──改めて、the band apart(以下バンアパ)は不動のメンバー4人で20周年を既に超えているのは本当に凄いことだと思います。川崎さんの実感としてはいかがですか?
何も気にせずにやっていたら、20年経ったという。楽器を弾くのが好きだし、バンドをやることが好きですからね。そう考えると、あっという間でした。
──でも楽しいだけじゃ続けられない部分もあると思いますが。
仕事をやりながらでもバンドは続けられるし、僕も仕事はしてますから。趣味の延長線上で20年間やってる感覚はありますね。
──自分の信念は曲げずにやれたこれたのも大きい?
誰かにこうしろと言われずに、自分たち主導でやれてますからね。まあ、僕らは世間知らずで(笑)、業界の知り合いも少ないから。
──では、今年10月に出たばかりの『POOL e.p.』についても聞かせてください。以前に出した『BONGO e.p.』(14年発表)のときに全編日本語詞、メンバー4人が1曲ずつ作詞作曲したものを持ち寄った作風でしたよね。今作もそのスタイルを踏襲しようという気持ちはありました?
自然の流れでいつも作品を作るので…僕は作曲が苦手なのでいろんな人の力を借りないとできないから。誰かが主導している部分は同じなんですけど、今回の作品も一人で全部仕上げる感じではないですね。
──『BONGO e.p.』から5年経ってますからね。作曲の方法もまた変わりました?
今のスタジオは環境的にもバンド全員が集まりやすくて、そこは大きな違いですね。今はオープンな感じでやれてます。
──そのオープンな気分が曲調にも表れているんですかね。今作はとても風通しのいい作風に仕上がっているなと。
今作は録りながら変えたりして、臨機応変にやることが増えましたね。『BONGO e.p.』の頃はカチッとこうしなきゃ!という部分が強く出てましたから。今回はゆったりした部分が曲調にも表れているかなと。
──確かに。『BONGO e.p.』も誰主導で作ったのかわかる作風でしたけど、今作も「ディア・ワンダラー」の甘いメロディは荒井さん、「夢の中だけで」は"ギター"という歌詞があるので川崎さん、「DEKU NO BOY」は曲名からして原さんっぽいし、「SCHOOL」はほかの3曲とはリズムのニュアンスが違うので木暮さんかなと。
まさにその通りですね(笑)。みんなの癖が出ているし、それに合わせることをこの20年で覚えました。こうしたほうが喜ぶんだろうなって、気を遣えるようになりました。『夢の中だけで』は苦しみ抜いた曲で自分と原で一緒に作って、3曲目(『DEKU NO BOY』)と繋げるというアイデアはあいつが出したものなんですよ。自分では絶対作れないようなゆっくりした曲だから、それは新鮮でしたね。
──「夢の中だけで」の元ネタは川崎さんが作ったものなんですよね?
そうですね。アップテンポで音を詰め込みたいと思うタイプだけど、年齢のせいもあるのか、もう少しゆっくりしたのもいいんじゃないと思って。
──今作の中ではわりとシンプルな曲調ですよね。
はい。この手の音楽は聴くけど、作る側に回ると、これでいいのかな?と思っちゃうんですよ。どうしてもロック寄りになってしまうから。最初はレニー・クラヴィッツにそっくりかもと思ってドキドキしたけど、全然違うものになったので良かったです(笑)。
──あと、原さんによるプリミティヴな叫びもいいフックになってますね。
ほんとはそういう曲が好きで、原はそういう部分もわかってますからね。狂った部分も好きですから。
──パッパラー♪のコーラスも最高だし、アウトロはバンアパらしいインストで締め括るという。
うん、そうですね。リフを作るのが好きなので、それをどう曲に入れるかは課題ですね。ああいう展開に持って行く曲は多いんですけどね。
──ええ。そして、ほかの3曲は関して川崎さんの中で苦労したところはありますか?
「ディア・ワンダラー」は難しいBPMで詰め込み過ぎると、くどくなってしまうから。もっと速いテンポの方が得意なので、個人的には大変でした。「DEKU NO BOY」は原の曲でシンプルだけど難しいんですよね。普通のコードで収めないし、それは凄いなと思います。「SCHOOL」は木暮が作ったものだけど、エフェクティヴなものが好きなので、一緒に話しながら進めていきました。これはどうライヴで再現しようかなって。それを考えるのも楽しいですからね。