
最終回 Anne-Marie
初めてAnne-Marieのライブパフォーマンスを見たとき、「完璧じゃないことが、完璧なんだ!」と衝撃を受けた。
圧倒的なパフォーマンスのクオリティ。それなのに、彼女のステージには一切の堅苦しさや壁がない。どんなに大きなステージに立っていても、まるで目の前で歌ってくれているかのような親近感がある。歌っているときの表情や、ふとした瞬間に見せるお茶目な人柄まで、すべてが魅力的だった。
彼女のことをもっと知りたくなって、ドキュメンタリーもYouTubeで何度も観た。日本語訳もついてない映像だったので、意味がわからないところがあればワンシーンずつ止めて、彼女の想いが理解できるまでひとつずつ英単語を調べた。今思えば完全にオタクだ(笑)
そんな彼女のドキュメンタリーの中で、今でも印象に残っている言葉がある。
「Performing is why I do it. But really, that’s probably like 2% of everything you have to do. This is how intense the feeling is when I’m on stage. The fact that percent, the little tiny percent keeps me going.」
“パフォーマンスこそが自分の音楽をやる理由だけれど、実際には、やらなければいけないこと全体のほんの2%ほどにすぎない。それでも、そのわずかな時間にステージで感じる感情が、自分を前に進ませてくれる。”
音楽を仕事にすることは、ステージに立つこと以外にも、本当にたくさんのやるべきことがある。それでも、ステージの上でしか味わえない感覚が、すべてを乗り越えていく原動力になっているのだと思う。
そして、もうひとつ印象に残っているのが、コンサートを終えたあとの彼女の過ごし方だ。
ステージを降りても、なかなか興奮が冷めず、そのままでは帰れないという彼女。そんな高ぶった気持ちのバランスを取るために、帰る前に毎回ジグソーパズルをしてから会場を去ると言う。
あれほどエネルギーに満ちたステージを見せてくれる彼女にも、気持ちを落ち着かせるための時間が必要なんだと思うと、なんだか愛おしく感じた。
彼女は感情の波がとても大きく、感受性が強いからこそ、ステージに立つことがものすごく怖いとも話していた。
私はそれを聞いて救われた。
怖さも抱えたままステージに立つ。そこで得られる感情を全力で味わい、楽しむ。
そんな彼女の生き方が、とにかく好きだ。
実は、私自身も幼い頃から感受性がかなり強い方で、人前に立つことがかなり苦手。学生の頃は人前に出るとものすごく手汗をかいて、声も震えるほど緊張するタイプだったので周りからは意外だと言われることもある。
でも、不思議なことに、私はこれまで数えきれないほどのライブ映像を観て憧れを持ってきた。そして、私が心からやりたいと思うこともやっぱりライブなのだ。
人前に立つことが怖い自分と、ステージに立って歌いたい自分。一見すると矛盾しているようだけれど、私の中でその二つが確かに共存している。
人前に立つことが苦手だからといって、ステージに立ちたい気持ちまで嘘になるわけじゃない。怖いと思う気持ちがあるからこそ、音楽を通して誰かとつながれた瞬間に、大きな喜びを感じるのかもしれない。
Anne-Marieは、そんな自分の複雑さまで、「そのままでいいんだよ」と肯定してくれるようなアーティストで、自分が音楽を心から好きなら、全力で怖がって、全力で進んで、全力で悩んで、そんな今を全力で積み重ねていけばいいと思わせてくれる。
一度、Anne-Marieが来日したときに、豊洲PITで彼女のライブを観たことがある。
画面越しに感じていた印象は、実際に目の前で彼女を観ても変わらなかった。ステージの上にいる彼女は、やっぱり彼女のままだった。
飾らないその姿を見て、改めて思った。
ありがとう、ありがとう、と。
Anne-Marieが、Anne-Marieとしてステージに立ってくれるだけで、私は救われているから。
私が影響を受けたライブ映像。
それは、ただ憧れのアーティストの姿を追いかけるためのものではなく、自分自身を知ったり、また一歩前に進むためのエネルギー源でもあるのだと思う。
全4回にわたって、私が影響を受けたライブ映像についての記事を読んでくださり、本当にありがとうございました。
いつか、この記事を読んでくださった皆さんとも、ライブ会場でお会いできたら嬉しいです。
ぜひ、HIKKAのライブにも遊びに来てください!
これからも、音楽を通して皆さんとつながっていけますように。







