揚感を加えながらアドリブたっぷりに泳ぎ回る。続いて『bless You!』収録の「ハッピーバースデイソング」に入るとライヴが軽やかに走り出していく。ここからは田島のソウルフルな歌声も合わさり、場内もクラップと共にゆったりと揺られ始める。
田島がアコギに、冨田はマンドリンに持ち替え、牧歌的でブルーグラスアレンジが施された「帰りのバス」が会場に楽しげさを寄与すれば、これまたシャッフルの映える「99粒の涙」で歌が想起する流れゆく景色と移り変わっていく心に想いを馳せていく。同曲では木暮のバンジョー的なギターソロや鹿島のベースソロ、田島による饒舌なスキャットも楽しめた。牧歌性を保ちながらも向かうはデルタ地帯へ。ブルースタッチにアレンジされた「サーディンの缶詰」では、木暮によるボトルネックを活かしたスライドも印象深い。
“クリスマスの曲は寂しい曲が多い。だからこそみんなで聴きたい”(田島)と入ったスタンダード曲「Blue Chiristmas」の際には、ムーディさたっぷりに歌う田島を始め、ハワイアンジャジースタイルにて送られた。
“この日が東京でのライヴ納め”と語る田島。“今年も色々とお世話になりました”と冒頭のエポックにも触れていき、久々となった今秋のドラマタイアップ『歪んだ波紋』の話にも言及。冨田も鍵盤へと持ち直し、その曲でもある「四季と歌」へ。同曲では四季を通してこの一年を振り返らせ、会場が“来年も変わらず君と一緒に”という空気に包まれていくのを感じた。そして田島がリゾネーターギターに持ち変え、足でタンバリンとキックを踏み、育まれたリズムと共に贈られた「エブリデイエブリデイ」では、スキッフルのリズムのうえ同曲が軽やかに走り出していくのを見た。また、次のMCでは『陽水トリビュート』に参加したことにも触れ、リクエストに応えて陽水の「クレイジーラブ」の触りだけをサービスに歌ってくれたのも思い出深い。
中盤以降は躍動感のあるアレンジが耳を惹いた。まずは「Good Morning Good Morning」が“遠くへ出かけようよ”と誘い、田島も多大な影響を受けたダニー・ハザウェイの「This Christmas」のカバーの際には、フロア頭上の巨大ミラーボールも回り出し、至福な気持ちにさせてくれた。また「ラヴァーマン」では、歌われる《誰にも止められないさ》を立証するかのように、会場とステージが共になる一体感も味わえた。
対して、ソウルフルな「グッデイガール」からはR&Bも楽しめ、ステージから放たれるグルーヴに会場がより左右に揺られていく。そして『bless You!』から会場をさらに盛り上がりの坩堝へと導くべく「ゼロセット」が、開放感のあるサウンドの上、一度の人生、最後まで攻めようと場内を鼓舞した。
後半はORIGINAL LOVEの国民的ヒット曲や代表曲たちがオリジナルとは違った側面で楽しめた。「接吻」では鹿島が弓に持ち換え、田島はフルアコ。ジャジーにウォームな4ビートのアレンジに生まれ変わった曲中、田島もフェイクやアドリブを交えて歌う。また、会場に弾んだ心持ちを寄与してくれた「朝日のあたる道」では、アップテンポに生まれ変わったアレンジと共にエターナルさが呼び込まれていく。『bless You!』からタイトル曲が現れた時には会場中も驚喜。グイグイとステージへと惹き込まれていくのを感じた。
そして、本編最後の「JUMPIN’JACK JIVE」では、アドリブ全開なクリスマスフレーズを交えたコール&レスポンスが一体感を育ませていく中、ビバップやジャイヴ、ブギウギを交えた同曲の上、田島も立ち上がりキャブ・キャロウェイばりのスキャットやステップを披露してくれたのも記憶に残っている。
アンコールは2曲。これまでとこれからを感じさせてくれる曲たちが贈られた。木暮も立ってプレイし、オルガン音も特徴的だった「Winter’s Tale」。そして『bless You!』からの「逆行」が、“これからも長いものに巻かれず今年以上にこのスタイルを貫き、さらに良い年にしてやる!!”との誓いのようにも響いた。ラストはとてつもない盛り上がりと高揚感にて会場をまとめ上げ、来年への期待値を更に引き上げたのだった。
“2020年もさらに頑張ります! 良いお年を!!”の言葉で彼らはステージを去った。そこに残された言葉は短いながらも十分に信憑性のあるものであった。来年度も既に、1月25日には仲間たちと一緒に行う自主企画『Love Jam vol.5 』が、そして2月には恒例の『弾き語りツアー』も控えている田島貴男。そう、田島貴男、ORIGINAL LOVEは、来たるべく2020年もさらに突っ走り、その加速度を上げていく。そしてその口火は、早くもこの東京での2019年最後のライヴから始まった!! 今は来年度へのスタートダッシュの瞬間に立ち会えた、そんな嬉しい気持ちでいっぱいだ。
SET LIST
01. The Little Drummer Boy
02. ハッピーバースデイソング
03. 帰りのバス
04. 99粒の涙
05. サーディンの缶詰
06. Blue Chiristmas
07. 四季と歌
08. エブリデイエブリデイ
09. Good Morning Good Morning
10. This Christmas
11. ラヴァーマン
12. グッデイガール
13. ゼロセット
14. 接吻
15. 朝日のあたる家
16. bless You!
17. JUMPIN’JACK JIVE
ENCORE
01. Winter’s Tale
02. 逆行