【インタビュー】表現者として新たなフェーズに入った黒木渚に、アルバム「檸檬の棘」とワンマン公演について話を聞いた

インタビュー | 2019.11.08 12:00

──「ロックミュージシャンのためのエチュード第0楽章」も印象的でした。クラシック的な旋律と豪快なロックギターが融合した個性的な楽曲だなと。

この曲は去年、SPARKS GO GOの橘あつやさんに出会ったことがきっかけですね。ライブを拝見して、あまりにもうますぎる演奏に「しびれるプレイを観た!」と感じて。橘さんって、ふだんは優しい神様みたいな雰囲気なんですよ。でもステージに立つと益荒男みたいになって、「こういう二面性を持ったロックミュージシャンって、いまはいないよな」と思って。「ぜひ一緒にやりたい」と思って、ライブからの帰り道に作り始めたのが「ロックミュージシャンのための〜」なんです。あと、小説を書いていたときに聴いてたショパンの影響もありますね。ショパンの手癖というか、スケール(音階)みたいなものをトレースして、アカデミックな要素もあって。それと橘さんのギターがぶつかり合う——かめはめ波がぶつかる瞬間みたいな(笑)——曲にしたいなと。この曲、自分でディレクションしたんです。橘さんに「若いミュージシャンを皆殺しするような気持ちで弾いてください」ってお願いして(笑)。

──(笑)甘っちょろいロックミュージシャンに向けられた歌詞も…。

辛辣ですよね(笑)。私自身、足並みを揃えて進めない人がいるとイライラしちゃうんです。「邪魔しないで、突き抜けさせてほしい」って。私はソロアーティストですけど、組織として物事を進めているし、歯がゆい思いをすることもあったので。

──シングル「ふざけんな世界、ふざけろよ」(2016年)、「解放区への旅」(2017年)が最初と最後に置かれているのもポイントだと思います。どちらも小説「檸檬の棘」を執筆する前に制作された曲ですが、この2曲の存在によって、アルバム全体が締まっているというか。

そうなんですよね。曲をリリースした後に「そういう意味だったのか」と納得させられたことが多かったんですよ。実際、「ふざけんな世界、ふざけろよ」とか「ここから解放されたい」という出来事があったし、この2曲があったからがんばれたというか。いつもそんな感じですね。「革命」も「虎視眈々と淡々と」もそうだったし。

──今回のアルバムはシリアスな状況を経ての制作だったわけですが、黒木さんにとってはどんな時間でした?

すごく楽しかったです。制作できるコンディションになったときは本当に嬉しかったし、音楽をやりたくてたまらない状態だったので。しかも、ずっと一緒にやっている仲間との制作ですからね。その日のレコーディングが終わったら飲みにいったり、ただただ楽しい日々でした。歌だけはまだデリケートな状態だったから、自分だけで録ったんですよ。プロデューサーの方にもスタジオから出ていただいて、自分でディレクションして。上手く歌えないという不安もなかったし、「こんなに声が出たの、久しぶり!」って笑いながらやってました。

──素晴らしい。小説を書くことで、改めて自分自身の過去と向き合ったのも、結果的には良かったんでしょうね。

そうだと思います。小説を書き終えたとき、父が夢に出てきて、「さようなら」って言えたんですよ。「さようなら」を言えないまま訣別したせいで、ここまでこじれていたんですけど、ちゃんとさよならを言えたなって。そのときですね、本当に小説を書き終えたんだなと思えたのは。

──そして2020年の1月、2月には福岡、東京2カ所でワンマン公演「檸檬の棘」が行われます。もちろん、アルバム「檸檬の棘」の楽曲が中心なんですよね?

それだけじゃなくて、小説も絡ませたいと思ってるんですよ。(アルバム、小説から)ワンマンライブまですべて同じタイトルで統一したのは、それをやってみたいという気持ちがあったからで。“アルバムの世界をライブで立体的に表現する”というのはずっとやってきたことですけど、文学と音楽を同時に感じられるライブは、いまのところ私にしか出来ないのかなと。以前から演劇的な要素も取り入れているし、お客さんも(音楽と文学が共存するような)そういうライブを楽しめる感性が備わっていると思っていて。難解なものを表現したときのリアクションもおもしろいし、今回はもっと想像の余地を残すようなライブにしたいですね。あまり説明的ではないライブというか。

──オーディエンスを信頼してないとやれないですね、それは。

そうですね。私はもともと、「おまえにはこれがわからないだろう」と突き放されるような芸術が好きなんです。そういうものが減っているので、だったら自分でやろうという感じもありますね。今回は完全に自分だけで演出しようと思っていて。もちろん、まわりのスタッフにもいろいろと頼んでますけどね。

──信頼できるライブ・チームが出来たという実感もある?

やっと完璧なチームになりました。8年かかりましたけど、お互いに引けを取らない才能を持った人たちの集団を作れたなって。信頼して任せられるし、向こうから出てきた発想も遮らないようにしたいんですよね。労働環境はめっちゃいいです(笑)。

──声に対する不安もないですか?

どうだろう? 喉が不調になってからは、ステージやマイクが怖くなったこともあったので…。でも、人のライブを観て「わたしもやりたい」って悔しくて泣いてしまったくらい、ライブをやりたったかったんですよ。ステージに立って、お客さんを見たら、きっと大丈夫だと思います。

PRESENT

直筆サイン入り「檸檬の棘」ポスターを1名様に!

受付は終了しました

公演情報

DISK GARAGE公演

黒木渚 OMENAN LIVE 2020「檸檬の棘」

2020年1月11日(土) DRUM LOGOS【福岡】
2020年1月17日(金) マイナビBLITZ赤坂【東京】
2020年2月21日(金) EX THEATER ROPPONGI【東京】

チケット一般発売日:2019年11月9日(土)

RELEASE

「檸檬の棘」

NEW FULL ALBUM

「檸檬の棘」

(Lastrum)
2019年10月9日(水)SALE
※初回限定盤A[CD+DVD]、初回限定盤B[CD+冊子]、通常盤[CD]の3TYPE

※画像は上から、限定盤A、限定盤B、通常盤

BOOK

自身初の私小説『檸檬の棘』
11月5日(火)講談社より刊行
※刊行記念トーク&記者会見を開催!

TV

日本テレビ系「news zero」11月7日&14日放送の木曜パートナーとして、黒木渚が出演決定!
放送をお楽しみに!

  • 森朋之

    取材・文

    森朋之

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