兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第136回[2023年6月前半編・syrup16g、フラワーカンパニーズ×2、ヒグチアイ、宮本浩次などの8本を観ました]編

コラム | 2023.08.08 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生で(もしくは配信で)観たすべてのライブレポを、月二回ペースで書いていく連載です。2023年6月の前半は、以下の8本でした。なお、TOKYO ISLANDの2日目とヒグチアイは日にちがかぶっていますが、2日目の途中までTOKYO ISLANDにいて、そこから渋谷に移動してヒグチアイを観た、ということです。

6月1日(木)19:00 syrup16g @ 豊洲PIT

 アルバム『HELL-SEE』をリリースしてから20周年を記念して行ったツアーの初日。初日だったのでネタバレなしですが、レーベルのオフィシャルレポを書いて、それがSPICEにアップされました。こちらです。
syrup16g、ツアー『syrup16g Tour 20th Anniversary “Live Hell-See”』が開幕 初日公演のオフィシャルレポート到着

6月2日(金)19:00 アナログフィッシュ、トリプルファイヤー @ 渋谷LA MAMA

 LA MAMAのブッキングイベントで、トリプルファイヤーとアナログフィッシュが対バン。待てよ、この組み合わせ、7年くらい前にも観たことあるぞ、新代田FEVERで。調べたら、2016年6月25日でした。
 ミニマルかつ淡々と「只者じゃなさ」を表現していくトリプルファイヤー。対するアナログフィッシュは、対バンを意識したところもあったのか、下岡晃の端正な狂気みたいなものが、強めに出た感じだった。どちらもたいそういいパフォーマンスだった。
 なお、この日の天気、すごい暴風雨になるという予報が出ていて、渋谷で働いている知人の会社は、夕方前に全員帰宅命令が出たそうだ。LA MAMA、同じ渋谷だが、でもそこまでひどいことにならずに会場に着けたし、家にも帰れました。

6月3日(土)17:30 フラワーカンパニーズ @ 千葉LOOK

 『フラカンのサマーツアー2023』の初日が、この千葉LOOKで、2本目が翌日の甲府CONVICTION。7月2日のリキッドルームには行けないことが確定していたし、己の今後の予定を鑑みると、9月2日の日比谷野音(ピーズとの2マン)までフラカン観れないかも。じゃあ観れるうちに行っとこう、ちょっと近場だし、ということで、この2日続けて足を運んだ。メンバーは、千葉が終わったらそのままハイエースで甲府へ出発したが、私はいったん帰って、翌日甲府へ向かいました。どうでもいいですねそんなことは。
 で、ツアー初日とは言いながらも、ひとつ前のツアーが終わったあとも、イベント出演やなんやかんやでライブが途切れていなかったのが大きいようで、「しばらく空いてましたが、今日からまた始めます」感のない、仕上がっているステージだった。暖気運転がずっと続いている状態というか。
 あと、何がうれしかったって、ギュウギュウで暑い、もしくは熱い、オールスタンディングのライブハウスで、オーディエンスみんな歌いまくり叫びまくりながらライブが進んでいく、というさまを、久々にフラカンで体験できたこと。チケットが一回完売して、そのあと規制緩和で追加発売したが、それもすぐ売り切れたという。いい空気だなあ、これがライブハウスだよなあ、と、しみじみといい気分になった。

6月4日(日)16:00 フラワーカンパニーズ @ 甲府CONVICTION

 で、その翌日=ツアー2本目。初めて来たが、かなり広くて天井も高くて通気性が良さそうなハコ。だし、2日目だし、バンドもちょっと余裕を持てるのでは、と思った。で、実際、ライブを観ているとそのような感じで、自分たちも楽しみながらライブをやれているように見受けられた。甲府に来たのは久々だそうで、そういう意味での喜びもある、みたいなこともMCで言っていた。
 が、終わって楽屋をたずねたら、ベース&リーダーのグレートマエカワ、瀕死レベルのバテバテ状態だった。前半、楽しくてはりきって飛ばしすぎたそうで、途中で「ヤバい、このペースで続けたら最後までもたん」と気がついてセーブしたが、手遅れだった、とのこと。そうか。観ている分には感じなかったけど。対バンとかで持ち時間が短い時はいいけど、ワンマンはペース配分をもっとシビアに考えないとダメ、と、反省しておられました。

