みんな昔の曲ってやらなくなるじゃないですか。で、たまに昔の曲だけやって、その後にドーンとお客さんが戻ってきたりすることがあるけど、僕はそれが嫌で。僕は常に新曲をやっていくし、昔の曲もアレンジを変えて、今の形にしてやっていますよっていうことを見せるアーティストになりたかったんですよね。だけど、それをやっていくと、古い曲をやってもあんまり喜んでくれないですよ(笑)。
そうそう。こういうこともあるのかって気付きながら。でも、時期で縛ると、より濃く理解してもらえるかなと思ったりとか、あとは昔の曲もやっているとは言いながらも、やっていない曲もあるんですよ。自分はもちろん好きだけど、当時ライヴでやってみたらいまいちノリが悪くてやらなくなってしまった曲もあったりして。でも、時間が経つと「あの曲ってやらないんですか?」って言われるようになるんですよね。たぶんそれは、聴く時間、聴く回数が増えたからで、随分久し振りにやってみたら、当時とまったく違うノリになることもよくあるケースなんです。そうなったら一番いいかなって。だから、今はすごく新鮮な気持ちでやってますね。昔の曲の歌詞も、新曲の歌詞を覚えるみたいで、20歳前半ってこんなこと考えていたんだなとか。
ボーカリストが初期の曲をやらなくなるのって、歌詞を歌えなくなるケースが多いんですよ。「この歌詞はもう歌いたくないな」とか。でも、僕はデビューする前からそうなることが嫌で。たぶんいろんな人のインタビューを読んだんでしょうね。とにかく世に送り込む歌詞は、背伸びしてたわけじゃないけど、歳を取っても歌えるのかっていうことを徹底して書いてきたんです。そのおかげか、これはもう歌えねぇやっていう歌詞がないんですよ。自分が成長してないだけかもしれないけど(笑)。
それが非常に嬉しかったですよね。曲なんかはね、大人になって引き算が始まってるんで、この間奏こんなにいらないなとか、すぐ歌に行きたいなとか。あと、ギターソロもなく突き進む曲が多いんで、ここでちょっと休みてぇなとかね(笑)。そういうのはありますけど。
そうですね。僕がそう感じるぐらいだから、お客さんにもそう思ってもらえたらいいですよね。思い出を買いに来たついでに、そういうところも楽しんでもらえたら、それは全然楽しいことですから。
今回のライヴを発表したときに、主婦の方々が「子供を預けていきます」とか、サラリーマンでいい役職に就いている子が、「役職が上がったんで、部下に頼んで休みとれそうです」とか、いろいろメッセージをくれて。そういう状況になってでも来ようとしてくれている人がいるわけじゃないですか。もちろん来るのがどうしても無理な方々もいるけれども、結局、頑張って来てくれた人が会場にいらっしゃると思うんですよね。だからたぶん、この楽曲を一緒に育ててきたのはこの人達なんだなって思うんでしょうね。ひたすら感謝を感じるライヴになるかなと思うし、これだけ時間が経っても、僕の楽曲というものを真ん中に置いて分かりあえる環境というか、その場を作れていることに、自分自身も感謝できるというか。そういう思いが強くなるのかな。ライヴをやり終えてどう思うかはわからないけど、でもまぁ、昔の曲をいっぱいやるのもいいけど、やっぱり新曲やりたいなって思いたいですね、最終的には。
人生論ですね。
もうズバリそうで。21歳でデビューして今年で45歳になるんですが、あと20年歌えたら還暦は超える。30年歌えたら今のThe Rolling Stonesぐらい。日本だと矢沢永吉さんが70代になっても続けているけど、吉田拓郎さんみたいに引退を公表する方もいらっしゃいますし、去年、スティーヴン・タイラーがツアーをキャンセルしていたんですよね。すごく余計な心配ですけど、スティーヴン・タイラーでもこうなるのかって思いましたし。やっぱり永遠じゃないわけですよ、声帯とか喉って。もちろん歌えるならずっと歌い続けたいのが自分の本当の気持ちだけど、じゃあどこまで頑張れるかと考えたときに、あと半分だぞと。いや、半分と考えるのも欲張りすぎなんじゃないかと。医学で寿命が延びている事実があったとしても、それを意識して活動していくことが重要なんじゃないかなって思ったんです。
それを受け入れることが人生だと思いますしね。最後はブルースマンみたいに、座ってギターを弾きながら歌うことが成立するならいいけど、僕はギタリストじゃないから。だから、ちゃんと立って歌えるのは、はたしていつまでなのかということは、日々思っていて。かといって、か細い声で歌う気もないし(笑)、明日のことなんて考えていたらできないですから。もちろん喉のケアもしていますし。ただ、そういう葛藤がいろいろ増えてきたんだと思うんですよ。それが「STONE,ROLLIN'」の歌詞になったんじゃないですかね。
ああ。シャンソンとかソウルって人生ですよね。確かに……やっぱりそういうことなのかな。今、本当に何をやりたいかと言われたら、僕はソウルって即答しますけど、ソウルって人生論の歌詞というか、まあ、人生論を歌っているからソウルだと思うんですけどね、そもそもが。だから、50代、60代になったときに、そういう情熱的な歌詞を歌っている男になっていたいなと思いますね。ちょっとずつ変化して行って、そこに行けたらなっていう感覚はあります。
コンセプトツアーについて語る連載がスタート!
第一回目は2月24日(金)18:00公開予定。お楽しみに!
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