Eins:Vier(アインスフィア)が結成30周年のアニバーサリープロジェクトの一環として計画したものの、コロナ禍で中止になってしまった主催イベント"KATHARSIS 2020”を、時を経て出演者も新たに『Eins:Vire Presents "KATHARSIS 2023"』として12月22日、23日、東京・赤羽ReNY alphaで2日間にわたって開催する。1日目はアインスのフォロワーとなる世代からメリー、Karyu(Angelo/ex.D’ESPAIRSRAY)が新しく立ち上げたH.U.G.。2日目は90年代、大阪のロックの聖地といわれていたライブハウス BAHAMAで切磋琢磨してきたAfterZERO時代の盟友であるGargoyle、Valentine D.C.が登場。一度は解散したアインスがここまでバンドを蘇らせた復活劇。さらに、今回開催する時代も音楽ジャンルも超えた個性的なマッチアップイベント"KATHARSIS 2023"についてリーダーのLuna(Ba)に話を聞いた。
——じつは、Eins:Vier再結成の始まりのライブ、2011年にさいたまスーパーアリーナで開催した“V-ROCK FESTIVAL ’11”、客席で拝見してました。
まさにあれが再結成した本当のきっかけで。しかも、偶然が重なり合って再結成できたんです。
——かなりミラクルなことだったと。
そうです。まず、当時僕は別のバンドをヒロちゃん(Hirofumi/Vo)とやってて。そのサポートギターをYoshitsugu、ドラムは別の人にやってもらってたんですね。それでリハをした後、みんなで軽く呑みに行ったところにVフェスへのお誘いの電話がかかってきたんですよ。本当にたまたま。みんなが集ってるときやから、僕も言いやすかったんです。これがもし、僕だけしかいないときにかかってきてたら再結成はなかった。
──そうなんですか?
はい。ヒロちゃんは当時“絶対やらない”って断言してたんで。それで、呑んでるときに“こんな誘いの電話きたで”ってみんなにいったら、ヒロちゃんは渋ってたんですよ。そうしたら、その時のドラムの子が“そんなすごい話もらえるなんて、やるしかないやろ!”“やる一択しかない”ってすっごい言ってくれて。
──そのパッションでHirofumiさんの気持ちが動いた。
そう! 俺とYoshitsuguだけやったらヒロちゃん説得できてなかったと思う。だから、なにもかもが奇跡のタイミング。あのとき、あのシチュエーションであの電話がこなければ復活劇はなかったかな。
──そうだったんですね。
それで、どうせ復活するならワンマンを大阪と東京でやって。そこで終わる予定だったんですよ。だけど、東京のライブ映像を撮ってたので、そのリリースに合わせてライブをやってくれないかという話があって。翌年ライブ映像作品の発売記念みたいな感じでライブをやりまして。そこで終わりかなと思ってたんですよ。そうしたら、今度はヒロちゃんが“もう1回やらへんか”って言いだして。
──嫌がっていた張本人が率先してやろうよと言い出した。
そうそう(微笑)。俺はもう十分やったから“もうええよ”っていう感じやったんですけど、そのときのヒロちゃんのやりたいパワーが凄かったんですよ。俺は、やるならちゃんとしたものを計画立ててやるんやったらええよといって。そのときから、知り合いだった外部のスタッフに入ってもらったんですよ。そうしたら、いきなり全国を2DAYSで回るツアースケジュールが組まれて。そのツアーを回るためにセルフカバーアルバム(2018年発売の『Searching Red Light』)を録ることになったんですよ。
──ここで活動規模がいっきに拡大!
でも、これで全国を回ってみたら、回を重ねるごとに俺らのライブもファンも、ファイナルに向けて一帯になってどんどんどんどん盛り上がっていって。すっごくいいツアーになって、めちゃくちゃ良かったんですよ。
──それだけ全国各地にアインス復活を待っててくれたファンがいたということですよね?
そうですね。やればやるほどフロアのエネルギーが大きくなるのが分かって、ライブ中にもう何回泣いたか。グッときましたね。ファイナルは全国各地からファンが集まってくれて、チケットも最後にはSOLDして。もう出来過ぎた話みたいなんですけど、本当に感無量な感じでした。そこで、アインス復活めでたしめでたしと思っていたら、その翌年。スタッフに呼び出されまして。“またやりませんか?”と。
──感無量で終わっていたところに。
今度は“バンド結成30周年だから、それに合わせてライブをやって、それに合わせて今度は新曲を作りましょう”と口説かれまして。
──30周年のアニバーサリーイヤーに合わせて、そんな壮大な計画が持ちかけられた訳ですね?
はい。でも、そんなアインスで新曲作るなんてモチベーションは俺にはまったくなかったから、どうなることやろうと。だから、納得いくものができひんかったら無しでいいからっていうの前提で、制作を始めたんです。
──そうして、制作に入ってみたら5曲入りのミニアルバム『five sights』ができてしまった。
そうです。そのなかに「100年の幻想」という曲があるんですけど。このサビメロが自分のなかで浮かんだときに“これはいける”と思いました。それで、レコーディングはギリギリセーフやったんですけど、この後のライブはコロナの影響で全部できなくなってしまって。CDの発売もライブもどんどん延期になっていってしまったんですね。じゃあこの空いた時間で5曲全部のMVを撮ってみようと。これは僕が提案したんですけど。
──昔はよくありましたよね。全曲MVが付いた作品。
僕らもインディーズ時代に作った(『Eins:Vier To the Flat』)ことがあって。それはロンドンと香港でロケをして作ったんですけど。あの作品のイメージで5曲のMVを撮ったんです(初回盤とオンライン限定版に付帯した『five sights [moved]』)。いざ撮影が始まってみたら大変で(笑)。1本1本撮る余裕もないから、ロケ地ごとに“この曲のここの部分をお願いします”“次はあの曲のここの部分です”って。
──各曲のピースごとにシューティングをしていった訳ですね。
はい。それが、完成してみたらピースが全部綺麗にハマって。最後にはそれぞれ別のものが仕上がってたんです。セルフカバーアルバムを作ったときに「In your dream-2018」だけMVを撮ったんですけど。その映像がすっごいよかったんで、この作品も全曲その監督さんに撮ってもらいました。コロナがなかったらこんな映像作品を作る予定はなかったので、大変でしたけどいいものができたので良かったです。それで、リリースが延期になってしまっていたミニアルバムを2020年11月に発売して、延期になってたライブを2021年に開催できたんです。
Eins:Vier / In your dream - 2018
──コロナで延期になった30周年のアニバーサリーイヤーの計画がやっと動き出したと。
はい。それで、元々は今回のイベントも、そのアニバーサリーイヤーの一環で"KATHARSIS 2020”を2020年に計画してやろうとしてたんです。それがコロナの影響で中止になってしまったので、今年はたぶん大丈夫やから、出演者も新たに"KATHARSIS 2023"としてやろうと言われまして。
──また、それもスタッフにですか?
はい。再結成後はずっとそんな感じです(微笑)。誰かが嫌やって言うなら無理にやることもないし。そういう柔らかいスタンスで(音楽活動を)やってる感じですね。だから、新曲はこりごりです。もう頼まれても無理(笑)。
──こんなに柔らかなほんわりしたゆるふわなスタンスで、それでも外からの後押しを受けながらバンドが続いてくというのが、なんともアインスらしいと言いますか。
いまは本当に気負った感じはなく、自然な感じでやってますよね。