2016年5月14日(土) 豊洲PIT
Report:兵庫慎司
Photo:鈴木恵
デビュー20周年記念ベストアルバム『非脱力派宣言』のリリース・ツアー『20th Anniversary PUFFY TOURSITS社で行く PUFFYTOURS EPISODE 0』のファイナル。
ツアータイトルやこのツアーのビジュアルに即して、飛行機での旅がコンセプトになっている。開演前のふたりによる影アナが離陸前の機内放送の体で、「途中退出は乗務員のメンタルを傷つけますので、ご遠慮くださいますようお願い申し上げます」などと、ギャグが多数ぶちこまれており、場内から何度も笑いが起こる。
そして、フジタユウスケ(g)、木下裕晴(b)、川西幸一(ds)、一時バンドから離れていたが戻ってきた渡辺シュンスケ(key)、PUFFYのふたりと共に、ゲストの奥田民生もオンステージ。「アジアの純真」から「愛のしるし」までの頭5曲をそのメンツでプレイ。
5曲を終え、奥田が「もう帰るよ」と去り、「私たち、昨日20歳を迎えました」「ここにいる誰も、PUFFYが20年も続くと思ってなかったと思う。私たちも思ってなかった」「でも続けるといいことあるね」というMCから、再び曲へ。
このライブ、『非脱力派宣言』の1曲目からラストまでの34曲を、ショート・バージョンにしたりしつつ順番どおりにやる、つまり本当にPUFFYの20年を聴かせていき、見せていく選曲になっている。なので、1コーラスとか2コーラスで曲が終わって、はい次の曲、みたいなめまぐるしいくらいのスピードで、PUFFYの歴史を作ってきた名曲たちが次から次へと演奏され、歌われていく。
というだけでもすごい情報量なのに、9曲目「夢のために」で渡辺シュンスケがピアノソロを聴かせたり、10曲目「海へと」をアコースティックでプレイしたりと、さらに聴きどころ・観どころ、いっぱいある。
17曲目、つまりベストアルバムでいうと1枚目のラストである「モグラライク」が終わったところで、吉村由美、「なんでここでMCではさんでるかというと、ここでディスクチェンジするわけですよ」と言い、カウベルを叩きながら「boom boom beat」が始まり、後半戦に突入。
19曲目「オリエンタル・ダイヤモンド」では吉村由美がシンセを弾いたり、次の「くちびるモーション」では大貫亜美が赤いフライングVを弾いたりしつつライブが進んでいき、24曲目のチバユウスケ提供曲「誰かが」では、ステージ後方の映像内にリリックが映し出される。PUFFYにしてはシリアス、チバにしてはわかりやすく前向きでやさしいメッセージが綴られたこの曲が(人に提供する曲だから書けたのだと思う)、中盤のハイライトだったと思う。「いい曲! いや、そんなこと知ってたけど、それにしてもいい曲!」みたいな感動が、フロアに渦巻いているように感じられた。
後半は「ハッピーバースデイ」で始まり、石野卓球が提供した「トモダチのわお!」、ROLLYの曲でレーベル移籍の間に配信リリースされた「秘密のギミーキャット~うふふ本当よ~」、きらびやかなシンセが鳴り響くアッパーな「パフィピポ山」などを経て、ベスト盤に収められたフラワーカンパニーズ提供の未発表曲「涙を探して」で本編シメ。
アンコールでは、フジテレビ『久保みねヒャダ こじらせナイト』とコラボした新曲「抱きたきゃ抱けばEじゃNIGHT☆」をアッパーに、そしてやや下品に披露(そういう歌詞なので)。そして、「待ったー」「ヒマだったー」とか言いながら奥田民生が再び加わり、デビューシングル「アジアの純真」の次にリリースされたミニアルバム『amiyumi』の1曲目であり、PUFFYとして初めてレコーディングした曲であるという「とくするからだ」で、終了した。
最初のMCで、「自分たちでも20年続くとは思っていなかった」と言っていたことは先に書いたが、途中のMCで吉村由美は「続けるのっていちばん大変だってことに、10年めくらいで気づいた」とも言った。そのあと話を振られた川西幸一は「僕は途中で(ユニコーンを)やめてますけどね」と返し、笑いが起きて終わったのでその由美の発言はさらっと流れた感じになったが、個人的にはそれが、最後まで強く印象に残った。
それから。20年続いたこともすごいけど、キャラやたたずまいや存在感が最初と変わっていない、つまりブレていないことの方がもっとすごい、と、観ながら、改めて思った。
マイペースで、肩の力が抜けていて、なんかダラッとしていて、決してシリアスにならず(というキャラ、PUFFY登場当時の音楽シーンにおいて完全なるカウンターだった)、大ヒットを飛ばしたりキャリアを重ねたりしても大物風を吹かせず、偉そうにもならず……あ、でも、なめられたり軽んじられたりすることはさすがになくなったんじゃないかと思うが、でもやっぱりPUFFYは変わらない。
アメリカ進出したり、さまざまなアーティストとコラボしたり、私生活ではそれぞれ母親になったり……つまり「特に変わるべき何かがなかったから変わらなかった」のではない。特に何度にも及ぶアメリカ・ツアーを経験して変わらないはずなどないが、それでも「楽しいからやってますー」みたいな空気を崩すことがない。これって、偉くなっていったりどっしり落ち着いていったりシリアスになっていったりすることよりも、よっぽど難しくて、よっぽどすげえことなんじゃないか。
なお、終演後、9月から10月にかけて全7本のデビュー20周年記念ホールツアー『20th Anniversary PUFFY TOURSITS社で行く PUFFYTOURS ホールで覚醒』を行うことと、12月4日に東京ドームシティホールでデビュー20周年記念PUFFY主催イベント『PUFFY 20th THE FINAL 「PAPAPAPA PARTY 2016」』を行うことが発表された。
前者は、2本目に台湾も入っています。後者は、「亜美と由美が、20年のコネを駆使してゲストブッキング中」だそうです。いずれも楽しみです。