TEXT:兵庫慎司
PHOTO:白石達也
『Bentham全国ワンマンツアー 「Get the ExP~ベンサムがあらわれた!ライブにきてほしそうにこっちをみている~」』という、昔懐かしいRPGを模した長いタイトルが冠せられた、7月6日発売の4枚目のEP『ExP』のリリース・ツアーにして、このバンドにとって初めてのワンマンツアー。下北沢シェルターでスタートし、全国を巡り、さらにそのツアーの日程の合間にイベントや対バンゲスト等も何本も入っていたりしつつ、とにかくその末に10月27日(木)LIQUIDROOMにてファイナルを迎えるスケジュール。
以下、その初日の9月2日(金)下北沢シェルターなのだが、セットリストなどを含め、あんまりネタバラシするのはなしだと思うので、これは書いていいかな、と判断できることだけ、拾っていきます。
まずセットリスト。『ExP』収録の7曲、結果的にすべて演奏された。この初日だけなのか、これ以降のツアーもそうなのかはわからないが、7曲いずれも、「ここでどうだ!」みたいな、セットリストのヤマ場というか、肝心なポイントというか、とにかくいいタイミングでプレイされた……何曲目だったか書けないのでこんな言い方になってしまったが、とにかく全体のセットリストの中で新しい曲たちが「効いている」ということだと思ってください。
そして。Bentham、ワンマンで全国を回るツアーは初めてだとはいえ、東京では今年4月30日に代官山UNITでフリーライブで初ワンマンを行っているし、それ以降春も夏もイベントとかフェスとかでいっぱいステージに立っている。つまり、ライブを観られる機会が限られていたわけでは、べつにない。
にもかかわらず、オーディエンスの温度、異常に高かった。ステージとフロアの距離が近いシェルターという場が持つ熱のせいもあるのか、ワンマンでたっぷり観るのを心待ちにしていたからそうなったのか、4人がステージに現れる前から、飢餓感にも似たちょっと異様な熱気が立ち込めている。
最初にドラム鈴木敬がサングラスかけてひとりで出てきてオーディエンスをあおると、その温度はさらに高くなり、彼がいっぺんひっこんでメンバー揃って登場し、1曲目が始まった瞬間に大爆発。あとはそのまま最後まで──本当にそんな感じだった。つまり、オーディエンスをそんなふうにしてしまうバンドである、オーディエンスにそんなふうに求められるバンドだということだ、今のBenthamは。
最初のMCで小関竜矢(Vo.Gt)は「(フロアが)俺らよりアガってるじゃないか!ってびっくりした」「ちょっともう泣きそう」などと言っていた。そのオーディエンスの熱の高さに圧倒された、ということだ。また、ライブが約半分まで進んだあたりのMCで、鈴木敬、思わず「……ワンマンって長いね」ともらしてフロアの笑いを誘っていたが、あれも同じだと思う。普段まだワンマンじゃないライブのほうが多い、こんな長い尺のライブをやり慣れていない、というのもあるんだろうけど、それ以上に、オーディエンスの熱にひっぱられて、自分も短距離ダッシュのような体力と精神力をもってプレイすることになり、途中で自分が消耗していることに気づいて「あとどんくらいだっけ……えっまだ半分? ワンマンって長いなあ」と思ったのではないか。と、推測します。
それもあってか、鈴木敬、今日からツアーが終了するまでアルコールを断つことを、突然宣言していた。ベースの辻怜次は「マジで!ツアー中の飲み友を失った!」と素でショックを受けていたので、ガチなんだと思う。
小関竜矢は、さっきも書いたようについ感極まったりしながら、そして何度も熱い言葉を口にしながら、懸命に、必死に、力の限り、1曲1曲を歌っていく。そうしないとこのオーディエンスのエネルギーに負けるという重圧、そんなふうに自分たちに正面から期待をぶつけてくるオーディエンスがいるという喜び、その両方を正面から受け止めて放ち返すことを、すべての曲で続けているように見えた。
とりあえず、全国各地で毎回こんなライブをやり続けるのであれば、イヤでも鍛えられ放題鍛えられることになると思う。ファイナルのリキッドルームを迎える頃にどんなバンドになっているのか、楽しみになった。