──そして2026年7月18日に代官山UNITにて「ゆとりくん本気の独演(奏)会」が開催されます。それに先駆けて7月3日に2nd EP『ミラーボールを消して』もリリースされますが、1st EP『KINGDAMN』と比較すると内省的な作品だと感じました。
2025年の下半期の、病んでいた時期に作った曲がほとんどなんですよ。会社の業績は全然順調だし、世の中的にも注目してもらっているけれど、自分は他者からの評価が幸福に直結するわけではなくて、自分が自分をどう感じているかが大事なんだなって。だから自分のバイオリズムが崩れていたというか、抗えない何かに引っ張られて病んでたんだろうなと思います。その時期の日記みたいな感じだし、当時の気持ちを日記以上に直感的に感じられるものになりました。だから作った順に明るくなっていると思う。
まず「feel real me」と「PARADOX(feat. KOHEI, Sora)」を同じくらいのタイミングに作って、ちょっと経って「turn go(feat. YOSHIKI EZAKI)」を作って、「fashion」、「バブりたい」の順ですね。「fashion」の頃はだいぶ回復してるからメタ的な視点も入れてTHE 70年代高円寺ロックみたいな感じに着地できたけど、「feel real me」なんてもう俺の本音そのまんまみたいな感じです。
──「feel real me」は、普段ゆとりくんがビジネス系のメディアなどでは見せない面が表れていると思います。
サビの《光の中じゃ隠れるreal me》とか、まさにそれですね。自由を求めて会社を立ち上げて、うまく動かしてきたけれど、注目してもらうと良くも悪くもイメージが作られるじゃないですか。だからそのイメージからどううまく逃げるか、変わり続けるかが大事だと思っていて。でもそうしていくうちに、“ゆとりくん”をやることで縛られてるんじゃないか? “yutoriの社長”としてのほうがもっと自由だったんじゃない? と思うようになっていったんです。“ゆとりくん”というキャラクターがありすぎることによって制約が生まれて、本当の自分が自分でもわかんなくなっちゃう感覚が、あの曲に結構詰まっている。
──先ほどおっしゃっていた「バイオリズムが崩れる」というのは、そういうものも起因していそうですね。
お茶の間に知られたポップスターに比べたら全然別物だと思うけど、世の中にとっての贅沢と、俺にとっての贅沢が違うという世間との乖離も強まってきちゃって。もちろん人気者になりたい気持ちもあるけれど、資本主義的な成功と隔絶された場所で、自分だけの何かを作ることのほうが俺にとっては贅沢というか。その感覚は俺にとってリアルだし、優しく受け入れてくださいって感じですね。
──濃度に差はあれど、どの楽曲も“ゆとりくん”でコーティングされた内側にある本質を提示したという意味では共通しているのかなとも思いました。
自分が本当にピュアに作った1作目がこの2nd EPって感じがしてますね。1st EPの曲は自己表現というよりは、いろんな人の提案に乗っかって、“ゆとりくん”というキャラクターを使って面白おかしいフックを作った曲が多くて。でも今作は全曲デモの段階から自分で色のついた下書きくらいまで作れるようになったから、今回は自分なりの色を出すことを大事に作れた感覚があります。
──様々なカルチャーを吸収しているから、これだけ多彩になるのも必然的というか。
もろ経営者っぽくもないし、もろクリエイターっぽくもない。いろんな要素が複雑に合わさっているなと自分でも思っているんです。資本主義すぎるわけでもないし、でもサブカルチャー側の人間なら起業して船長なんてやってないし。どっちにもいない、どっちでもないのが自分なのかなって。だから「バブりたい」は“ゆとりくん”のキャラクターを活かして振り切りましたね。世間のトレンドの文脈にあるし、面白さもあるし、さすがチバニャンって感じのトラックだし。
──「バブりたい」のトラックを制作したチバニャンさんとは、もともと親交が?
DJ WAKIが「チバニャンに会わせたい」って紹介してくれたんですよね。チバニャンも俺に興味を持ってくれていたから、その流れでデモができた段階で「このデモをチバニャンにバキバキにいなたく、超80年代的なバイブスを詰め込んでほしい」と頼んだんです。チバニャンの“突き抜けた光”みたいな精神性は僕にないので、チバニャンの力で飛ばしてもらいましたね。
──KOHEIさんをはじめ、YOSHIKI EZAKIさんやSora(アバンティーズ・そらちぃ)さんとももともと親交がおありですし、全曲をご自身と波動が合った人たちと作っていると。
僕はクリエイターにリスペクトがあるし、クリエイティブの源泉は極めてリアリティな人間感覚にしかないと思っているので、人間らしくいることがすごく大事だと思うんです。人間らしい空間を作って、自分が人間らしく存在する。それは経営においてもすごく大事なんですよね。……ちなみにどの曲がいちばんいいと思いましたか?
