
第3回 Whitney Houston
Whitney Houstonは、物心つく前から知っている歌手だ。
幼稚園の頃、車の中で母が聴いていたWhitneyのI will always love youに合わせて「エンダーーー!」と叫んでいた記憶がある。
それくらい、私の中ではずっと身近にいた人だった。でも、彼女がなぜここまで世界の歌姫として語り継がれているのか、その理由を考えたことはなかったし意識した事もなかったが、彼女の素晴らしさに改めて感銘を受けたのは、大学生の頃だ。彼女のライブ映像を改めて見たことがきっかけだった。
ライブ映像を見た時の衝撃は、今でもうまく言葉にできない。
ただ、不思議なことが起きた。
Whitneyのライブ映像を見たあとに、自分でも歌ってみるといつもより高い音が楽に出るのだ。
私は昔から「耳がいい」と言われることが多かったから、もしかしたら無意識のうちに彼女の発声や息の使い方を身体が真似しているのかもしれない。
理由は今でもわからない。でも、Whitneyを聴くと私は歌が上手くなる、と確かに感じている。
だから今でも、声が出しづらいと感じるときは、何も考えずに彼女のライブ映像を見る。
「こう歌わなきゃ」と考えるためでもない。発声を勉強するためでもない。ただ、Whitneyが歌っている姿を見る。
彼女は、もちろん客席に向かって歌っているのだけれど、それ以上に彼女自身が歌そのものに浸っている。音楽の中に身体ごと全身が入り込んでいるような姿が目に映る。私は、そのときの彼女の表情が大好きだ。歌うことが幸せで仕方がないんだ、と伝わってくる。それを見ていると、私の身体から余計な力が抜けていく感覚。
もっと届けなきゃ、もっと上手く歌わなきゃ、
ちゃんと声を出さなきゃ。いつの間にか抱えていたそんな力みが、すっとなくなる。そして気づけば、毎回食いつくように彼女のライブ映像を見ているのだ。
Whitney Houstonが、なぜ今もなお世界中の人に愛され続けているのか。
彼女のライブ映像を見ると、その理由が少しだけわかる気がする。彼女は、圧倒的に歌が上手い。
ただ、それだけじゃない。
「歌に」愛されている人なんだと思う。
歌うことが、彼女にとって特別な技術ではなく、呼吸をすることと同じくらい自然なものだったのかもしれない。
それを言葉で説明するのは難しい。
でも、ライブ映像を見ればわかる。
Whitneyが歌っている。
ただ、それだけで、歌うことの素晴らしさを思い出させてくれる。
私にとってWhitneyのライブ映像は、歌を上手く歌うための教材ではない。
歌うことが好きだった自分に、もう一度戻してくれるものだ。







