NUMBER GIRL TOUR 2019-2020『逆噴射バンド』
2019年12月15日(日) 豊洲PIT
※セットリストの掲載があります。ツアーを楽しみにされている方の閲覧はご注意ください
「2018年初夏のある日、俺は酔っぱらっていた。そして、思った。またヤツらとナンバーガールをライジングでヤりてえ、と」
そんな向井秀徳(Vo・G)のコメントとともに、NUMBER GIRLが電撃復活を発表したのは今年2月のことだった。実際、台風直撃の影響によって「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」への出演こそ叶わなかったものの、7月27日・新宿LOFTワンマン、さらに日比谷野外大音楽堂を皮切りに夏の列島を熱くたぎらせた「TOUR『NUMBER GIRL』」、と立て続けに行われたNUMBER GIRLのライブは、2002年の解散から17年経っても誰も上書きできなかったオルタナティブロックの衝撃と凄味を、2019年という今この時代にまざまざと見せつけるものだった。
そして――2020年3月1日・Zepp Tokyo(追加公演)まで全13公演に及ぶ全国ツアー「NUMBER GIRL TOUR 2019-2020『逆噴射バンド』」が、ここ東京・豊洲PITでの2Days公演で幕を開けた。その2日目・12月15日の会場には、解散前から4人を追い続けたファンのみならず、バンド不在の17年間の時期にその魅力にヤラレたであろう若いファンも多数詰めかけ、開演の時を待つ。テレヴィジョン“Marquee Moon”のSEが高らかに鳴り渡り、向井秀徳、田渕ひさ子(G)、中尾憲太郎 45才(B)、アヒト・イナザワ(Dr)が舞台に姿を現すと、キャパ3000人超の豊洲PITが雄叫びのような大歓声に包まれる。
「年末、夕暮れ。銀座・並木通り。人混みかき分け、勝鬨橋のボルトのあかぎれ、今日も……今日も、鉄のように鋭い風が、吹いています」
厳かさとユーモアの入り混じった向井の口上とともに流れ込んだのは“鉄風 鋭くなって”。中尾憲太郎のベースサウンドが、4人一丸の鋭利なアンサンブルが、フロアの熱気を切り裂きかき乱していく。ひりひりと胸を焦がす鉄弦の軋み。太鼓と銅板の大音響。向井の渾身の咆哮――そんな唯一無二のファクターのひとつひとつが奇跡的なバランスを描きながら、観る者の衝動を歓喜の果てへと突き動かしていく。
7月の新宿LOFT、8月の日比谷野音、と彼らの復活後のライブを目の当たりにしてきたが、今回のツアーに臨んだNUMBER GIRLはそのいずれの公演とも異なる堂々たるタフネスを備えていた。同時にこの日のアクトは、17年前の解散間際のキワキワの緊迫感とも明らかに異なる、「NUMBER GIRLという時間」を4人それぞれが全身で謳歌している「今」の痛快な開放感をダイレクトに伝えるものでもあった。
“タッチ”から“ZEGEN VS UNDERCOVER”へと紅蓮のロックを畳み掛けつつ、“ZEGEN〜”のイントロでは《ヤバイ さらにやばい バリヤバ》の大合唱が沸き起こり、“EIGHT BEATER”〜“IGGY POP FANCLUB”の躍動感がフロアをでっかく揺らしていく。“裸足の季節”の狂騒感を無限増幅する田渕のギターソロも、鉄壁のアンセム“透明少女”を激烈疾走させるアヒト&中尾の鋼鉄ビートも、“YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING”で燃え盛るセンチメントを突き上げる向井の絶唱も、それらすべてが会場の熱量を天井知らずに高めていく。
初日に比べても饒舌だったらしいこの日の向井。「さて、5週勝ち抜きなるか?ショーパブ上がりの実力派、NUM-AMI-DABUTZの登場だ!」の導入から“NUM-AMI-DABUTZ”へ突入したり、「大五郎!これより冥府魔道に入るぞ」と『子連れ狼』の拝一刀よろしく“SASU-YOU”の音の斬り合いに雪崩れ込んだり……とMCも絶好調。時折ぐびりとドリンク(焼酎のソーダ割り)で喉を潤しながら、曲を重ねるごとに豊洲PITを向井ワールドの奥底へと引きずり込み、フロア一面を12月とは思えないようなむせ返るような熱気で満たしていく。“水色革命”や“ウェイ?”といったインディーズ時代の楽曲には、さすがに長年のファンと新規ファンとの間でリアクションに温度差が見える場面もあったが、それすらもライブの醍醐味として楽しんでいくようなモードが、この日のNUMBER GIRLのステージには確かにあった。
“転校生”をはじめ、このツアーで久々に演奏された楽曲に触れるたびに「まだあの曲も聴きたい!この曲もやってほしい!」と積年の想いが募る中、「福岡市博多区から参りましたNUMBER GIRLです。ドラムス、アヒト・イナザワ!」の向井のコールとともに叩きつけたのはもちろん“OMOIDE IN MY HEAD”! 4人の激演越しに立ち昇る透き通った青春性が、会場一丸のシンガロングを生み出していく。そして、本編ラストの“I don’t know”で真っ白にスパークする轟音が、観る者すべての頭と心を戦慄と狂喜へと塗り替えてみせた。
アンコールでは“桜のダンス”、“KU〜KI”と連射したところで、最後は「やっぱり結局、あの娘は透明少女!」と本日二度目の“透明少女”へ。「NUMBER GIRLという衝撃」の核心を、出し惜しみも死角もなく、しかも「あの時代の続き」ではない今の迫力と存在感をもって露わにしてみせた、最高のロックアクトだった。
SET LIST
01. 鉄風 鋭くなって
02. タッチ
03. ZEGEN VS UNDERCOVER
04. EIGHT BEATER
05. IGGY POP FANCLUB
06. 裸足の季節
07. 透明少女
08. YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING
09. NUM-AMI-DABUTZ
10. Sentimental girl’s violent joke
11. DESTRUCTION BABY
12. MANGA SICK
13. SASU-YOU
14. ウェイ?
15. U-REI
16. TATTOOあり
17. 水色革命
18. 日常に生きる少女
19. 転校生
20. OMOIDE IN MY HEAD
21. I don’t know
ENCORE
22. 桜のダンス
23. KU〜KI
24. 透明少女