フジジュンのライブ終わったら、ど~する?#8「諦めずライブをやり続けた、生粋のライブバンドに明るい未来を見た」POETASTER「anthology of LOVE」2022年3月23日(水)@LIQUIDROOM

コラム | 2022.04.11 18:00

Photo:にしゆきみ

僕がPOETASTERの高橋大樹(Vo&Gt)に初めてインタビューしたのは、昨年3月だった。The Cheserasera、KAKASHIと共に全国9箇所を回るスプリットツアー『ONESHIP TOUR』開催に向けて、それぞれのボーカリストが集った鼎談で、3人は「コロナ禍でライブもなかなか出来ない状況下において、『だからこそみんなを楽しませたい』とツアーを企画したのは高橋。その熱い想いに2組も迷わず快諾した」と話を聞かせてくれた。コロナ禍だからと諦めることなど全くない、その姿勢に僕は大いに共感したし、勇敢に逆境に立ち向かう姿が、すごくロックでカッコいいと思った。

昨年7月にはEP『The Gift of Sound e.p.』をリリースしたPOETASTER。変わらぬコロナ禍の苦境と戦いながら、全国14箇所を廻るツアーを開催し、ファイナルとなる東京公演は満員御礼で幕を閉じる。同年11月には、それまでサポートとして支えてきたギターのYoshi Nakayama(Gt&Cho)が正式加入し、今年1月に新たなスタートとなるシングル「Sparkle&YOU」をリリース。「Sparkle&YOU」収録の新曲「ムーンライトメロディ」は、僕はコロナ禍でも決して諦めず前を向き続け、音楽を届け続けてきたPOETASTERの強さとたくましさを感じさせる楽曲だった。

そんなPOETASTERの最新作「Sparkle&YOU」を掲げたリリースツアー『anthology of ...』の東京公演が、3月23日(水) 恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。“anthology of LOVE”とサブタイトルが付けられたこの日は、ゲストにSaucy Dogを招いてのツーマンライブ。

フロアを埋める観客の期待が溢れる中、先攻となるSaucy Dogがステージに登場。石原慎也(Vo&Gt)の優しいギターの弾き語りから、「マザーロード」で静かに始まった彼らのライブ。曲が始まった瞬間に会場の空気が一変し、観客がステージに釘付けになっているのが分かる。「煙」、「メトロノウム」、「いつか」と初期楽曲が続いた前半戦。軽快にパワフルにエモーショナルにと様々な表情を見せる石原の歌とギター、せとゆいか(Dr&Cho)と秋澤和貴(Ba)の丁寧に心象風景をなぞる演奏が、豊かに色鮮やかに楽曲世界を描いていく。

MCでは、結成して間もない頃にPOETASTERとツアーを回った思い出、褒めてくれる先輩が多い中、高橋は悪いところも意見してくれたことへの感謝を語り、その頃演っていた曲でセトリを組んだことを明かした彼ら。「当時、『お前らのライブ、全然良くないわ~!』と言われてたので、今日はめちゃめちゃカッコいいライブをして帰ろうと思います!」とせとが告げ、「ノンフィクション」、「シンデレラボーイ」と続いた中盤戦は、「もっと優しくて、平等なロックを目指していきたい」と届けた「ゴーストバスター」、「みんなでハッピーにいきたいと思ってます」と披露した「雀ノ欠伸」とライブ定番曲が続き、手拍子を合わせる会場に一体感が生まれる。

POETASTER同様、初のホールツアーや対バンツアーが延期中止になるなど、コロナ禍の苦境と戦いながら、作品制作の手も休めずに新曲を次々リリースし、初の日本武道館公演も成功させたSaucy Dog。MCでは石原が自身の思うロックバンドの在り方を語ると、上京したばかりの頃、バンドを結成したばかりの頃を描いた「東京」をたっぷり気持ちを込めて届け、ラストは渾身の力を込めた「グッバイ」に会場中からピースマークが挙がる中、「本当にどうもありがとう! 楽しかったです!!」と笑顔でフィニッシュ。POETASTERへの愛とリスペクト、そして逆境も乗り越え、ここからさらに躍進していくであろうバンドのたくましさが見えるステージだった。

後攻はこの日の主役であるPOETASTER。メンバー自らによるサウンドチェックから、ギターのフィードバックを合図にゆっくりと照明が落ち、高橋のシャウトで曲が始めると、フロアの手拍子がじわじわ大きくなっていく。ライブバンド然としたカッコいいオープニングから、最高潮のテンションで披露した1曲目「その夜を越えて」でフロアを沸かすと、Yoshiが間髪入れずにエッジィなギターイントロを鳴らし、「あの空の向こう」が始まる。ド頭から観客の心をガッチリ掴むと、勢い溢れるステージングと前向きなメッセージにポジティブなエネルギーが充満していく会場。「楽しいな、オイ!」と叫ぶ高橋の笑顔が、会場の雰囲気をさらに明るくする。