6月10日(土)12:00 TOKYO ISLAND 2023 1日目 @ 海の森公園 森づくりエリア

 今年で二回目の開催の、東京湾のお台場エリアの無人島で行われる、前代未聞のキャンプフェス。一回目の去年、行ってこのDI:GA ONLINEにレポを書きましたが、今年も行きました。
 今年は土日の2日間開催で、土曜はステージもオールナイト。開催前にDI:GA ONLINEで行った、プロデューサーの鹿野淳のインタビューはこちら。
TOKYO ISLAND、非日常を味わえる東京のアウトドアフェスを作っていきたい── プロデューサー鹿野 淳が目指すビジョンとは?兵庫慎司が訊く

6月11日(日)12:00 TOKYO ISLAND 2023 2日目 @ 海の森公園 森づくりエリア

 というわけで、その2日目。ひとりでテントを張って1泊して書いた、今年のレポはこちらです。
TOKYO ISLAND、今年はどう変わった?初開催から2年連続参加の兵庫慎司による体験記

6月11日(日)18:00 ヒグチアイ @ 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

 ベース御供信弘、ドラム伊藤大地、ギターひぐちけい、そしてボーカル&ピアノのヒグチアイというバンド編成で行った東名阪ツアー『HIGUCHIAI band one-man live 2023 [産声]』のファイナルの東京公演。
 「縁」や「悪魔の子」などのヒット曲、「聞いてる」や「前線」といった、聴き手をぐっさりえぐる「これぞヒグチアイ」な曲、「黒い影」のようなバンド編成のライブならぜひやってほしい曲など、聴けてうれしい曲ばかりの本編14曲+アンコール1曲。
 4月に出たばかりの新曲「祈り」や、コロナ禍でみんなで歌えなくなった時に「口を開けずに歌う」歌として作った「mmm」(「ハミング」と読みます)を聴けたのも、うれしかった。
本人も、16年ぐらいずっと、こういうライブをやりたかった、とMCで言っていたので、かなり達成感あったんじゃないかと思う。
 で、アンコールでやった「この退屈な日々を」という未発表の新曲、ヒグチアイの曲の中ではめずらしい、ちょっとハッピーな内容の歌詞では?と感じられるもので、新鮮だった。で、近々リリースされるのかな、と思っていたら、後日、「2023 SUMMER 3 LOVE SONG」として、この夏に新曲が3曲リリースされることが発表になった。
 「恋の色」「自販機の恋」そして「この退屈な日々を」の3曲で、これを書いている段階では、7月26日に配信リリースされた「恋の色」はもう聴けるが、あとの2曲はまだ「coming soon」。楽しみにしています。

6月12日(月)19:00 宮本浩次 @ ぴあアリーナMM

 毎年恒例のバースデイ・ライブ、今年はあのでっかいぴあアリーナMMで、たったひとりでライブをやる、という試み。タイトルは「my room」、つまり自分の部屋を見せる、ということ。
 28曲もやった、ひとりっきりで。エレキギターもしくはアコースティックギター1本で弾き語りをしたり、バックトラックを使って歌ったり、ソファーに寝転んだり、走り回ったり。
 で、もっともインパクトがあったのが、宮本がヘッドマイクを付けてパフォーマンスしたことだった。「マイクを手で持つ」ということに縛られないと、こんなに自由に、こんなに好き放題になるのか、この人は! という。ソロの最新アルバムとそのツアー、『縦横無尽』というタイトルだったが、ある意味、それ以上に「縦横無尽」だった、この日の宮本は。
 こんなデカバコで、たったひとりでこんなことをこんな長時間やれる人、他に誰もいないと思う。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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