先月、24年の時を経てデジタルリマスターされ再上映された矢野顕子の伝説のドキュメンタリー映画「SUPER FOLK SONG~ピアノが愛した女。~」が大好きで、当時何度も観た記憶がある。
矢野顕子のピアノと歌のみによる驚異の一発録り傑作アルバム『SUPER FOLK SONG』のレコーディングに完全密着した記録映像だが、この「ピアノが愛した女」というあまりに的確で素晴らしいタイトルの通り、それまでに見た事ないような、そのピアノと同化した神がかったパフォーマンスに「何なんだこれは」と衝撃を受け、引き込まれてしまったのだ。
矢野顕子がピアノを弾き、歌い始めると「空気が変わる」とそれを目撃した誰もが言う。
他のミュージシャンとの共演や、大型のロックフェスなどにもアッコちゃんは積極的に参加するので、他のアーティストを観に行ってたまたまアッコちゃんのパフォーマンスを観る事があった人も多いと思うが、観た人はみんな同じ感想を言う。これから観る人も同じ事を感じるだろう。
アッコちゃんがあの愛らしい笑顔で、おもむろにピアノを弾き、歌い始めると、それがどんな場所でも、どんな環境でも、その場の空気は一変してしまう。「常人ではない」と、誰もが瞬時に気付く。誰にも似てなく、誰も真似できない。ロックでなく、ジャズでもなく、ポップスでもない。そこには「矢野顕子」という名のピアノと同化した神秘的な生き物が楽しそうに歌ってる姿だけがある。そしてそれを観た人は、必ず心を揺さぶられる。
上原ひろみを初めて見た時、それと同じ事を感じた人も多いだろう。
僕も10年以上前、テレビで彼女のピアノパフォーマンスを見た時は目が釘付けになった。彼女はあの獅子のたてがみのような髪を揺らせながら、笑みや官能的な表情を浮かべ、縦横無尽に鍵盤に指を走らせまくり、信じられないインプロビゼーション演奏をたたきつけながらピアノと同化していた。この人も常人ではない。「ピアノが愛した女」だと思った。
矢野顕子と上原ひろみは二人とも、女性ピアニストで、ジャンルレスで、圧倒的な才能で、唯一無比の個性で、最強のライブパフォーマーだ。二人の圧巻のパフォーマンスにロック界隈が共鳴反応し、ロックミュージシャンとの共演や、ロックフェスでの活動が多い事も凄くうなずける。
そんなあまりに強烈なキャラクターかつ重なる部分の多い二人が気が合うというのは、それが何のジャンルでも凄く難しいだろうと思うが、この二人は12年前にテレビ番組で初共演し、すぐに意気投合したらしい。でもよく考えてみたら、二人ともジャンルレスで、乱暴な言い方をすれば「来るもの拒まず」でもあるので、ワン&オンリーな二人がすぐ気が合ったというのもどこか納得できるし、何より二人のファンからしたらこんなにも嬉しい夢のコラボはないだろう。
二人は2011年に共演ライブ盤「Get Together ~LIVE IN TOKYO~」を発表し、その後、全国ツアーも行った。そして、その後も鳴り止まない二人の再びの共演を熱望する沢山の声に応え、去年9月、早くも伝説となっているが、Bunkamuraオーチャードホールにて共演レコーディングライブ「ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO-」を行った。
そのファンが待ちわびたライブアルバムがこの3月ついに発売となり、4月からまた待望の全国ツアーも始める。
このユニークなアルバムとツアーのタイトル「ラーメンな女たち」は、ラーメンを本気で愛してやまない二人で決めたのだそうだ。
圧巻の凄まじいパフォーマンスを見せる二人なのに、こんなシュールでおかしなタイトルをアルバムとツアーに真面目につけて、ライブのMCでも「全部の曲にラーメンの精神を注入して演奏します」と真剣にいう。
なぜラーメンなのか。
二人のファンでラーメン好きでもある僕らは、その答えをこのアルバムや、これから始まるライブから探さなければならない。
矢野顕子と上原ひろみよりコメント動画到着!