今年ソロデビュー5周年を迎える西恵利香が自身の30歳の誕生日、1月11日に彼女のホームとも言えるライブハウス代官山LOOPでワンマンライヴ<Make my day!~birthday~>を開催した。
バースデイライブという特別な日ということもあり、当日はアコースティックセットとバンドセットの2部構成。多くのファンが彼女の記念日を祝うために駆けつけた。何度も「楽しんでる?」(間が空くのが怖いタイプだとか)と問いかける一方で、歌い出すとスイート&ビターなボーカルで惹きつけ、最上の時間を届けてくれたライブの模様をレポートする。
まず第1部はアコースティックセット。白いシャツで統一したサポートメンバー(パーカッション、ウッドベース、ピアノ、アコースティックギターの4人編成)が定位置につき、ショートボブにした西恵利香はシックなネイビーのシャツを着て登場した。オープニングは昨年リリースされた初のフルアルバム『soirée(ソワレ)』に収録されている「sugar me」。“夢を見るほどにはもう子供でもないし 思い出に浸るほど大人でもないよ”という歌詞は、今の彼女にピッタリ。椅子に座って生音の演奏に身体を揺らせ、表情豊かな歌を響かせた。
「みなさん今日は来てくれてありがとうございます。30になりました。もっといろんなところに行ってみたい、いろんなものを見に行きたいなと思ったとき、この曲がピッタリだなと思って。アコースティックだからってしっとりしようという意識はなくて、いい時間を過ごせたらなと思っています」
そう伝えて初めてアコースティクアレンジをしたという「街へいこう」を自ら“1、2、3”のカウントを出し、軽快なリズムで披露。集まったファンも気持ちよさそうにグルーヴに身を委ねている。洗練されたサウンドとアーバンな風景に似合う歌声が溶け合っていく。
ワインでも飲みたくなるムードの中、MCもリラックスモードだ。30歳になったことについて「早いね〜。あっという間だよ。そんなに生きてきたっけ?」と笑い、「20代前半からずっとバースデイライブをやらせてもらっていて、当日はライブをやることに必死で今年もまた然りなんですけどね。来年からはもうやらなくていいよね?」と問いかける。「え〜?」とあちこちから上がった不満そうな声に「1回ぐらいプライベートで満喫させてよ」と西が返すと笑いの渦。そんなやりとりからも集まったファンとの絆が感じられた。
そして「冬と言ったらこの曲かな」と披露されたのは、繊細なピアノの音色、アコギの弦のこすれる音まで響いてくるバラード「綺麗な嘘」。いつかは終わる恋の儚さに怯えながらも知らないふりをしていたいと願う女子の切ない心情を、今の彼女ならではの感性で見事に表現した。ピアノとボーカルで始まる「ペイルブルー」は、途中から滑り込むようにほかの楽器が入ってくるアプローチ。水色の雨に染まっていくような終わった恋の後悔。ちょっぴりビターなテイストの歌が大人の横顔を感じさせた。
「楽しい?」と問いかけて返ってきた歓声に笑顔を見せ、バンドセットとの転換の時間にオリジナルカクテル“30”を味わってほしいとリクエスト。「最初は甘めにしようかなと思ってたんですけど、30(歳)ということで人生に苦味も感じつつあるので、ちょっと大人なものに仕上げました」と沸かせた。
アコースティックセットのラストに歌われたのは、西自身がいちばんアレンジが気に入っているという「call me tonight」。ボサノヴァタッチのオシャレなアレンジが、彼女の声と相性抜群だ。飲んでいなくてもほろ酔い気分になれる第1部では、ソロシンガーとしての西恵利香の新たな可能性を見せてくれた。
約30分のムーディなひとときが終了し、バンドのメンバーがカジュアルな服に着替えて演奏を始め、第2部の幕開け。西はドルマンスリープのゆったりシルエットのアウターで登場。シンプルながら大人のセンスが光る装いだ。が、エレクトリックスタイルでのバンドセットはアコースティックセットとは、打って変わってのっけからアクティブ。「みんな始まったぞ! 盛り上がってますか?」とサバサバした性格全開で煽ってハンドクラップ。「AFFOGATO」からスタートし、ラップパートでは上手、下手とパワフルに動きまわって、場内の温度を上昇させていく。
「踊る準備はできてますか?」
