この夏、7都市14公演で開催される<スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018>。世界初の試みとなる、初期3部作を一挙に上演する7月29日のプレミア特別公演があっという間にソールドアウトするなど、映画ファンや『スター・ウォーズ』ファンの間では既に大きな注目を集めているが、そもそもこの<シネマ・コンサート>というイベントの醍醐味がどこにあるのか、一般的にはまだ浸透していないかもしれない。
コンサートホールのステージに掲げられた巨大なスクリーンで上映される名作映画。そして、そのスクリーンの下では指揮者とオーケストラが劇中の音楽をリアルタイムで生演奏する。文章ではシンプルに説明することはできるが、その相乗効果が生み出す感動は、一度体験してみないとわからないという。これまで国内で開催してきた数々の<シネマ・コンサート>を企画・制作してきた株式会社プロマックスの飯島則充プロデューサーと、今回の<スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018>にも出演する東京フィルハーモニー交響楽団 事業部・岩崎井織氏に話を訊いた。
コンサートホールのステージに掲げられた巨大なスクリーンで上映される名作映画。そして、そのスクリーンの下では指揮者とオーケストラが劇中の音楽をリアルタイムで生演奏する。文章ではシンプルに説明することはできるが、その相乗効果が生み出す感動は、一度体験してみないとわからないという。これまで国内で開催してきた数々の<シネマ・コンサート>を企画・制作してきた株式会社プロマックスの飯島則充プロデューサーと、今回の<スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018>にも出演する東京フィルハーモニー交響楽団 事業部・岩崎井織氏に話を訊いた。
──この<シネマ・コンサート>という企画を立ち上げるにいたった、その経緯から教えていただけますか?
飯島則充もともと自分の育ってきた土壌がクラシック音楽だったので、仕事でもオーケストラを使って何か面白いことができないかというのは常々考えていたんです。それで、最初にやったのが2015年1月の<生誕60周年記念 ゴジラ音楽祭>で、その時はNHKホールで1954年の<ゴジラ>1作目をフルで上演しました。その後、シカゴに<ゴッドファーザー>のシネマ・コンサートを観に行ったんですが、それが本当に素晴らしかったんですね。それと同じような感動を、日本の観客のみなさんにも体験してもらいたいと思ったのが大きなきっかけでした。
──シカゴで観た<ゴッドファーザー>のコンサートは、どのように素晴らしかったんですか?
飯島まずは、アメリカの5大オーケストラと呼ばれる楽団の一つであるシカゴ交響楽団が、そのようなシネマ・コンサートの企画をやっていることが驚きでした。そして、オリジナルの映画の音楽をそのままオーケストラで単純に再現するというのではなく、一つのコンサートとして、その映画の中にある感情を表現する上で指揮者や奏者に委ねられている部分があることに、大きな感動と新鮮なショックを受けたんです。
──飯島プロデューサーが企画されている<シネマ・コンサート>以外にも、現在日本で、映画の上映とオーケストラの演奏を一緒にするコンサートはおこなわれていますよね?
飯島キョードー東京さんが企画されている<シネオケ®>というイベントがあって、一緒に盛り上げていこうという話をしています。どちらも主に東京フィル(ハーモニー交響楽団)が参加していますしね。
岩崎井織演劇とオーケストラの演奏を組み合わせたオペラという形式がありますが、オペラが生まれた当初は、いわばそれは最先端の芸術表現だったわけです。それが時代とともに変化していく中で、映画が「劇と音楽を同時に体験する」フォーマットとして主流になっていったわけですが、<シネマ・コンサート>という企画は、その音楽の部分を生演奏に戻してみようという試みなわけです。
──海外でもこのようなコンサートは増えているのですか?
飯島それほど昔からあったわけではなく、近年になって増えてきている、という状況ですね。
岩崎海外でも、過去に同じような企画がなかったわけではないんです。ただ、オーケストラの演奏というのはそれだけでかなりのコストがかかりますし、映画の著作権の問題もあります。なので、以前は著作権の切れた昔の名作を中心に企画されていたのですが、近年になって権利元、つまり映画会社の意識が変わってきたんです。それと、以前は技術的な問題もあって、映画から音だけを抜いて、そこに生演奏をつけるというのは大変な作業だったんです。
──セリフや効果音はそのまま残さないといけないわけですもんね。
飯島そうです。<シネマ・コンサート>では、その作業はプロのエンジニアによってデジタルでおこなわれています。それに、映画で使われたすべての音楽の楽譜を提供してもらってます。なので、権利元の協力は不可欠です。
岩崎当初、『スター・ウォーズ』や『ゴッドファーザー』の上演は周年イベントとして企画されていたんですけど、それらの成功がきっかけとなって、そのような「ちょっと昔」の名作や、『ラ・ラ・ランド』のような最近の作品でもやってみたら素晴らしいものになるんじゃないかという機運が、映画会社サイドにも生まれてきました。
『ラ・ラ・ランド in コンサート』2017年9月29日、30日 パシフィコ横浜 国立大ホール 他。
追加公演、2018年4月30日 東京国際フォーラム・ホールA 他
──映画ファンとして気になるのは、普段映画を上映する場所ではないコンサートホールで映画を上映する際の、スクリーンの明度やオーケストラの奏でる音楽との音量のバランスなのですが。
飯島そこも技術の進化が大きな助けになっています。映像に関しては、現在は映画館で観るのとまったく遜色がないものだと思っていただいてかまいません。また、音量のバランスに関しても、今回の<スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018>でもそうですが、海外からディレクターがやってきて完璧なクオリティコントロールがされています。厳密に言うと、<シネマ・コンサート>はオリジナルの音楽をそのまま再現するわけではないんです。作品によっては、当然オーケストラではない音楽が入っていることもありますが、それもオーケストラ用にアレンジして演奏されるわけです。
──指揮者はスクリーンを観ながら指揮をしているのですか?
飯島指揮台の前のモニターに映画の映像に加えてその場面で流れている音楽のテンポを視覚的に捉えられるクリック映像が出ていて、それを見ながら指揮しています。
──すごく基本的な質問ですが、<シネマ・コンサート>では観客はスクリーンを中心に観るべきなのでしょうか? それともオーケストラを中心に観るべきなのでしょうか?
飯島それはもう、観たい時に観たい方に意識を向けていただければ(笑)。もちろん会場によってスクリーンの大きさも違って、そこには定型のサイズというものもあるんですけど、<シネマ・コンサート>ではスクリーンとその下にいるオーケストラを観客が同じ視野に収めることができる、その上での最大のスクリーンのサイズを心がけてます。多くの人は、始まる前は大体スクリーンとオーケストラを対等に観ようとするんですが、作品に没頭していくにつれてスクリーンの方に意識が集中していくんです。でも、それは無意識の部分で、オーケストラの奏でる音楽に引き込まれているからよりスクリーンに集中していくんですね。そこに、<シネマ・コンサート>ならではの不思議な視覚と聴覚の体験があるんです。