──なるほど。そうして、このアルバムでSKY-HIが壇上から下りてまで届けたかったのは、「Marble」の“この世界はモノクロじゃないぜ”というところに完結していく作品だと思うんですけど。「Marble」がアルバムの肝になるというのは最初から見えてたんですか?
はい。ぼんやりと「Marble」が主役になるアルバムかどうかで、アルバム自体の形が変わるなとは思ってました。でも、8月7日にMIX TAPE『FREE TOKYO』(自身がメジャーデビュー5周年を迎えた日にミニアルバムである本作を無料配信)を出して、すぐ夏フェスシーズンに入って。9月からアルバムの制作をスタートして、10月中に全部レコーディングしないと出せないというスケジュールのなか、ツアーも始まってたから。いろんなことを同時進行してたんですよ。なので、アルバムも「What a Wonderful World!!」が頭にきて、次に「Shed Luster」を入れようぐらいで、あとは4パターンぐらいのセットがあったんですね。9月後半の段階では。その時点ではいまボーナストラック扱いにしているシングル曲も混ぜちゃって、コンセプチュアルなものにしないセットとか、いろいろありました。
──その結果、ビッグタイアップシングルをあっさりボーナストラック扱いにしちゃうんですから。
馬鹿なんじゃないか、と(爆笑)。
──まさにそれ!でも、聴けば分かるんですよ。あの曲順のなかには入れられないですもんね。どう考えても。
そうなんですよ。それも「New Verse」ができたお陰。そこから「Marble」をリレコーディングして歌いたいというのを10月の半ばにお願いして。「New Verse」ができて、「Marble」という楽曲をちゃんと聴かせられるのが分かったから、シングルを“えいっ!”て後ろに回して、「New Verse」に到るまでの話を作ることにしたんです。ボーナストラックにすることで「Driver's High(Resound for JAPRISON)」(アニメ『ガンダムビルドダイバーズ』OPテーマ曲)も、UNISON SQUARE GARDENの斎藤(宏介/Gt)さんがギターまで弾いてくれてるんだけど、これでちゃんとサウンドをアルバムに寄せる踏ん切りがついたし。
──そうしたからこそ「Marble」が本当にしみる曲になって。アルバムになって、やっと自分の歌として対自できた気がしました。前はもっと華やかで、みんなの歌だったんですよ。自分にとっては。
そうですね、“いい曲”とはみんなにいってもらえたけど、共感性が弱かったのかなって。いまとなってはですけど、思いますね。アルバムで「Marble」聴いてたらめちゃくちゃよくて。“あれ、これこんなによかったっけな”って思ったんで。おっしゃっていただいたような効果が出せたんだと思います。
──そして、今作は通常盤以外にMusic Video盤、Live盤、初回生産限定盤など手を替え品を替え、いろんなバージョンがありすぎてどれを買うかが悩みどころなんですけど。なにかアドバイスはありますか?
今回はやりすぎました(笑)。
一瞬もラッパーじゃない瞬間がなくなる。そういうステージを作りたい
──では、ここからはツアーについても聞かせて下さい。バンドセットを従えてとなる<SKY-HI TOUR 2019 -The JAPRISON->ツアー。いまの時点では、どんなものを計画してるんですか?
いままでのショーアップ、エンタテインメントなステージはサービス精神を大事にしてたんですね。それは、のっけからステージの上からハードなラップばかりをいきなり浴びせられるのは、この国では辛かろうという配慮があってだったんだけど。一番好きな<SKY-HI TOUR 2018-Marble the World->も頭のほうで、ポップに明るく楽しく、ディズニーランドぐらいのテンションでどこまでも明るくエンタテインメントしてっていうのを大事に。しかもそれを矢継ぎ早にやってって。辛いのは俺たちの体力だけ、観客には“楽しい”ということ以外考えさせない、休ませないというのを冒頭でやって。そこで入り込んでもらったあとは、ラップでエンタテインメントできるなと思って、中盤以降に差しかかかっていくという作り方をしてたんですけど。もうそろそろ時代も変わってきたし。<SKY-HI Round A Ground 2018>でライブハウスを回ってても、いまはみんな、歌うんすよ。バースのかぶせとかを。BAD HOPの武道館で7000人が(「Kawasaki Draft」の)“人殺すか ラッパーになるかだ” をいってるのを見たら、Moreすごいなと思って。いまのお客さんの感じを見てたら、これはたぶんラップだけでストーリーを作っていくことは可能だなと感じたんですよ。ミュージカルが苦手だという人がよくいう、“だって普通に生活してる人はいきなり歌ったりしないじゃん”みたいなことの逆?“普通にライブしてる人がいきなりしゃべりだしたりするのはおかしいのでは?”とちょっと思っちゃって。
──いわれてみればそうですね。
いまどういう状況なのかをしゃべり、MCでどうこうするのではなく、そこまでをラップ、音も合わせて完璧にパッケージできたら、一瞬もラッパーじゃない瞬間がなくなる。曲を立て続けにやるだけじゃなくて、いままでやってきたしゃべり、MCも込みでラップ、音、照明を作り込んだものができたらいいなと思ったんです。ひょっとしたらサービス精神はないかもしれないんだけどね。でも、ライブが始まったらずっとつながってるの。途中のMCはないから照明は暗転なしでいけるし。曲間は、これがいったいしゃべりなのかラップなのか。どこまでが決まっててどこからがアドリブなのかが分かんない。みたいなものを作ってみたいな。頭の1時間で。そのあと、センテンスを挟んで、サービス精神満載の1時間。そういうものを作りたいなというアイデアはあります。どうなるかは分からないけど。
──分かりました。では最後に、ツアーに向けて読者のみなさんにメッセージをお願いします。
いままではラップを軸にした最高にエンタテインメントできるライブをずっと考えて作ってきてたんですよ。でもたぶんこのツアーは、技巧的な意味ではなく、本当の意味で自分しかできないライブになるなと思っています。いままでの“俺にしかできない”というところは、こんなにラップしてるのにこんなに踊ってこんなに楽器弾いてというところを指してたと思うんだけど。『JAPRISON』に関しては、そういうもの関係なく、開始15分で“これはSKY-HIにしかできない”と。それを伝えられるぐらいのパワー・オブ・エンタテインメントを提示できる予定(微笑)。で、そういうものを作ったときって、いままで以上にお渡しする言葉の力が増すんじゃなかと薄々思っている訳ですよ。なので、いままでと根底にあるメッセージは大きくは変わらないんだけど、アルバムで俺が自分の弱さをさらけ出してしまった以上、ツアーではどうやってそれをパフォームできるのか?それをやった結果、みんなが自分のことを強く愛して帰ってくれるようになるのか?そこのラストシーンは、まだ演ってないから分かんないんだけど‥‥裸にでもなるか!(笑)。「New Verse」で泣きながら服脱いで。
──(笑)そこはさらけ出しさなくてもいいかな。中身だけで。
はははっ(笑)。でも、それぐらいの覚悟で、人生かけてこのツアーは作るってことですよ。これがどうなるかっていうのは、俺の人生を大きく左右しそうだから。“SKY-HIはこれだ”というのをこのツアーで提示する。そうか、これがSKY-HIなんだというのを強烈に提示するよ。だから、みんな見逃さないように!
前回のインタビュー
≫ SKY-HI “ラッパーとしての自足自立自我ができた、楽しくて仕方ない!”と語る「RAGツアー」 、FINALはエッジーなゲストを迎えた2DAYS!
≫ LINE MUSIC 12/11・12 豊洲PIT SKY-HI RAGツアー最終公演予習プレイリスト
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