“もちろん”とばかりの歓声に「熱いね! いいね!」と返し、AORなアプローチの「Palette」へと。ミニシンセサイザーを弾いて歌う姿がかわいくてカッコいい。ディスコティックなダンスチューン「Lonely Night」では、イントロで「ひとりでちょっと寂しい夜に作った曲なんだけど、今日はみんながいるから全然寂しくない! だから、ここをダンスフロアに変えたいです」と煽って、笑顔が溢れる空間に。“誰かとじゃなくてあなたがよかった”という歌詞を“誰かとじゃなくてみんながよかった”とアドリブで歌ってファンを喜ばせ、後半はコール&レスポンス。文字どおり生のライブでないと味わえない瞬間の連続なのは、ステージで経験を重ねてきた彼女だからこそだろう。
再び30歳になった心境に触れ、女子大生に「西さんっていくつなんですか?」と聞かれ、年齢を答えたら「美魔女?」と言われてショックを受けたエピソードを明かすと場内爆笑。「女だって30からどんどん輝いちゃう、まだまだやっちゃうよっていうのを自分で体現していきたいと思います」と宣言した。
そして代表曲のひとつ「LAST SUMMER DRESS」では出だしから観客に歌ってもらうものの、「ちょっとオジさん多めなんだよね〜」と納得できない様子で女の子に歌ってもらい、返ってきた歌声に「かわいいね〜♡」とかなりのハイテンション。「次、自称オジさん行きましょうか?」と会場をひとつにし、避暑地の風が吹き込むようなロマンティックなラブソングを届けた。
中盤では、ほてった熱をクールダウンさせる「はるか数駅」が歌われた。別れが刻々と迫る情景を切り取ったミドルバラードを身体全体で切々と歌うボーカルは素晴らしく、力強い拍手が響き渡った。ピアノでしっとりと始まり、テンポアップしていく「DAY」を披露したあとは西からの逆プレゼント。
「今日は来てくれたみんなに私からのお礼で新曲を持ってきました。まだレコーディングも済んでないんですけど、今日のために急いで仕上げました。大人になると苦い恋の1つや2つ、経験することだと思います。そんな曲に歌詞を書きました」
そう伝えて歌われたのは未発表の新曲「BITTER」。西が弾くシンセのフレーズが印象的なこの曲は、レゲエのエッセンスも盛り込まれたグルーヴ感たっぷりのポップチューン。悩ましい恋をしている女子の共感を呼びそうだ。
MCではしばらく新譜をリリースしていないものの、曲をたくさん書きためていることや音楽にさらに集中するために事務所を移籍したことなどの近況報告も。ソロデビュー5周年の2019年は、2020年に向けて派手に動いていくと宣言。ファンを喜ばせた。
後半戦はバンドセットでの「sugar me」を披露。フロアも一緒に歌い、「誰よりも素敵な」では場内が手を挙げて盛り上がる中、再びアドリブを入れて歌うなど開放感マックス。幸せな空気の中、本編を締めくくった。
力強い歓声が自然とアンコールの拍手へとシフトしていき、西は自身でデザインした赤のパーカー(名称はROMANCE HOODIE)に着替えて登場し、「これ、めっちゃかわいくない?」と笑顔。そして新曲のタイトルが「ROMANCE」だと発表。ライブ当日の24時に配信が開始されると報告し、2度目のサプライズに拍手と歓声。
「ホントに次の曲で最後だから悔いなく歌って踊って帰ってください」
ラストにプレゼントされたのは、ピンクの色彩が似合う新しい季節を感じさせてくれるキラキラしたポップチューン「ROMANCE」。新曲ながら「一緒に歌おう!」と呼びかけ、コール&レスポンスで盛り上がった。
これで終演と思いきや、ピアニストが「Happy Birthday To You」のフレーズを弾き始め、思わず「♪Happy Birthday To Me」と歌い始めるものの、「聞いてない、聞いてない」と慌てる西。一緒にお祝いするべく、ファンはその場に座り、スタッフが苺のバースデイケーキを持って登場。ろうそくの火を吹き消し、集まってくれた人たちに感謝の想いを告げた。
「泣かないよ! 30歳になりましたから。キラキラ輝く女になっていきたいと思います! これからも末長くよろしくお願いします」
笑顔と希望を残してピリオドを打ったバースデイライブ。キュートでやんちゃな顔と洗練されたオトナな顔を合わせ持つ西恵利香が今後、どんなシンガーに成長していくのか楽しみは尽きない。
SET LIST
-1st STAGE-
01. Démarrer la soirée
02. sugar me
03. 街へいこう
04. 綺麗な嘘
05. ペイルブルー
06. call me tonight
-2nd STAGE-
01. AFFOGATO
02. Palette
03. Lonely Night
04. LAST SUMMER DRESS
05. はるか数駅
06. DAY
07. BITTER ※未発表曲
08. sugar me
09. 誰よりも素敵な
EN
01. ROMANCE (新曲)