2016年1月4日に初めての日本武道館公演を成功させたSHISHAMOが3rdフルアルバム『SHISHAMO 3』をリリース!シングル「熱帯夜」「君とゲレンデ」、既にライブで披露されている「中庭の少女たち」「旅がえり」などを含む本作は、ロックバンドとしてのスケールアップはもちろん、ポップスとしての精度もさらに高まった充実作。さらなるブレイクのきっかけになるであろう本作について、宮崎朝子(G&V)に訊いた。
──前作『SHISHAMO 2』以降、「ミュージックステーション」に出演したり、武道館のライブがあったり、バンドの状況はかなり変化したと思うのですが。
それはあまり感じてないかもしれないですね。やることはあまり変わってないというか、なんとなく「(ライブの)会場が大きくなってるな」っていうくらいで(笑)。
──曲を書いて、バンドでアレンジして、ライブをやって。その生活は変わらないと。
変わらないですね、ぜんぜん。忙しいのは好きじゃないんですけど(笑)、1月はけっこう休みがあったんですよ。そういうことがあると“また1年がんばろう”って思えるので。
──友達が少ない宮崎さんは休みをどんなふうに過ごしたんですか?
ひどい(笑)。けっこうアクティブだったんですよ、それが。まず、大分の温泉に行きました……吉川(美冴貴/Dr)と(笑)。松岡(彩/Ba)は大阪に帰省してたから、ひとりで行こうと思ってたんですよ。そしたら吉川が行きたそうな顔してるから「行く?」って言ったら「行く」って言ってくれて。それは1泊だけだったんですけど、帰ってきて、すぐニューヨークに行きました。
──え、すごい! ひとりで?
いや、たったひとりの友達と(笑)。6日間だったんですけど、大雪で非常事態宣言が出てたんですよ。でも、意外と楽しくて。外国とかあまり興味がなかったんですけど、“せっかくの休みだし”と思って。行って良かったです。
──ホントにアクティブですね~。
でも、それだけですけどね。松岡はたぶん、毎日のように違う人と遊んでた思うんですよ。私はメンバー以外の人とひとりしか会ってないですからね。3週間くらい休みがあったのに。
──(笑)。ではニューアルバム『SHISHAMO 3』について。シングル曲、既にライブで披露している曲も収録されていますが、制作前はどんなアルバムにしようと思ってました?
『SHISHAMO 2』とは違うものにしたいとは思ってましたね。『SHISHAMO』も『SHISHAMO 2』も自分たちらしいアルバムだと思うけど、同じことをやってもダメだなって。具体的に言うと……いままではライブでやることを想定して作っていたところがあるんですよ。“ここにギターを重ねたいけど、ライブでやるときにきついもんな” “ギター1本しかないし”と思ってやめたり。でも、今回は“作品としていいものにしたい”という気持ちが強かったんです。SHISHAMOがいろんな人に知られるにつれて“好きで聴いてるけど、ライブには行ったことがない”という人も増えてると思うんですよ。だからひとつの作品として良いもの作らなくちゃいけないなって。
──そういう意識で制作していると、当然、アレンジの方向性も変わってきますよね。「みんなのうた」にはホーン・セクションも入っていて。
縛るものがなくなっていきますからね。ライブでやるときのことを考えないで、自分の頭のなかになっている音をできるだけ入れていきたいなって。そこはいままでと違いますね。楽曲に関しても、どんどん広げたくなってきてるし。
──「中庭の少女たち」「笑顔のとなり」「手のひらの宇宙」などミディアムテンポの楽曲も印象的でした。
私、いわゆる“アルバム曲”が好きなんですよね。
──シングルの表題曲とかアルバムのリードトラックではなく、アルバムでしか表現できないような曲ということですか?
そうですね。私はアルバムの8曲目くらいに入ってる暗い曲ばっかり聴いてましたから(笑)。自分で曲を作るときも、いちばんモチベーションが上がるのは“アルバム曲”なんです。
──「君とゲレンデ」みたいなポップな曲は意識的に狙って作ってる感じなんですか?
