兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第139回[2023年7月後半・世武裕子や スパークスやフジロック×3日間などに行きました]編

コラム | 2023.09.07 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、半月の間に観たすべてのライブの短いレポを書いてアップしていく連載の139回目、2023年7月後半編です。今回は、お笑い1本、フェス3日を含む9本、そのうち5本はすでに他の場所にレポ等を書いたやつでした。未読の方、ぜひリンク先に飛んで読んでいただけると、大変うれしいです。

7月20日(木)19:00 世武裕子 @ めぐろパーシモンホール

 配信で発表したカバーアルバム2作=『あなたの生きている世界1』と『あなたの生きている世界2』を、CDで1枚にまとめた『あなたの生きている世界1&2』の東名阪リリースツアーの、ファイナルの東京公演。
 グランドピアノと歌、その表現力のすさまじい豊かさに圧倒されっぱなしの16曲だった。
 このDI:GA ONLINEにレポを書いたので、ぜひ。
世武裕子、生ピアノと歌の圧倒的な表現力が響き渡った東名阪ツアーファイナル

7月21日(金)19:00 エレキコミック @ 下北沢本多劇場

 エレキコミックの第33回発表会『鮎』、7月21日(金)〜23日(日)で4公演。4公演目は生配信もあり。
 で、毎回、アフタートークも行われることが、開催の9日前に発表になった。22日(土)の2公演は、ゲッターズ飯田とウエストランド、23日(日)は都市ボーイズ、僕の観た初日は銀杏BOYZ峯田和伸。当然、チケットを買った時は知らなかったことなので、峯田の日に当たってよかった! と思いました。
 で、そのアフタートークで峯田が言った、この舞台の感想は、とても的を射ていた。
 曰く、「何を見せられてるんだ? と、何度も思った」。
 まさに。確かに。おかしなことを言っておかしな行動をするおかしな人(やついいちろう)に、普通の人が振り回されて困惑する(今立進)、という設定は、コントの形としてはオーソドックスだ。で、そのおかしな人の言動や人物像は、予めちゃんと作られ、設定されている。が、やついいちろうのアドリブや勢いや閃きが、その設定を超えたり壊したりしてしまう瞬間が多々あって、しまいには「これはコントなのか?」みたいな次元にまで行ってしまう。という時に「何を見せられてるんだ?」と思うわけです。それくらいこっちの脳内がかき乱される、それがたまらない、というか。
 でも、だからって、これ、アドリブ頼りではダメなんだろうな、ちゃんと作ってある上で壊すからおもしろいんだろうな、とも思う。
 あと、今立進のツッコミを、自分がとても好きであることを、改めて認識した。ワードセンスを駆使して自分が笑いを取るタイプのツッコミではなくて、ぶっとんだボケに対する解説の役割をツッコミが果たしていて、だから笑いが増幅するタイプで。
 いいコンビですね。今さら言うことでは全然ないが。

7月23日(日)17:00 fox capture plan @ 新宿ReNY

8年ぶり2作目の洋楽カバーアルバム『COVERMIND Ⅱ』のリリースツアー、全6本のうちの3本目にあたる東京公演。とてもスリリングで楽しい時間だった。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。ぜひ。
fox capture plan、約3年振りに戻ったフロア中の歓声に最高のプレイで応える

7月23日(日)20:00 突然少年 @ 下北沢シェルター

 上の「20:00」というのは、開演時刻ではない。突然少年のツアー『秘宝』の初日で、開場18:00開演19:00、開演まではtheodora katzのDJ、開演時刻からはゲストのcomputer flightだった。が、自分は、同日17:00開演のfox capture planを新宿ReNYで観てから、自転車を飛ばして下北沢シェルターへ移動したもんで、突然少年が始まる20:00のちょっと前に着いたのだった。
 で、その突然少年のライブ。なんと「新しいミニアルバム『未来』、今日この会場で発売です」と、ここで初めて発表し、その収録曲を次々とやる、という、かなりびっくりな内容。
 ゆえに、普段のライブではなじみのない曲をいっぱいやったわけだが、そうとは思えないくらいウケていた。で、ウケるのもわかるくらいよかった、どの曲も。彼らのライブ、都合がつく限り足を運んでいるが、行くたびにお客さんが増えているのもうれしい。今後もしつこく追います。