Fuma-Z(Dr)の軽快なビートに乗せたラップ調のボーカルが新鮮だった新曲「BEAT UP」から、「抱きしめたって」、「お先、失礼いたします」とパワフルかつ、自由でアグレッシブなステージが続くと、どんどん熱を帯びていくフロア。POETASTERのライブを初めて観たであろう、Saucy Dogファンもどんどん巻き込んでいく彼らの圧倒的な求心力は、コロナ禍でもライブにこだわり、ライブをやり続けた生粋のライブバンドだからこそ。

熱狂する観客の大きな拍手を受けて始まったMCでは、Saucy DogのMCを受けた高橋が、「大丈夫ですか? オレがただ厳しい、イヤな先輩みたいに映ってないですか?」と笑わせると、「初めて観てくれる人もたくさんいると思うけど、オレはそんなあなたにも歌ってるから。ロックは優しい、POETASTERは優しいよ。カッコいいロックスターで帰ります!」と告げ、「君に話があるんだ」を披露。会場にいる一人ひとりに向けて、激しくも丁寧に楽曲を届ける姿に、「もっと優しくて、平等なロックを目指していきたい」と願うSaucy DogがPOETASTERを慕い、リスペクトを送る理由もよく分かった。

ロマンチックでスケール感ある「Starry Night」、ちょっぴりセンチな「風は君のように」で空気を変える、感傷的なロックバラード「バラード」としっかり聴かせる曲が続いたライブ中盤。「結成した時からずっとやってる曲。みんなの前で歌えることが嬉しいです」と、楽曲に込めた深い想いと言葉を真っ直ぐ伝えた「彼方」は、力強く純粋な歌声がダイレクトに胸に刺さった。

ライブ終盤、「あなたの心が平和であるように、世界平和と同じくらい願ってます。悲しい時、寂しい時、勇気が必要な時、オレたちの曲が手を引っ張ってあげられるようにって、そんなことを考えて作ってるよ。どうか、オレたちの曲をそばに置いてくれ」と楽曲に込めた想いを熱く語り、始まった曲は新曲「ムーンライトメロディ」。会場にいる全ての人に向けた全身全霊の歌と演奏が強い光を放ち、煌びやかな未来を想像させたこの曲。<ずっと君と歌っていたい>という熱い想いに応えるように拳を上げるフロアからは、観客の大合唱が聴こえてくる気がした。その勢いと熱狂のまま、本編ラストとなる「声あげて」でライブを駆け抜けた彼ら。アンコールは終わりを惜しむように、一音一音をしっかり届けるように「青春歌」を披露して、優しく温かい雰囲気の中でライブの幕を閉じた。

帰り道、熱かったライブの冷めない熱と余韻に浸りながら、小雨の降る明治通りを渋谷までテクテクと歩いて帰った。歩道に咲く早咲きの桜を見ながら、「そうか、あれからもう3度目の桜なのか。今年もお花見は出来ないんだな」と思ったら、少しだけ寂しい気分になったけれど。POETASTERのステージから受け取った前向きなメッセージとポジティブなエネルギー、そして「ムーンライトメロディ」が想像させてくれた煌びやかな未来を思い出したら、「いや、春はもう目の前まで来てるんだ」と前向きな気分になれた。

「Sparkle&YOU」のリリースインタビュー時、「コロナが明けた時、先頭に立っていけるのは変わらずライブをやり続けたバンドだろうなと思って。ルール上の中で出来ることで、やれることをやっていこうと思っていた」と語っていた高橋。この日のライブからはその成果がはっきりと見えたし、コロナ明けには実際にライブシーンの先頭に立っていることだろうと大いに期待させた。きっと目の前まで来てるであろう、みんなが何の心配も後ろめたさもなく大合唱出来る日。その日が来たら、今日よりもっと熱く楽しいPOETASTERのライブが見れるはずと考えたら、お花見なんかより、そっちの方が楽しみになった。

「Sparkle&YOU」のリリースツアー『anthology of ...』は、4月23日(土)八王子RIPSにて、ワンマンライブを残すのみ。変わらずライブをやり続けてきた、生粋のライブバンドの最新型をぜひ体感して欲しい。……と、最後に告知も入れておく(笑)。

公演情報

DISK GARAGE公演

POETASTER presents「anthology of ...」
"Sparkle&YOU" release event

“anthology of POETASTER”
2022年4月23日(土) 八王子RIPS・東京

※ONE MAN LIVE

チケット一般発売日:2022年2月26日(土)

Saucy Dog ワンマンライブ2022

2022年6月9日(木)10日(金) 日本武道館
開場 17:30 / 開演 18:30

2022年6月14日(火) 名古屋ガイシホール
開場 17:30 / 開演 18:30

2022年6月16日(木) 大阪城ホール
開場 17:30 / 開演 18:30

PROFILE

フジジュン

1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野で、笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

  • フジジュン

    TEXT・撮影

    フジジュン

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  • ライブ撮影(POETASTER)

    そらおあきら

  • ライブ撮影(Saucy Dog)

    白石達也

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