日本で一番カッコいいと思えるロックバンド像を突き詰めていきたい(RYO)
──『Zippy Gappy Zombies』を作るにあたってファンの皆さんの投票結果が出た時は、どんなことを感じましたか?
高野当然ともいえるけど、やっぱり初期の曲が選ばれましたね。完全に上位10曲の中に再結成後の曲は入っていなくて、そりゃそうだろうな…という。皆さんにだいぶ擦って聴いていただいた昔の曲達を、今の我々……もうカスカスになった今の我々が形にしたのを聴いてみたいんだろうなと思った(笑)。
RYO“カスカス”って(笑)。
高野アハハ(笑)。でも、自分がファンの立場になったら、聴きたいのはそういうものなんですよね。自分が好きなアーティストのデビュー盤を50代、60代になった彼らが音源化したら、どういうものになるんだろうと思うから。たとえば、もしもまだジョン・レノンが生きていて、今の解釈でビートルズを歌ったら絶対に聴きたい。今回の『Zippy Gappy Zombies』は、そういう楽曲が集まったんだと思います。ただ、正直なところ、やりたくない曲もあった。自分の中で、もう歌う意味のない曲は歌いたくないんですよ。あとは当時の思いがガッツリ入り過ぎていて、歌うことで、もう一度自分の友達を殺すことになってしまう曲もあって、それが選ばれていたりしたし。だったら、そもそもそんな曲レコーディングするんじゃねぇよという話になりますけど(笑)。出した曲はお客さんのものだから、それをまた聴きたいと言われたら聴かせるのが発信者の責任で、それが嫌だというのは訳がわからないですよね。ただ、投票結果を操作したらいいじゃんという声もあったんですよ。嫌な曲は入れなきゃいいじゃんと。でも、そこは正々堂々としたいなと思って、入れることにしました。
RYOファンの投票結果を見て思ったのは、やっぱり暗めの曲を選ぶんだなということでしたね。ZIGZOの音楽はただ楽しいだけじゃなくて闇の面もあって、そこが受け入れられているバンドなんだということを再認識しました。聴き入ってしまうような表現力が認められているんだろうなと。
──ZIGZOは“哀しみ”や“痛み”などを表現することでリスナーを暗い気持ちにさせるのではなく、浄化させる力を持っていることを感じます。では、昔の曲をあらためて録るうえで大事にしたことは?
RYOあまり手を加えないようにしました。曲を分解したり、ギターを大幅にアレンジしたり、今の音楽っぽくしたりというんじゃなくて、今の自分達がライブで演奏している形をササッと録りたかったんです。
高野SAKURAさんがレコーディング中によく言っていたことがあって。たとえば歌とかギター・ソロで、ちょっと自分の思惑と違うテイクになった時に“ごめん、今の録り直させて”と言うと、SAKURAさんがやり直さなくていいと言うんですよ。思惑と違うものを直すのは、過去にやったことじゃんと。たしかに、やり直すと過去の音源に寄っていってしまうんですよね。そうしないことで、『Zippy Gappy Zombies』はより新鮮に聴こえる部分もある。だから、SAKURAさんの判断は正しかったと思います。
──無理にリ・アレンジしたりしないことが奏功して、楽曲の良さがスポイルされることなく、プレイヤー/バンドとしての円熟味が味わえる理想的なアルバムになっています。さて、現在のZIGZOは今年の2月から来年の1月まで続くロングツアーの最中です。ここまでの手応えは、いかがですか?
高野毎晩、毎晩、楽しいです。これからライブを観る人にネタバレになってしまうから詳しいことは言わないけど、(海老一)染之助・染太郎が会場中にいる感じになっている(笑)。“おめでとうございます!”と、お客さんとメンバーが言い合っているみたいな(笑)。だから、ずっとハッピーで、それが揺らぐような瞬間というのがないんですよ。そういうツアーになっているから、ファイナルのマイナビBLITZ赤坂のライブは、すごいことになると思う。もう“おめでとう!”であふれ返った空間になるんじゃないかな。
RYOそうだね。ファイナルは、ぜひみんなに集まってほしいです。哲も言ったように、今回のツアーは本当に雰囲気がいいんですよ。ただ、今は月1でワンマンライブをしているけど、これがたとえば2カ月間ずっと出ずっぱりで詰めてライブをして、毎日のように顔を突き合わせていたら違った感じになっていたんじゃないかとも思う。月1でリハに入って、ZIGZOのライブをやるぞという今の気持ちの合わせ方が、メンバー全員すごくいいバイオリズムでできていることを感じるんですよ。大人のバンドのあるべき姿はこれなのかもしれないという気がして、それを感じられたという面でも今回のツアーは意味があるなと思っています。
──“大人のバンド”という言葉が出ましたが、現在のZIGZOはベテランらしい貫録や円熟味がありつつ“オジサン感”がないことも魅力になっています。
高野基本的に4人ともチャラいよね(笑)。
RYOそうね。
高野チャラいし、そもそも音楽を始めたきっかけが、“女にモテたい”だったから(笑)。そして、ずっとモテていたい(笑)。そういう人はいくつになっても変わらないし、ZIGZOはそういう4人の集まりだから(笑)。
RYO俺の中にはステージに立つべき姿というのがあって。ずっとステージに立ちたいがために生きているみたいなところがあるから、そのためだったらどんなことでもする。そういう意識のもとに日々過ごしています。
高野俺が思うに、ZIGZOの4人は子供だった頃に憧れたスター像に、まだいき着いていないんですよ。今でもその姿を追い求めているし、そこにたどり着けるメロディーや歌詞を探している。そういう状態だと、老けないですよね。だから、ミュージシャンとして完成したことを感じたら、一気に老けるんじゃないかな。
RYOいきなり杖を突きだしたりとか?(笑)
高野そう(笑)。で、そういう姿を見せるのも、いいんじゃないかなと思っている。
RYOそれは嫌だ。だったら、哲にはずっと完成しないでほしい。俺は枯れていってもいいとは思っていなくて、“日本で一番カッコ良いロックバンドはこれだ!”というのを突き詰めていきたいと思っています。ZIGZOの次のアルバムのリリース日も決まったことだし。
高野そう、発売日を決めました。2021年6月20日。なぜ、その日なのかというと、“21620”は“ZIGZO”と読めるじゃないですか。だから、ファンの間で“21620”はZIGZOの日ということになっていて、21世紀の6月20日はZIGZOの日だと言ってくれていたりするんですよ。だから、ちょうどいい“21620”を見つけたと思って、その日にアルバムを出すことにしました(笑)。再来年なのでまだ先の話だけど、楽しみにしていてほしいです。とか言っておいて、出さないかも知れないけど(笑)。