インタビュー/宮本英夫
一度聴いたら忘れない、透明な哀しみと儚い愛しみをたたえた美声。YouTubeでのカバー曲動画配信から人気に火が付き、2016年6月のメジャーデビュー以後はドラマや映画の楽曲を次々と手がけ、ファン層を大きく広げてきたUruがファースト・アルバム『モノクローム』をリリースした。ドラマ『コウノドリ』主題歌「奇蹟」やTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期エンディングテーマ「フリージア」、『フランケンシュタインの恋』挿入歌「しあわせの詩」など、耳に馴染んだ曲たちに新曲を加えた、デビュー盤にしてベスト盤と言える珠玉の1枚だ。3月4日には昭和女子大学人見記念講堂にて、久しぶりの東京でのライブも決まった。ビジュアルは謎めいているが、実際に目の前に座る姿もしゃべりもとても親しみやすく愛らしい、Uruの本音を聞いてきた。
──ファースト・アルバムは特別なものですよね。あらためて『モノクローム』はどんな作品ですか。
ドラマや映画の主題歌をたくさんやらせていただいて、デビューから1年半の間で作った楽曲たちや想いがぎゅっとつまった、本当に“アルバム”という名に相応しいアルバムだなと思ってます。
──シングルのカップリングもけっこう入っているので。ベスト盤ですよね、言わば。
みなさんに、そう言っていただけますね。ベスト盤みたいだって。
──リスナーの反応をチェックしたりとかします?
ツイッターやブログのコメントは、全部読ませてもらっています。喜んでくださってる様子を見ると、よかったなと思いますね。新曲として、ライブで披露していた「アリアケノツキ」をアルバムに収録したんですけど、“もう一回聴きたかった”と言ってくださる方が多くて。
──アルバムの1曲目に入っている「追憶のふたり」も新曲ですね。これは1月13日公開の映画『悪と仮面のルール』のための書き下ろしですか。
はい。作品を見させていただいて方向性を決めていきました。主人公が玉木宏さん演じる久喜文宏という男性なんですけど、愛する女の人がいて、その女性の目線で書いています。原作も読ませていただいて、そこに女性の心情もたくさん書かれているので、それも参考にさせていただいたりとか。
──Uruさんが主題歌を歌う作品って、心理的に深いものが多いというか。『コウノドリ』もそうだし、考えさせるものが多い気がします。
自分で書く詞も、生きることとか、人間が生きてく上でのストーリーを書いていることが多いんです。『コウノドリ』も、生まれてくる子供のことだったりとか、『ガンダム』(「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」EDテーマ「フリージア」)も、生と死がいつも隣り合わせの世界でのお話なので、やっぱり生きるということが出てくるし。「追憶のふたり」も、『悪と仮面のルール』という映画は人を殺めてしまうストーリーなんですけど、愛する人を守るためにどうしてもやらなくてはいけないとか、そういう物語なので。このアルバムは特に、そういうテーマが多いのかもしれないですね。
──歌詞のテーマは、日常の中で普段から探してたりしますか。
探してることはないんですけど、曲を作ろうとしてピアノを弾いた時に、曲の雰囲気で“こういう歌詞を乗せたいな”と思うところから始まることが多いですね。歌詞を先に曲を作ることのほうが少ないです。
──たとえば新曲の「いい男」とかは?
これは、曲を聴くと暗くて雨が降ってそうな曲なんですけど、今日みたいにすごく天気のいい日に思いついて、こんなに晴れた天気だったら、昨日振られてしまった人も救われるだろうなと思ったところから始まっています。だから最初に“今日がいい天気で本当良かったな”から歌詞が始まるんですけど、もし雨が降っていたら今よりもっと落ち込んでただろうな、ということですね。
──Uruさんの歌には、雨とか晴れとか天気の描写が多かったりして、すごく日常を感じるんですよね。
そうかもしれないです。逆に、ありもしない世界のことを想像した歌詞も書いてみたいですね。それはまだ一回もやったことがないので。
──武部聡志さん、蔦谷好位置さん、トオミヨウさん、冨田恵一さん…アレンジャーの方も錚々たる顔ぶれです。
皆さん本当にすごい方々なので、武部さんやトオミヨウさんとは、最初は顔を見てしゃべることができず…すごい無愛想な人になってたと思います(笑)。蔦谷さんは、一緒に音を聴いてる時に、私がノートに何か書いているのを見てくださっていて。“何か気になるところはある?”って聞かれて、うまく答えられずに“いえ、大丈夫です…”って言ったら、蔦谷さんがノートをのぞき込んで、“ああ、これはそうだよね”って、わざわざ変えてくださったりとかして、気を遣っていただきました(笑)。それぐらい、緊張してました。
──でも作り終わる頃には自信がついたとかは?
自信がついたというよりは、自分の作品を作るということは、アーティストはただ歌を歌っていればいいわけではなくて、自分の作りたい作品を作っていくには、思ったことをちゃんと言わなければいけないんだなということがわかってきました。
──たとえば、自分の意見を反映させた曲というと?
「鈍色の日」は、最初に音を作ってくださった時に、ボーカルにもっとリバーブがかかってたんですよ。でもなんとなく狭い薄暗い部屋で、『私何をしてるんだろうな?』っていう心情を歌った曲なので、マットな(光沢のない)感じをもっと出したくてほかの曲よりリバーブが少ない感じにしました。
──言われてみれば確かに。
あと「Sunny day hometown」は、最初にアレンジしてくださった音源を聴いて、ルンルンな感じで散歩してるような陽気な曲だなと思ったので、デモのときにはなかったんですが、最後に♪ふっふーんってハナウタが入ってるんですけど、自分で入れたいなと思って入れました。
──ライブで歌うことをイメージして作った曲はあります?
「fly」という曲がライブをちょっと意識していて、最後は♪ラララ~にしてますね。一緒に歌ってくれたら楽しんでもらえるかな?と思ったので。バラードの曲が多いので、ライブで歌っていても、バラードばかりだとちょっと退屈かなとか思った時に、この「fly」はいいかなと思って作りました。