インタビュー/永堀アツオ
撮影/横井明彦
5人組ポップスバンドのwacciと男性デュオの吉田山田による“ワンマンライブ”の開催が決定した。この2組の出会いは2009年8月まで遡る。wacciのヴォーカル&ギターの橋口洋平がバンド結成前に、ソロでオープニングアクトを務めた代々木のライブハウスでのイベントで初共演。その3ヶ月後に吉田山田はメジャーデビューを果たし、同年末に結成されたwacciは3年後の2012年5月にメジャーデビュー。2013年8月には岐阜県のclub-Gでツーマンライブを開催し、2014年11月にもMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでツーマンライブが実現。数多くのイベントを含め、これまでに幾度となく共演してきた2組が今回、対バンでも2マンライブでもなく、“ワンマンライブ”と銘打った新たな試みにチャレンジする。お互いを「同志」と言い合う彼らに、タイトルに込めた思いを聞いた。
──デビュー前から知り合いなんですよね?
橋口洋平(Vo&Gt) いや、僕がデビュー前に一方的に知ってただけです。僕はまだバンドを組む前だったんですけど、8年くらい前に代々木bogaloo(現:代々木Barbara)で対バンしたことがあって。
吉田結威(Gt/Vo) そんときは全然知らなかったです、僕らは。
山田義孝(Vo) 喋ってないね、多分。
橋口 いや、喋ったよ!
吉田 何喋った?
橋口 そこまで覚えてないけど。「良かったです」っていうやつじゃないかな。
吉田 ファンやん、ただの(笑)。
橋口 その時はそうなっちゃったの! そのあと、wacciがデビューして、4年前くらいに岐阜のclub-Gでツーマンをさせてもらって。
吉田 いろんなイベントで一緒になったりもしてたんですけど、岐阜の時もまだそこまでは仲良くなくて。まだビジネスでしたね(笑)。でも、僕はミュージシャンに友達がいないんですよ。そんな中でも、橋口くんとは唯一、この人と仲良くなれそうだなって、ずーっと思っていて。でも、連絡先を聞いたりができなくて。今、思えば、もっと早く聞いておけば良かったなと思うんですけど、橋口くんって、大体の人のことを見下してて……。
山田 ここ、太字でお願いします(笑)。
橋口 いや、困ります。(満面の笑みで)みんな大好きです!
吉田 ……その見下しているみんなの中に、僕も入っているんじゃないかっていう不安から、最初は怖がってたんですけど、ある時、ステージ上で絡むことがあって、wacciのファンの人が気分を害してしまうんじゃないかってくらいのいじり方をしたんですよ。好きさが相まってっていうことで丸く収めてくれたんですけど、橋口くんもいい感じで返してくれて。そこから、いい人なんだなって思って。特に僕は、ここ2年くらい、プライベートでもすごく仲良くさせてもらってますね。
──その距離が縮まったいじりというのは’14年11月のwacci 2nd anniversary「君とシェア 特別編〜吉田山田と2マンライブ!〜」のステージですよね。
山田 そうですね。よく事務所の人が怒らなかったなっていうくらいひどかったです。
吉田 橋口くんにとって、ステージで眼鏡をかけているっていうのがすごく大事なことだったみたいで。楽屋で橋口くんが眼鏡を外して、髪の毛をセットしてたんですよ。その姿がカッコ良かったので、眼鏡をとったほうがイケメンじゃんっていうことになって。本当に軽い気持ちで、ステージ上でノリで眼鏡を外した瞬間に照明が完全に落ちて。
橋口 僕、メガネを外すと、「メガネが似合うんだね」って言われるんです。だから、常に眼鏡をかけていて、ステージ上で眼鏡を外したことなかったんですけど、その時は外さなきゃいけない空気になって。外したときに、全部、電気が落ちたのは驚きました(笑)。
山田 マーチンさんのサングラスと同じくらい大事なやつですからね。
橋口 引き合いに出す方が大先輩すぎるよ! そういういじりもありつつ、バンドとしてもすごく仲良くしてます。
山田 wacciは本当にいい人たちなんですよね。ベースの小野くんなんて、池袋でインストアライブをしたときに、普通にお客さんとして並んでCDを買ってくれたりして。楽屋で話していても、みんな柔らかいから、調子に乗ってグイグイいっちゃうんですけど、それも全部受け止めてくれる。……と、思ってたんですけど、最近、これはまんまと橋口くんの策略にハマっていってるんじゃないのかなって、思い始めて。1回だけ2人きりで飲みに行ったことがあるんですよ。話しやすいし、いろんな話をしたんですけど、帰り道に「あれ? 自分の話しかしてない。引き出されて、引き出されて、橋口くんのことは全然聞いてなかった」って気づいて。俺の攻撃が全部、自分に返される、合気道みたいな力を持ってる人なんだなって。
吉田 トークの合気道ね。
橋口 それは、恥ずかしいな(笑)。僕にとっては、bogalooで一番最初に見たときから、いつか一緒にやれたらなと思ってた人たちで。あのときに見た吉田山田の2人の音楽性や空気感、お客さんに対してのアプローチとか、大事にしている部分は、wacciというバンドを組んでからもずっと目指してやってきたし、背中を追いかけてきた1組なのかなって思いますね。
吉田 そんなことを思っているとはつゆ知らず。きっかけはそうだったかもしれないし、デビューは吉田山田の方が早かったかもしれないけど、今やそんなことは関係なくて、僕は本当に同志だと思ってます。僕、見栄もはらず、自分の悩みとか、自分たちのグループが抱えている課題とか、ぶち当たってる壁とかも全部話せる相手は、橋口くんが本当に唯一の存在なんですよ。何でそこまで話せるかというと、大前提として、絶対にやってやるっていう、お互いの中に闘志があるのがわかっているから。だから、「もうやだよ」って言えるし、「しんどい」とも言える。それが言える人って限られてるんですよ。「じゃあ、やめればいいじゃん」って言われたら、それで話は終わりだから。そうじゃなくて、同じところで戦ってるなっていうのを思うから、全部言えるんですよね、
橋口 僕は、バンドで発してるメッセージや言葉、お客さんが受け取ってくれるバンドのイメージに、本来の自分がちゃんとついていけてるのか、しっかり責任を持てているのか不安になることもあるんですけど。
吉田 わかるよ。時々、ラジオを聞いてて、涙が出そうになるから。
橋口 あはははは。健気だからでしょ。ま、wacciのヴォーカルとして、ちゃんとしなくちゃいけないっていうことを常に考えながらやってきた部分があるので、人付き合いにおいても本来の自分をあんまり出せないこともあるんですけど、吉田くんは本当はこういう人間なんだろうっていうところを拾い上げてくれて。それがすごい楽だから、僕も、ライブや曲作りのことから、プライベートの話まで、ざっくばらんにできて。自分にとっても結構、唯一の存在だなって思いますけどね。メンバーの中にはいないので。
吉田 橋口くんは、僕らがデビューして8年の中で、自分たち以外が大ヒットして、唯一、心から喜べると思えた人なんですよ。あとはみんな、めでたいけど、どっかで悔しいとか、「うちらのこの曲の方がいいのにな」って思っちゃうんだけど、wacciに関しては、話題になっても、「わー!よかった!」って、100パーセントで言える、唯一のミュージシャンですね。