7月25日(火)19:00 スパークス @ LINE CUBE SHIBUYA

 結成は、クイーンやエアロスミスやクラフトワークと同じ1970年、なので活動歴は50年以上。で、6〜7年空いた時もあったけど、最近は、2017年、2020年、2023年、と、3年に一作のペースで、ニューアルバムをリリースしている。
 そして、そのたびにごっつい本数のワールド・ツアーをやる。今回は、5月から7月までかけて約30本、イギリス→ヨーロッパ各国→アメリカ→最後に日本、大阪1本・東京2本、という。
 なお、東京は、僕が行ったこの25日のLINE CUBE SHIBUYAがソールドアウトしたので、22日に渋谷のduoで追加公演を切って、それをやってから大阪に移動、24日になんばハッチでやって、翌日東京に戻ってこの公演、という。
 つまり、このキャリアなのに、動き方が全然大御所じゃないのだ。普通に現役なのだ。すごくない? ロンとラッセルのメイル兄弟、 78歳と75歳よ?
 ちなみに、来日は1年ぶり。その時は、8月19日(金)幕張メッセのオールナイト・イベント、SONICMANIAへの出演でした。22日(月)には渋谷のWWW Xの、サマソニのアフター・イベントにも出ています。どうよ、このフットワークの軽さ。
 という時点で、十二分に驚きなんだけど、ライブを観るとさらに驚く。こういう超ベテランの外タレって、ニューアルバムが出てもそこからやるのは1〜2曲だけで、あとは往年の有名曲を延々とやる、集まったファンもそれを望んでいる、というのが普通じゃないですか。しかしスパークスは、5月26日リリースのニューアルバム『The Girls Is Crying In Her Latte』の曲もいっぱいやるのだ。14曲も入っているアルバムなのだが、そこから6曲ぐらいはやったんじゃないかと思う。
 で、それが盛り上がるし、自分もうれしいのだ、新しい曲を生で聴けることが。もちろん往年の名曲の数々もうれしいんだけど、この「新しい曲はいらないっす」にならない感じも、得難いバンドだなあ、と、つくづく思う。

7月28日(金)10:30 FUJIROCK FESTIVAL ‘23の1日目 @ 苗場スキー場

 去年久々に行くのをやめた結果、本当に後悔したので、今年は早めに行くことを決めた。で、レンタカー等の交通費を抑えるため、おっさん4人連れで(50代ふたりと40代ふたり)、金曜の早朝に東京を出発、日曜も泊まって月曜の午後に東京に戻って来るスケジュールで、参加した。
 その3日間の雑感や、観たアクトの感想などを、自分のnoteに書きました。こちらです。
2023年のフジロック・フェスティバル雑感
 で、そこにだいたい書いてしまったので、2日目と3日目も、余談を書きます。

7月29日(土)10:30 FUJIROCK FESTIVAL ‘23の2日目 @ 苗場スキー場

 上に貼ったnoteにも書いたが、今年のフジロックは「本来の規模で、コロナ感染予防のための規制がない状態での開催」だったこと以上に、「一度も雨が降らなかった」ことが、非常に、それはもう本当に、めずらしかった。
 とにかく雨が降るのです、苗場。まあ、だからこそ、ここにスキー場を作ったんだろうけど。3日間で一度も雨具を出さなかったの、家に帰って泥だらけの長靴を洗って干すという作業をしなかったの、いつ以来だろう。本気で思い出せない。

7月30日(日)10:30 FUJIROCK FESTIVAL ‘23の3日目 @ 苗場スキー場

 フジロック、行き慣れている方は同意してくれると思うが、ある意味、もっとも楽しいのは、グリーンとホワイトのトリが終わったあとのレッドマーキー周辺=オアシスエリアなのです。
 僕は、誰かと一緒にフジに行っていても、ひとりで行動することが多い。で、各ステージのトリが終わると、オアシスに集まって、今日観たライブの話をしたり、レッドマーキーやGANBANブースで遊んだりして、体力の限界を迎えるまで過ごすのが、とてもいい時間なのである。
 しかし今年は、初日は27時くらいまで、2日目は26時ぐらいまでがんばったが、3日目はグリーンのLIZZOが終わったところでギブアップしてしまった。
 いつもなら、夜遊びするために、会場に行く時間を遅めにしてエネルギー温存を計ったりするんだけど、今年は3日とも早い時間から行ったので。とも言えるが、単にトシ食って体力が落ちている、とも言える。うーん。

7月31日(月)19:00 ビッケブランカ @ Zepp DiverCity TOKYO

 苗場から帰って来て、レンタカーを返してから、大急ぎで行ったビッケブランカのツアーファイナル。ギター・ベース・ドラム・キーボードに、バイオリン×2が加わったバンド編成で、ビッケブランカ本人は、いつものように鍵盤もしくはギターを弾きながら歌う曲もあれば、パット(エレクトリック・パーカッション)を叩く曲もあり。
 いろんなタイプの、いろんな音楽性の、いろんなジャンルの曲がある、そのやたらと振れ幅の広い楽曲のどれもが、突出している。という、ビッケブランカならではの魅力を、存分に食らわせてくれる時間だった。
 ただ、本編14曲でアンコール3曲、計17曲、というのは、ちょっと短い。もっとこの素敵な振れ幅を味わいたい、20曲ぐらいやってくれればいいのに。と、正直、思ったりもする。が、全身全霊でパフォーマンスし続け、オーディエンスを魅了し続ける彼の姿を目の当たりにしていると、これ以上は無理かも、体力面でも精神面でもこれがリミットかも、とも思う。
 なお、アンコールで、8月30日に新曲「Snake」をリリースすることと、二度目になる自身のイベント『Vicke Blanca presents RAINBOW ROAD-翔-』を、12月28日(木)にTOKYO DOME CITY HALLで開催することが、発表になった。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る