兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第157回[2024年3月前半・ユニコーン、マイヘア×SHANKなどの4本を観ました]編

コラム | 2024.03.25 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、半月の間に観たライブすべてのレポを書いてアップしていく連載の157回目、2024年3月前半編です。ここのところ、本数が多くて通常月二回アップなのを月三回に増やしたりしてきましたが、今回は「半月で4本」という、自分でも「いつ以来だろう」と思うほどの少なさ。土日にライブに行かずに家にいると落ち着かない、そんな身体になっていることを自覚した時期でした。ではどうぞ。

3月3日(日)19:30 からあげ弁当 @ 渋谷Spotify O-nest

「チケットぴあが立ち上げる、若手バンドを応援するライブハウス企画!」(フライヤのコピーより)である『Grasshopper vol.22』、この日はAtomic Skipper、ジ・エンプティ、からあげ弁当の3バンドが出演。トップのからあげ弁当を観た。
30分ちょっとで全10曲。1曲目にやった「チキン野郎」を、8曲目と10曲目にもやった、つまり全部で3回プレイした。持ち時間をオーバーしないよう、短めにセットリストを組んでおいて、時間が余りそうになったら急遽足す、みたいなノリである。
なお、2月14日にデジタル・リリースされたばかりの新曲「そんな日々を生きていく」も、3回目の「チキン野郎」の前、つまり本来はラストだった位置で披露した。
どの曲も、とてもいい。このバンドのソング・ライティング力、近いジャンルのバンドたちの中で抜きん出ている。特にメロディに宿る普遍性。たとえば「しっとりした曲をやります」と言って3曲目に歌った「ミサンガ」、コード進行に対してシンプルなメロディで、誰にでも書けそうに思えるが、実は全然そうじゃない、というやつの理想的な例だと思う。

3月6日(水)19:00 アナログフィッシュ、ハシリコミーズ @ 渋谷LA MAMA

グイグイきている若手=ハシリコミーズと、今年で結成25周年のベテラン=アナログフィッシュ、どちらも好きだが接点があるとは知らなかった、そんな意外な対バン。平日だがLA MA MA、びっしり埋まっている。
先攻のハシリコミーズ、若くてかわくてキラキラしている今の若者感と、ロカビリーやブルースやソウルのテイストに満ちた、トラディショナルな音楽性のマッチングがとてもいい。
今の自分でも「バンド、大変だな」とか思うことがあるのに、アナログフィッシュは25周年。僕は22歳なので、僕の人生よりも長いこと音楽をやって来て、何回つらいことを耐えて来たんだろう、と思って健太郎さんとかを見ると、すごい何か、感慨深いです──最初のMCでアタル(vo&g)は、そんなことを言っていた。
アナログフィッシュは、その佐々木健太郎(vo&b)がボーカルで、ハシリコミーズの「インターバル」のカバーでスタートする。テンポもコード進行もメロディも変えられていて、歌詞以外は違う曲みたいになっている。
で、2曲目の下岡晃(vo&g)の歌う「F.I.T.」から通常のアナログフィッシュに戻って、「Saturday Night Sky」「最近のぼくら」「平行」「Broken Lovers」「Is It Too Lake?」「SHOWがはじまるよ」「Super Loud」「Lady Lady」「泥の舟」、アンコールで「Fine」、の全12曲。あまりにも自分好みのセットリストだったので、つい全曲書きました。
なお、リリースしたての最新曲「Broken Lovers」を終えたところで下岡晃、「アタルくん、『つらいことが…』って言ってたけど、そんなに俺たちつらくないよ。痛々しく見える?」。フロア、爆笑に包まれた。

3月8日(金)19:00 ユニコーン @ 東京国際フォーラム ホールA

ニューアルバム『クロスロード』のツアーの19本目・東京国際フォーラムホールAの2デイズの1日目。
このツアー、1本目の12月2日(土)三郷市文化会館を観て、DI:GA ONLINEでレポを書いた。(≫ ユニコーン2023-2024ツアー「クロスロード」スタート!初日の模様を最速レポ) その時は初日だったので、ネタバレなしで書いて、まだ3月いっぱいツアーが続くので、今回もネタバレできないが、ただし。
初日を観て、僕は「『クロスロード』収録の11曲は、全曲演奏された」「尺は、本編とアンコール合わせて、ほぼ2時間ぴったり」と書いているが、それから3ヵ月を経て、前者はそのまま、後者の尺は、2時間20分くらいになっていた。
曲数とかが変わったわけではなく、ライブの重要なキーを握っているあのメンバーがあれこれやる時間が、ツアーが続くと長くなっていく、という、ユニコーンのツアーで必ず起こる現象です(「100分経ったら強制終了」ルールだった『UC100S』のツアーを除く)。初日にはなかった、ツアー各地でやっていると思われる、いわゆるご当地ネタも加わっていたりして、賑々しく楽しいステージだった、今回も。
あと、このツアーは、『クロスロード』のリリース・ツアーであると同時に、2009年に『シャンブル』で再始動してから現在までのユニコーンのダイジェスト的な側面もあるのかも、と、初日を観た時に思ったが、この日もそう思った。というか、そこもとても良かった。

3月14日(木)18:30 My Hair is Bad、SHANK @ Zepp Haneda

My Hair is Badが、自分たちと同じ3ピース編成のバンドと対バンで、福岡・大阪・東京のZeppを回るツアー『三燦燦』の東京編。ゲストは、福岡は10-FEETで大阪はUNISON SQUARE GARDEN、東京はSHANK。
まずSHANK。最初のMCで庵原将平、「だいたい、10-FEET、UNISON SQUARE GARDENと来て、普通SHANK選ばんやん? どう考えてもサンボマスターやろ! 変わってないなあ」。ただし、SHANKの演奏に対峙するフロアの荒れ狂いっぷりは、完全にホームのそれだった。すごい熱量、ステージの下も上も。
SHANKは昔、マイヘアと同じTHE NINTH APOLLOに所属していて、20歳ぐらいの頃、ファーストアルバムのツアーで上越市に行った時、共演した地元の高校生バンドがマイヘアだった。それを社長が観て、気に入って、THE NINTH APOLLO所属になった。だからマイヘアのファンは全員、俺らに感謝してください──と庵原将平。みんな大拍手。
なお、その時、打ち上げで椎木知仁が奇声を発しながらSHANKのポスターを破り、その瞬間に破ったことを反省して号泣し始めて「やべえ、こいつ」と思った、という素敵なエピソードも披露してくれた。みんな大笑い。そのMCに続いて、1月31日にリリースしたばかりの新曲「Midnight Grow」もやってくれた。
マイヘアは、2月から3月にかけて3曲連続リリースした新曲の中の最新曲「太陽」でライブをスタートする。他の2曲「悲劇のヒロイン」と「自由とヒステリー」は、4・5曲目にプレイ。本編16曲とアンコール2曲、がっちり見せてくれた。
「SHANK、めちゃかっこよかったね。サンボマスターもいいけど、今日SHANKでよかったなと心から思いました、どうもありがとうございます」と椎木。ポスターを破って泣いたことは、憶えていなかったそうです。
で。マイヘア、アンコールで発表あり。次のツアーが決定していて、詳細はまだだが、2公演だけ発表できる。1月4・5日にさいたまスーパーアリーナでワンマンをやる──という発表だった。
ただし。これ、さっきSHANKが、うっかりMCで言っちゃったのだ、「たまアリ2日なんて、すごいよなあ」みたいな感じで。お客にそう言われた椎木、「俺もきいてたよ。あんなに将平さんに謝られたの、初めてでした」。あっはっは。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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