前作の「unlock」が冷たく感じた分、新しいアルバムは情熱的なものに
──ベスト盤もリリースされ、充実した10年でしたね。今夏は新作「unbreakable」も発売されました。
前作「unlock」(2017年)は「解放」をテーマに制作を進めました。オリジナルを出すのは1年3カ月ぶりだったので、自分の全てをさらけ出したいと全曲作詞を任せてほしいとお願いしました。僕自身は自分の気持ちの変動や、考えていることを伝えたくて、感じた全てを歌詞に込めたのですが、できあがった作品を聴いたとき「冷たいな」と感じたんです。
──冷たい?
そう。ファンに思いを吐き出しちゃっただけっていうのかな。だからすごく反省して。
──反応はどんな感じだったのですか。
僕が叫んだ言葉を、自分の叫びにしたという反応をしてくれた方が多かったです。わたしは叫べないけれど、曲の中で叫ぶ僕の声を聴いて「すっきりした」と。
──聴き手の代弁者になれたと。良かったですね。
はい。その声を聞いて、僕にはどんな自分も受け入れてくれる、応援してくれるファンの方の存在があるんだということに気付いて、強くなることができました。
──壮大なイントロダクションから始まる「unbreakable」は新しい扉が開いたように感じました。続く「Checkmate」も力強くて。歌う声に、羽が生えているような雄大さがありました。
レコーディングは、アルバムに収録されている順に行う予定で、最初は1日2曲ずつと考えていたんです。でも「Checkmate」を歌ったら、調子が上がってどんどん声が出始めたので、この曲が持つ熱に押されるように制作が進みました。実は、1日でレコーディングが終わったんです。
──えっ!1日ですか。
お昼ぐらいにスタジオに入って約3時間。歌いっぱなしでした。集中していたんですね。歌っているときは感じなかったけれど、帰宅したらさすがにくたくたで。胃が痛くなってきて、その日はご飯を食べることができませんでした(笑)
──なんでまたそんな無茶なことを。
OKが出た曲も、次の日に聴き直したら「もう1回歌い直したい」とか欲が出てくるじゃないですか。今日は、昨日よりももっと良いんじゃないかって。でもライブは1日しかないですよね。「今日は声が出ないから、ごめんね。明日またね」とは言えない。声が出ないなら、表情とかほかのものでその感情を伝えようと努力する。だからレコーディングにも、その緊張感が必要だと思ったんです。
──収録された7曲中、イントロダクションをのぞく6曲全てで歌詞を手がけられました。MVを撮影された「you are my xxxxx」はセクシー、「orange」は飾らない素顔が収められていて、そのギャップに驚きました。
前作の「unlock」が冷たく感じた分、新しいアルバムは情熱的なものにしたくて。「you are my xxxxx」については、「『赤い』曲を作ってほしい」とお願いして生まれました。燃えるような曲にしたかったんです。
──セクシーな声とともに、ライブで盛り上がりそうな、中盤のギターが印象的でした。MVも真っ赤でしたね。
デビューのとき「セクシーでいたい」と張り切っていた僕でしたが、いまは等身大の「エロさ」を感じて欲しいと思ったんです。「セクシー」は4、50代になったら言われたいけど、いまはまだ早い。たとえば会話でも「きのう彼女とキスしたんだ」とは恥ずかしくて言えないけど「チューした」なら言える。36歳、独身。いまのエロさを出したかったんです。
──セクシーではなくて、エロいと(笑)
MVで女の子と絡んでいるのは、10年前もやっていたんです。あのときはモデルさんを抱きしめるとき、どこに手を置けばいいんだろうとか、考えてぎくしゃくしていたけれど、いまはすっと手をまわすことができる。昔のMVを見ると、手が緊張しているのが分かって、逆に恥ずかしいです。
──「orange」のMVはキャップをかぶったラフなスタイルの浦田さんが、歌詞を持ってスタジオに入り、譜面台に用紙を広げて歌い始める。レコーディング中の横顔が切り取られていましたね。
この曲は夕日のオレンジ色を思い浮かべて、結婚する友人のために歌詞を書き下ろしました。
──“恋が愛に変わった時 君の笑顔を必ず守ると決めてた”。結婚式で歌われたら、新婦は感激するでしょうね。
友だちとして出会ってから、付き合い出して、プロポーズするまでの過程を全部知っているので、彼らが持っているぬくもりを言葉にしたいと思ったんです。普段着の飾らない姿を見せてもいいんだと思うことができたことも大きかったですね。
──2019年2月16日(土)には、ソロデビュー10年を記念したライブを中野サンプラザホールで行われますね。12月の東京公演はチケットが完売していたので、楽しみにされている人も多いと思います。
ソロの僕も応援していただけることは、ありがたいですね。ソロはAAAのライブのように踊ったりはせず、歌でどこまで表現できるかを追求しているので、僕の表情にも注目してほしいです。
──中野サンプラザホールにライブを観に行ったことがあるなど、思い出はありますか。
中野サンプラザに初めて行ったのは16歳のとき。本格的に歌を始めようと思ってオーディションを受けたスクールの発表会があるからと呼ばれ、会場に行きました。2階の1番前に座ってステージを観たとき、「こんなにでかい会場で歌っていて、すごい」と感動したことを覚えています。派手な照明などない中で、「自分を見つけてほしい」と一生懸命表現する人の姿に揺さぶられたんだと思います。中野サンプラザホールでライブをすると聞いたときは、その情景が頭に浮かびました。「歌って踊る人になりたい」と思ったあの気持ちを忘れないようにしようと思いました。
──原点の地に、20年ぶりに戻られるのですね。
まさかあの会場に自分が立てるとは。そう思うと感慨深いです。
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