岸田教団&THE明星ロケッツ
REBOOT TOUR 2019
209年3月23日(土)EX THEATER ROPPONGI
「今回のREBOOT TOURを通して、我々は何なんだろうとずっと自身に問いかけてきた訳ですけど。その結果…」。アンコール、リーダーの岸田(Ba)が晴れやかな表情でそう語りかる。
さてさて、気になるその続きはーー。
最新アルバム『REBOOT』を掲げてスタートした今回のツアー<REBOOT TOUR 2019>は非常に特殊なツアーだったといえる。ツアー初日となった2月28日は、このバンドが始めてステージに立ったCLUB CITTA’川崎にて、『REBOOT』収録曲はいっさいやらずにバンド自らに原点回帰を促すために、彼らの原点の一つといえる“東方only”のセットリスト公演で幕を開けた。レア曲満載で、とにかく濃縮感の濃いミラクルな公演となった初日ライブは「なんであれを観ておかなかったんだ」と、見逃したファンの間でささやかれるほど“神セトリ”の夜となった。初日で原点回帰を終えて以降は、『REBOOT』収録曲も少しずつフィーチャーしていきながら、バンドの歴史を紐解くように会場ごとにセットリストを毎回チェンジ。10年以上あるバンドのヒストリーを確認しながら、このツアーを通して自らをREBOOTしていった彼ら。そうしてたどり着いた、ここ東京・EX THEATER ROPPONGIのファイナル公演。スタディングフロア、スタンド席から膨れ上がるオーディエンスの情熱と共鳴しながらどこまでも燃え上がり、汗だくの感動を呼び起こしていったこの日のアクトは、ライブの感動と同時にこの岸田教団&THE明星ロケッツというバンドがREBOOT後も同人サークルというマニアックな熱狂性が濃縮したところから始まったというプライド、意地を絶対に失いたくない。そんな強い気迫が心に残るライブとなった。
5分押しで場内が暗転。観客のクラップが鳴り響くなか、楽器隊のメンバーがオンステージ。スポットライトを浴びて、みっちゃん(Dr)がパワフルなドラムソロを叩きだす。ichigo(Vo)の登場とともにそのichigoの歌がドラマチックな場面を作る「Decide the essence」、岸田が入れるサビ途中のカウンターメロディーひとつで、曲が洗練されて聴こえる「Blood and Emotions」へと展開。
この日はオープニングからアルバム『REBOOT』収録曲を連発することで、バンドのキャリアと並行して楽曲制作、アレンジともに洗練されていったいまのバンドのアビリティを見せつける。場内が真っ赤なライトで染まった「ストライク・ザ・ブラッド」では岸田とhayapi(Gt)が両サイドで同時に開脚ジャンプ。バンドをREBOOTすることで、ステージ上で繰り出すメンバーのパフォーマンスまでぴったり息が合ってきたことを見せつけると、今度は「天鏡のアルデラミン」で観客がぴったり息を合わせ、一丸となって雄叫びのようなシンガロングを響かせた。
ここでは天井に向かって舞台から白煙が吹き出すという大きな会場ならではの演出も飛び出し、会場はこの時点ですでにクライマックス級の熱気に包まれて観客は汗だく状態。その景色を見て「いいねー」と笑顔を浮かべたichigoが「終わりよければすべてよし。たくさんの思い出、失態を各地で晒してきたこのツアー。最後は最高の日にしましょう」というと、続けて岸田は「我々もいよいよこれがラストREBOOT。こんな僕たちでもたくさんの曲がありまして。メジャーで出した曲、アニメの主題歌もやったり、東方アレンジもあります。それをREBOOTするなかで、僕ららしさ。その原点は同人(サークル)で出したアルバムだなと思って。いまから12年前に作った曲をやらせて下さい」と説明した後に、岸田教団名義で出したアルバム『星空ロジック』から「ただ凛として」、「クリアレイン」という初期曲を続けてアクト。「クリアレイン」ではミラーボールに青い照明をあて、フロア全体に光る雨つぶを降らせ、当時とは違って広い会場だからこそできる演出で、曲に伸びやかなスケール感を与えていった。
その岸田教団から始まった彼らが岸田教団&THE明星ロケッツになり、初めてのフルアルバム『LITERAL WORLD』を掲げ、初めて行なった全国ツアーが<LITERAL WORLD LIVE TOUR 2009>だったことに触れた岸田。「あの頃の僕らは、ただの同人サークルでした。そしていまの我々、10年経ってもただの同人サークルでした(笑)」というと、フロアからは大歓声が巻き起こる。
