MISSION 1st Mini Album 「ONE-NESS」RELEASE LIVE
2019年2月17日(日)渋谷STAR LOUNGE
俳優の福士誠治と作曲家の濱田貴司が“本気”で始めたロックバンド、MISSIONが2月17日(日)に東京・渋谷STAR LOUNGEにて1stワンマンライブを行なった。
本公演は2月20日(水)にリリースされた8曲入り(インスト4曲)の1stミニアルバム『ONE- NESS』のリリースライブで1日2公演が開催され、チケットが昼夜ともに完売。満員の観客を前に新曲を含む全8曲を披露し、夜公演のアンコールでは急遽、この日2度目となる「Born to be」でオーディエンスを盛り上げた。さらに、MCで早くも次回のワンマンを8月10日に新宿ReNYで行うことを発表、ファンの想像を上回るスピードでの報告に会場からは割れんばかりの歓声が起こった。
ライブ本編もまた、期待を越えたステージとなっていた。開演時間になると、スペーシーなオープニングSEが流れる中、まず、濱田が一人で姿をみせ、キーボードを弾き始めた。彼らのファーストライブの会場が“STAR”LOUNGEだったのは意図したものなのか、偶然なのかはわからないが、MISSIONの音楽には、どこか宇宙や銀河を想起させる壮大なスケール感と奥行きがある。そして、場内が少しずつ暗くなり、2人組音楽ユニット“イトヲカシ”のメンバーでもあるベースの宮田“レフティ”リョウ、濱田に「野獣」と称されたドラムの片山タカズミのリズム隊が加わる。さらに、UruやRihawaのサポートでも知られるギターの飯塚直斗、aiko、ゆず、BUMP OF CHICKENにUVERworld……と枚挙にいとまがないほど多数の名曲に参加しているバイオリンの門脇大輔がステージに上がった。このサポートメンバーを見ただけでも濱田の本気度が伝わってくるだろう。演奏の質だけで聴き手を感動させることができる敏腕プレイヤーであることはもちろん、これだけ作曲家、編曲家として活躍しているメンバーが多いバンドも珍しい。彼らが音を合わせ、少しづつ目の前の風景や色彩を変えていき、別の世界の物語へと誘導していく。やがて、福士による電話を通した実家の親との会話らしき音声が流れ、電話を切るとともに福士がゆっくりと姿を見せ、右手を使ってバンドのヴォリュームとアンサンブルを操り、「人として、時として、花として。」で初ライブの口火を切った。
スタンドマイクを握り、バンドのヴォーカルとして歌う福士の声には、聴き手を一瞬で沈黙させる静かな色気が漂っていた。この、歌声が持つ存在感というインパクト、彼が身にまとった男の色気というものは、匂いや雰囲気のようなものなので、生のライブでこそより色濃く伝わってくる。静から動への展開もダイナミックで、言い様のない哀しみや自分自身に対する苛立ちをも感じる強烈なパフォーマンスを終えた彼は、「心の扉を開いて。MISSIONはどんどんお前たちの心の中に入っていくからね。待っとけよ!」と呼びかけ、新曲のロックンナンバー「Black」でフロアの熱気を一気に上げた。
最初のMCでは「MISSIONです!こんなに集まってくれて本当にありがとう。今日が初めての日です。初めての日に立ち会えているんだよ。僕もここにいられて本当に嬉しいよ!」と感謝の気持ちを伝え、バンド名には“任務”や“天命”という意味があることを明かした。
そして、濱田が音楽で参加をした福士の初監督短編映画『おやぢるどれん』のEDテーマ「僕の始まりと終わり」をブルージーに歌い上げ、哀愁漂うバイオリンソロを挟み、アコギが前面に出たバラード「大停電の夜」では情熱的な歌声で観客を真っ暗な夜空が広がる世界へと引き込んだ。ここで、<誰のため、なんのために生まれてきたのか>という福士のシリアスな語りに、ドラムがちょっかいを出すというユーモラスなバトルで笑いを誘い、iPadに「正」か「恫」、「清」か「童」などの相反する同音異義語が映し出される「二律背反–antinomie-」でフロアをカオティックな狂乱に巻き込み、「お前たち、心は開いてきているかい? 君たちの心の扉、開いて、MISSIONと一緒になろうぜ。俺と、俺たちと今日は一緒になろうぜ!」と叫んだ新曲「Born to be」では観客は全員が手を挙げ、ジャンプし、歌うことで会場の一体感は増加。さらに、濱田曰く「リハーサルではやりたくないと嫌がっていた」というコール&レスポンスでは、iPadを使って歌詞を早口で言い合い、志村けんの「なんだチミは」までも飛び出すほどの大きな盛り上がりとなり、「ONE-NESS」というタイトル通り、演者も観客もやがて1つとなっていった。
優しい眼差しのまっすぐなラブソング「ゴースト」では「どうかこの思いが届いて欲しい。今僕が思う100分の1でもいいから伝わって欲しい。だから、君は君の扉を開いてそこで待ってて欲しい」と訴えかけ、「少しでもみんなの嫌な気持ちを弾き飛ばせるようなバンドになって。ちょっと先頭を走って、みんなを先導できればいいなと思います。みんなで一緒に楽しく、最高の時間を過ごしていきましょう」と語り、ピアノのリフが印象的な「Over the Galaxy〜君が聴こえる〜」では、観客ひとりひとりと目を合わせながら語りかけるように歌い、バンドメンバーがひとりひとりステージを後にし、最後は二人の演奏だけとなり、「今日のライブが人生のターニングポイントになってると思います」という初ライブは締めくくられた。
福士はこの日、何度も何度も「心を開いて!」と訴えかけていた。MISSIONの天命とは、音楽を通して人の心を開き、音楽で繋がることだろうことを確信したライブだった。