
cali≠gari 33rd&SHINJUKU LOFT 50th ANNIVERSARY ー新宿ロフトがある風景Ⅱー
2026年9月11日(金)新宿LOFT
ソールドアウトだけあって、場内は超満員。和やかにざわめくフロアへ足を踏み入れた途端に聴こえてきたのは、オフコースの“さよなら”だ(しかもエンドレス)。透明感のある美声にひたすら別れを告げられていると、村井研次郎(ベース)、サポートドラムの眞屋善彬、桜井青(ギター)の順でメンバーが登場。最後に石井秀仁(ヴォーカル)が姿を現すと、フリーキーな音出しが妖しいステップを踏むアングラ歌謡へと変貌していき……オープニングは“禁色”だ。

クールな佇まいでプレイに徹する4人だが、cali≠gariとしての初ライヴ時に1曲目で演奏したナンバーをここに持ってきたという選択に、微かな感傷が滲む。そこからさらに歌謡性を強めた“フィラメント”でフロアに手のひらの花を咲かせると、続いてはジャジーなグルーヴで観客の腰を刺激する“東京アーバン夜光虫”。新宿・歌舞伎町のど真ん中にあるこの会場によく似合う危うい華やぎを放ったあとは、 “東京亞詩吐暴威”でささくれ立った詩情を匂わせる。
Vo.石井秀仁
その余韻をかき消すギター・ノイズから一転、ジャキジャキのギター・リフと石井の鋭いシャウトで突入したのは、第7期として活動再開して以降、常にライヴの定番曲であり続けてきた“-踏-”。ここまでほぼ仁王立ちで観客を見据えていた桜井と村井がステージ上を練り歩き、舞台からグッと前へ乗り出すと会場全体からOiコールが湧き起こる。続く“ケセ”ではグルーヴィーなバンド・アンサンブルと桜井の艶かしいダンスが場内の熱を攪拌。
Gt.桜井青
そこからアンビエントなベース・ソロへスイッチすると、挑発的なポスト・パンク調の“トカゲのロミオ”へ。明るいサビとの高低差をものともせずアグレッシヴに突き進んだあとは、ビッグビート風のSEを伴って“動くな!死ね!甦れ!”へとなだれ込み、ダンサブルに会場を揺らしたかと思えば、ファンクラブの更新特典として配布されたばかりの新曲“ファニーゲーム”では、同名映画を彷彿とさせる不穏で陰鬱な空気で場内を満たしていく。
Ba.村井研次郎
そこに続いたのは、やはりライヴでの初披露……というか、まったくの未発表曲であろう“感応板とB真空管と”。こちらはオルガンをアクセントにしながらも、近年の彼らの方向性のひとつ──シンプルなバンド・アンサンブルで聴かせるタイプのナンバーで、終活の第三弾として予定されている(はず)の新作にも期待が高まる。

そうした流れを“素知らぬ夢の後先に”で仄かに甘く引き継ぐと、おもむろにステージ上の照明が消灯。冷ややかなシンセの音色がフェイドインしてくるなか、真っ暗となった場内のあちこちではペンライトやスマホなどの灯りがポツポツと。その数がどんどん増え、美しい光の海が完成したことを合図にスタートしたのは“オーバーナイトハイキング”だ。幻想的な深夜の徘徊を描き出す石井の丁寧な歌唱と歩く速度で刻まれるビート、さらには左右に波打つ淡い光の数々がシンクロし、会場は密やかな一体感に包まれていく。
その退廃的なムードをニューウェイヴ調の翳りあるギター・サウンドで引き継いだのは“香る終焉に3のアーキタイプ”。そこから〈ハイハイ!〉というコール&レスポンスを交えながらセンチメンタリズム全開で疾走する“スクールゾーン”、巨大な〈Oiコール〉から〈ハイカラ!殺伐!ハイソ!絶賛!〉という合唱まで観客の声をあの手この手で引き出すスピード・チューン“ハイカラ殺伐ハイソ絶賛”、スパニッシュ風のギターにリードされて切なく駆ける“一つのメルヘン”と繋げて一息に走り切ると、エキサイティングな熱気を残して本編は終了した。