──今作は5曲でゆとりくんの様々なリアルな精神性を楽しめるというトータルの満足感があるので、1曲を選ぶのが難しいのが正直なところです。時代に合わない考え方ですが、この5曲がひとつの作品に存在することに意味を感じているというか。
全体を通しての読後感があるってことですね。めちゃくちゃうれしいな。バズに関しては「バブりたい」に託します(笑)。
──「バブりたい」で《バズりたいよりバブりたい》と歌っておきながら(笑)。
《バズりたいよりバブりたい》けど、「バブりたい」でバズりたいです(笑)。算命学的に、カッコつけるより可愛く思われたほうがすべてうまくいくという特殊な星があって、その話をしていたときに「俺、バブっていけばいいんだ!」と思って。それと同時に「“バズりたいよりバブりたい”ってみんな思ってんじゃね?」と思ったんですよね。
──確かになかなか他者に甘えられない時代になっていますよね。だからAIに悩み相談をする人が増えているし。
あと今の時代、良し悪しを別にしたら簡単にバズれるようになったと思うんです。「こんなひどい目に遭いました」ってツイートしたら誰でも万バズになる、つまりすごく透明化された社会なんですよね。日本人は集団心理が強いから、お互いを監視し合ってどんどん縛り合えてしまう。でもこの社会構造を変えるのは難しい。ならばひとまず、隣になんでも承認してくれるあなたがいてほしい。「世の中的には賞賛されないことも、あなたとわたしの間では許そうよ」と言い合える関係を持っているかどうかって、すごく大事だと思っていて。だからほんと、バズりたいよりバブりたい。一瞬で書けましたね。アホっぽいけど実は風刺的なんです。
──「ゆとりくん本気の独演(奏)会」は、タイトルからもこれまでのステージの集大成的なものになりそうですね。
このインタビューの時点ではセトリだけは決まっているけど、それ以外はまったくという感じですね。
──でもゆとりくんでなければ実現できないステージになる?
まずそれは当たり前に確定してますね。音楽のセトリはいろんな事情もあって早めに決めなきゃいけないけど、今この瞬間に自分が思っていることって何よりもエネルギーを帯びると思うんです。WWWのワンマンで話したことも、セドナから帰ってきていろいろ思い浮かんだ、そのときの言葉で話せたので、今回も語りは直前にゼロから決めたいなと思っています。今回の本もEPも時間を掛けて、自分の手でものづくりができたという満足感がある宝物なんです。その時間や感覚は普段ファッションの世界で生きている自分にとって新鮮だったから、また新しい気づきがありました。大変だったことも含めて、充実感がありますね。だからこそ当たり前にいいライブになるし、当たり前に買ってほしい!って感じです(笑)。
──最後にお聞きしたいのですが、音楽活動を始めて、ゆとりくんの人生はどう変わりましたか?
なんだろう?良くも悪くも感情的になっちゃったかも。2nd EPを作って、音楽は感情的であること、人間らしくあることがコンテンツとして回収されちゃうことを実感して。それは経営者視点で見ると邪魔なときもあるんです。でも経営はみんなでやるものだし、yutoriのみんなとは長い時間一緒に歩んできているので、俺が多少メンヘラになったぐらいではガタつかないという安心感もあるし。音楽はパーソナルなものだから、自分がどういう状態かが大事だなと思っていますね。
──ゆとりくんはこれまでのカルチャーをクロスオーバーさせる先人ともまたタイプが違うので、ゆとりくんがどんな人生を歩んでいくのか、連載漫画のように楽しみにしています。
今日はYouTubeの収録をして、いまディスクガレージでアーティストとして取材を受けているんです(笑)。わけわかんないけど自分っぽいなあとしっくりきてるし、かなり唯一無二の存在、立ち位置ではあると思っていますね。でも人との出会いとか、誰が離れるとかって、天気みたいなもので。晴れる日もあれば雨の日もあるし、なるようになるだろうなと思っています。
──音楽を始めたのも、その風が吹いたということですものね。
そうですね。流されるなかで、どう波に乗るか。こんなことになるとは思ってもみなかったので、それを更新し続けないとなと思っていますね。
──7月18日の代官山UNITが追い風になるのではないでしょうか。
ほんといいライブにしないといけない。というかいいライブになるんで。当たり前に。
──“当たり前に”のマインド、大事ですね。使っていきます。
早口で付け加えることがポイントですね。“当たり前に”!(笑)
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