まわりの空気を読んで“作らなくちゃな”って思って(笑)。
──なるほど(笑)。今回はどんなアルバムになったと感じてますか?
いままでは“お客さんが好きな曲、私はあんまり好きじゃないな”って思ってたんだけど、今回“私も好きだし、みんなも好き”というちょうどいいバランスが取れたんじゃないかなって。何て言うか“(リスナーを)限定したくない”っていう気持ちがあるんですよね。いろんな人の日常に寄り添えるアルバムにしたかったというか…。そこもわりと上手くいったと思います。私もいままででいちばん好きなんですよ、今回のアルバムは。
──素晴らしい。ライブで披露していた新曲も好評でしたからね。
そうなんですよ。去年のツアーで新曲を4曲やってたんですけど、最初はやっぱり「これ、私しか“いい”って言わないだろうな」って思ってたんです。でも、お客さんがすぐに覚えてくれたり、Twitterで「新曲メッチャ良かった」って呟いてくれて。いま自分がいちばん好きなのは「中庭の少女」なんだけど、みんなもすごくいいって言ってくれて…。そこは充実した感じでしたね。
──レコーディングもスムーズでした?
そうですね。スケジュール的にはタイトだったんです。ツアーと同時進行でレコーディングをやってたし、武道館が終わったあともまだ(レコーディングが)続いていて。いままでよりも忙しかったんだけど、心にはゆとりがあった気がします。いつもけっこう焦ってたんだけど、今回はそんなこともなく、しっかりこだわって作れましたね。ただ、ライブとレコーディングの切り替えは相変わらず難しいです。ちょっとした感覚の違いだと思うんだけど…。
──アレンジも少しずつ高度になって、音数も増えてきて。演奏力も求められますよね。
演奏は……わりと良くなったんじゃないかなって。もちろん、まだまだ頑張ろうと思ってますけどね。ずっと“いまのままじゃダメ”って思ってるんですよ。もともと演奏が上手いって感じでやってるバンドじゃないんだけど、ライブの規模はだんだん大きくなってるじゃないですか。だから余計に“このままじゃ…”って焦るっていう。練習もけっこうやってるんですよ。学校に行くようにスタジオに入ってるので。
──特に吉川さんはマジメに練習してるみたいですね。
マジメですね!昨日も打ち合わせのあと、ひとりでスタジオに入ってたし。最近、そのことを恥ずかしがって言わないんですよ。「私、この後、用事あるから」って帰っちゃうんだけど、後で問い詰めると「スタジオに入ってました…」って(笑)。松岡も引っ張ってくれるんですよね、吉川は。「ふたりで練習するよ!」って。3ピースバンドだから、リズム隊はすごく重要ですからね。
──そして4月からは初の全国ホールツアーがスタート。『SHISHAMO 3』の楽曲をじっくり楽しめるツアーになりそうですね。
いちばん大事なのは曲だと思ってるので、楽曲をいちばんいいカタチで届けることを考えながらライブをやりたいですね。曲が主役になると思うし、そういう意味では、いまのSHISHAMOがやりたいライブが出来るんじゃないかなって。私たちのライブって「生まれて初めてライブに来ました」っていう子も多いんですよ。それはすごく嬉しいし、そういう人たちに自分だけの楽しみ方を見つけてほしいなって思います。ただ、ちょっと久しぶりのライブだから、不安なところもあるんですけどね。
──そんなに久しぶりでもないでしょ?
ずっとライブをやり続けてるので、ちょっと間があくと、やり方がわからなくなっちゃうんですよ。この前も“マイクの位置って、どれくらいだったっけ?”みたいになっちゃって(笑)。でも、大丈夫だと思います。何だかんだ言って、3人とも本番に強いタイプなので。
インタビュー/森朋之