そうして、このあとそのアルバム『LITERAL WORLD』収録曲を3曲続けて披露。この当時の叙情的でJ-POPな色彩をもった「コノハ」のプレイが始まったときは、本ツアーでこのようなレア曲初披露に立ち会えたことに、観客は素直に大喜び。そこからいっきに時間は2014年へとタイムリープ。曲はアルバム『hack/SLASH』のタイトル曲「Hack&Slash」へ。この曲もまた今回のツアーでは初披露となる。演奏中に岸田とhayapiがユニゾンでフレーズを奏でたり、ichigoがパワフルに“夢や希望や幻想だけじゃ覚悟がひとつも足りやしない”と歌い放つなど、楽曲がよりロック色の強い攻撃的なものに変化していった姿をライブを通して彼らは再現していった。そうして「ファイナルということで、こうして昔を振り返るのも今日が最後。だから、もうやらないかもしれないけど、これを僕らとみんなの“思い出の曲”にしましょう」と岸田がいい、ichigoと岸田が出会った「七色シューティングスター」をパフォーマンス。ichigoが珍しくファルセットを多用してどこまでもロマンチックで芳醇なメロディを歌い上げると、オーディエンスは一緒になって声をそこに重ねた。
演奏が終わると、岸田はすぐにみんなが歌ってくれたことに驚き「みなさん。僕、10年後にまさかこうして歌うなんて思ってなかったので、頑張って作ってません」といい放ち、ichigoは「すまん、あんなファルセットで」とうつむき、2人とも恥ずかしさにたまりかねて照れだす。演ってる自分たちまで恥ずかしくなる。そんな楽曲までやってしまうところからは、今回のREBOOTにかけるバンドの強い意気込みが生半可の原点回帰ではないことがひしひしと伝わってきた。
そうしてこの後ichigoのトークタイムが始まった。ichigoいわく「わたしはみんなとコミュニケーションがとれてるときが一番幸せ。音楽はそのための手段」と伝え、「次は、そんなみんなのために歌詞を書きました。みんなと会話するような歌にアレンジしてもらったので。では、お話しましょう」という下りから「LIVE MY LIFE アコースティックver.〜」が始まると、アコギをフィーチャーしたアレンジ越しに観客の想いはどんどん高まり、オーディエンスは静かに号泣。「みんなのこと大好きです」とichigoが叫んで、「ストレイ」からはアップチューンで戦闘態勢へ。満場の熱い盛り上がりで迎え撃つ観客を前に、怒涛の加速感で本編ラスト、アルバムREBOOTでも、最後のトラックにもなっている楽曲「Code : Thinker」演奏をし、バンドは熱風を放ちながら駆け抜けていった。
アンコール、再びメンバーが舞台に登場。そうして、岸田はこのツアーでバンドのREBOOTを終え「我々は教団とはいえ、宗教団体ではありません、ただのロックバンドですとこれまで主張してきました。でも、REBOOTしてみたら、ただのロックバンドじゃなくて、カルトになりました(笑)!」と笑顔で宣言。この先のバンド人生も、俺たちは同人バンド出身であること、マニアックでカルトな部分を忘れない。銀テープが舞い落ちるなか、感慨深そうに「星空ロジック」をファンと一緒に歌ってこのツアーを締めくくった彼ら。
こうして、REBOOT終了が成功した証にステージでichigoがだるまに目を入れて、ライブはそのまま終了。と思いきや、終演後、生アナウンスで岸田が「まだちゃんと決まってないけど」と前置きしたあと「REBOOT後、最初のライブツアーをやろうと思います。チッタで絶賛された“東方only”でツアーを回ります」というと、観客は汗だくのまま狂喜乱舞。さらに、出口では<UNHAPPY BIRTHDAY TO ME !! 37 !!>と題した恒例のichigo生誕祭を、今年は岸田教団&THE明星ロケッツのライブとichigoとのおしゃべりを楽しむアフターパーティーがセットになったものを6月1日、東京・新宿BLAZEで開催することを配布したフライヤーを通して告知。
REBOOT後の岸田教団&THE明星ロケッツ。その未来の扉が、まもなく開くーー。
SET LIST
01. Decide the essence
02. Blood and Emotions
03. ストライク・ザ・ブラッド
04. 天鏡のアルデラミン
05. 3 seconds rule
06. ただ凛として
07. クリアレイン
08. セブンスワールド
09. 感情 in the black
11. コノハ
12. LITERAL WORLD
13. 暁を映して
14. Hack&Slash
15. 七色シューティングスター
16. LIVE MY LIFE
17. ストレイ
18. シリウス
19. Reboot:RAVEN
20. stratus rain
21. Code:Thinker
ENCORE
22. GATE ~それは暁のように~
23. 星空ロジック