2014年9月より活動を開始した10人のヴォーカリストからなるボーカル・ユニット、vocal power。ライブを行う時には必ず新曲を皆で作成し、現在までに80曲を超える。2016年1月27日にアルバム『vocal power』でメジャーデビューを果たし、2月7日に代官山LOOP、8月21日にはMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでワンマンライブが決定している。vocal powerを立ち上げたTHE NEUTRALのしげる、そして木谷 雅(sacra)、本多哲郎(唄人羽)の3人に話を聞いた。
──vocal power10名の中から今日はどんな3名にお集りいただいたんですか?
木谷 雅 何だろう? 会長と社長と部長です!
しげる 役員ですね(笑)
本多哲郎 お茶汲みまでやりますけど(全員爆笑)
──もともとvocal powerはどういった経緯で結成されたんですか?
しげる 僕から見てみんな素晴らしい才能を持ってて、僕の勝手なイメージとして“2ステージくらい上にいけるのにな”と思ってたんです。THE NEUTRALも含めて。そこで“みんなで集まって音楽をやってみたら面白いんじゃないかな”って思ったんですよ。あと、“今CDが売れない”とか、“ライヴをやっても動員が厳しい”とか、そういうことを周りのバンドマンがボヤいてるのを聞いて、ボヤくのはわかるけど何かしようぜって思って。これが20代の時だったらできなかったと思うんですけど、バチバチで(笑)
木谷 雅 僕はその話を聞いて、しげるくんが言うことにノーと言えないので二つ返事で“やります”と(笑)。実際、僕らのバンド、sacraももうひとつ上に行きたいのにその突破口が見えなかったりしてて。vocal powerを始めてみたらリスペクトできる人間たちがいっぱいいて楽しいですね。
本多哲郎 僕はわりと性格的に石橋を叩いて渡らないタイプなんで(笑)。ただ、初めはこの人数で、しかもバンドの中心にいるボーカルたちが集まって事を成すことにちょっと不安があったんですよ。でも案ずるより産むが易しで。僕なりの貢献の仕方ができたり、自分の成長のために良いんじゃないかと思って参加しました。
木谷 雅(sacra)
──実際に自身の成長を感じたり新たな発見はありましたか?
しげる vocal powerには決め事がひとつあって、1人で作詞作曲を完結しない、と。違う人が曲を書いて違う人が歌詞を書くことで、“ああ、そんな発想があるんだ!?”とか、“ああ、そんなふうに曲を捉えることもできるんだ!?”って思える。あと僕はメッセージを伝えてなんぼ、それが答えだと思ってたんですけど。メッセージよりも音楽家としてきちんと歌うことが答え、っていう人もいたり。それはただ音楽に対するゴールの考え方が違うんだなっていうことに気づきましたね。
木谷 雅 歌には人間性そのものが出ると思ってるんですけど、その1人1人の声の違いや、声の作り方の違いがすごい面白くて。そこで例えば音をジャストで当てるのが癖になってる人が、しげるイズムみたいな熱いものを注入していくことでさらに良くなったり。そういう科学反応がすごく楽しいですね。
本多哲郎 2人の言ってるとおり相乗効果はすごくあります。自分が思ってる悪いところも、他のメンバーから“そこが良いよね”って言われることで自分の良さに気づかせてくれたり。いい意味で成長できてるなって思います。
しげる ボーカリストってワガママかと思ったら意外と他人の意見を聞くんですよね(笑)
本多哲郎 僕がいちばん聞かなそうなタイプですよね(全員爆笑)
本多哲郎(唄人羽)
──デビューアルバム『vocal power』はどんな作品になりましたか?
木谷 雅 それぞれメインをとっている歌が1曲ずつあるんですけど、オムニバスでは終わりたくなかったんですよ。しげるくんが当初から言ってきた“ライブでもCDでもみんなで作っていくんだ”、“みんなの熱量を入れていくんだ”っていうところを大事にして作ろうと。あと僕らは90年代、2000年代を生きてきて生のグルーヴの良さをわかってる人たちが集まってるので、“せーの”でみんなで録った良さが出てると思います。
しげる 今流行ってるバンドの音楽って、作り込んだものを再現する世代だと思うんですよね。僕たちは、音楽を体現する。昨日やったことを明日できないっていうのを良しとしてるんで。
本多哲郎 あと面白かったのは、自分がレコーディングに行けなかった時に、僕のパートを他のメンバーが仮で歌ってくれてるんですよ。嬉しかったし、いい発見もありましたね、“こんな歌い方をするんだな”って。自分以上に他のメンバーが曲を聴いてくれてたり、僕も気づいたら他のメンバーの曲をすごく好きになってて、vocal powerのライブの時にそのカバーを歌わせてもらったり。自分にとってプラスになることばっかりでしたね。
──さて2月7日に代官山LOOP、8月21日にはMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでワンマンライブが決定していますね。
しげる お客さんが予想していないびっくりするライブをしようと思ってます。10人のアイデアがあれば、ライブ慣れしてる人でさえワクワクするライブができるんじゃないかなって。
木谷 雅 まず2月の代官山LOOPは今までにないエンターテインメントの要素が入ってます。あとは昼と夜、どちらの公演も1曲目がまったく違うので頭からいないとソンするよと。
しげる 唄人羽の相方(安岡信一)に“俺たちは二流なんですよ”って言われたことがあって。ライブハウスを満杯にできてもまだホールには行けてないわけだから。でも、一流よりもたくさんライブをやってて、一流よりも現状を突破しようとしていろいろ考えてきたから、やってることに何の引けを取らずもっと誇りを持っていいと。確かにそうだなと。そんな僕らが観せるライブは絶対に悪いものになることはないし、10人の智恵が入ってるんで、どこを切り取っても面白いんじゃないのかなって思います。
しげる(THE NEUTRAL)
──2016年はメジャーデビューを果たしさらに精力的に活動していく予定ですか?
しげる そうですね。嬉しかったのは、前回の代官山でのライブの時に、最後の最後にメジャーデビューの報告できたんですけど。“みんな待たせてごめんな。俺たち全員こっから行くからな!”って言った時に、お客さん全員、ワァ〜! と手を挙げたんですよ。その瞬間に、お客さんが見たかったものって未来なんだなと思って。最近、自分たちのバンドで言うとなかなか未来を見せてあげられてなかったんですけど、みんなそれを待ってたんだなって感じましたね。
本多哲郎 vocal powerの中で唯一、この3人が長くメジャーを経験してて、離れてフリーでやったり、全国各地を廻ってる経験としては豊富なほうだと思うんですよ。しげるくんを筆頭に僕らが他のメンバーたちを引っ張っていけるような姿勢を見せてあげられたらいいかなと。メジャーデビューとなれば舞い上がりもありますからね、そこは調子に乗らないように(笑)
インタビュー/牧野りえ
Photo/横井明彦