アンコールは、まず桜井がひとりで登場。「マジで汗臭いです。これが女子更衣室かって感じ。巨大な女子更衣室へようこそ(苦笑)」といきなり満面の笑みとは裏腹の悪態をつきつつ、「追加公演が決まりました」と〈終活第二弾〉ツアーの新たな情報を告知。老眼で見えないとぼやきながら目を細め、腕を目一杯に伸ばしてフライヤーを読むべく奮闘する姿に「見える!見えるよ!」と声援が上がるというシチュエーションは、なかなかにシュールである。追加となったのは恵比寿ガーデンホール、神田スクエアホール、恵比寿リキッドルームにおける3会場で、さらにはメンバーとのオリエンテーションも含まれる(?)一泊二日の沖縄公演も行われるそう。「ボーナスよろしくね!」という桜井からの呼びかけにガリストらしい歓声が上がったところで、残る三人もステージに現れる。
メンバーをひとりずつ紹介するなか、今回のサポート・ドラムの眞屋に対して「若い風がすごいよね。(フロアに向かって)みんな若返るでしょ?(石井を指して)こういう色気もいいけど、後ろからの若いエナジーを浴びちゃうとね……私、生理始まっちゃいそうだもん」と桜井。「生理が始まりそうなcali≠gari、33周年ありがとうございます!今日から2年、さまざまなことをやる予定ですので、全力でボーナスを注ぎ込んでください!」と、そんなキャッチコピーでいいのか疑問に思う隙も与えない勢いでお礼と希望を告げると、「ロフト行くぞ!」というシャウトを合図に狂騒のダンス・タイムがスタート。“コズミック然れど空騒ぎ”“淫美まるでカオスな”とアッパーにもほどがあるEDMロックを立て続け、ラストはバンドの代表曲で締め括り。
「セックスは好きですか?」と繰り返される桜井からの問いかけにフロア全体が「セックス!」の連呼で応えると、グラマラスなギター・リフに導かれて“エロトピア”へ突入。腰にくるグルーヴに身を委ねつつ、日常では口にしにくい放送禁止的な詞世界を会場全体で合唱する様は相変わらず痛快だ。
「cali≠gari、33歳の誕生日おめでとうございました!」(桜井)
「雨ですけど気をつけて帰ってくださいね。また会いましょう」(村井)
ヴォーカル・パートを終えて拍手しながらステージを去った石井に続き、桜井、村井も観客たちへ柔和な挨拶を投げかけながら退場。結成から33周年のライヴはエンディングを迎えた。
この日をもっていよいよ〈終活〉が始まったわけだが、MCはほどほどにパフォーマンスで魅せる、というライヴの有り様は近年のとおり。むしろ、まったく世に出ていない新曲もセットリストに組み込まれるなど、フットワーク軽くさまざまなアイデアを形にしていこうという〈終わり〉に対する前向きな姿勢が垣間見れたような気がして、2年後までの彼らの道程が……言い方はアレだが、楽しみになった。現時点で発表されている〈終活第二弾〉の内容は、ナンバリング・アルバム『12』から『17』までを公演ごとに振り返るコンセプチュアルなライヴ・ツアー〈cali≠gari TOUR「Re(member):?」〉。完全再現となるのか、はたまた大胆なアレンジ・ヴァージョンの披露となるのか、そのどちらでもないのか……フィナーレを迎えるその日まで、三人がみずからの音楽を通じて繰り広げる〈終活エンターテイメント〉を逃すことなく追いかけていきたい。

SET LIST
01. 禁色
02. フィラメント
03. 東京アーバン夜光虫
04. 東京亞詩吐暴威
05. -踏-
06. ケセ
07. トカゲのロミオ
08. 動くな!死ね!甦れ!
09. ファニーゲーム
10. 感応板とB真空管と
11. 素知らぬ夢の後先に
12. オーバーナイトハイキング
13. 香る終焉に3のアーキタイプ
14. スクールゾーン
15. ハイカラ殺伐ハイソ絶賛
16. 一つのメルヘン
ENCORE
17. コズミック然れど空騒ぎ
18. 淫美まるでカオスな
19. エロトピア






