進行・テキスト/フジジュン
撮影/関口佳代
──9月3日(日)に森男主催によるイベント『STAR★ROCK fes 2017 番外編 ~真夏の夜の黄金の夜明け~』が開催。憧れの存在である、人間椅子の出演が決定しました!
森男 本当に嬉しいですね! 僕はスタジオミュージシャンとしてベーシストをやってきたんですが、5年くらい前に音楽を諦めようと思った時期があって。釣具の仕事だったり、ユンボの免許を取って福島に除染に行ったり、音楽以外の仕事を結構していて。
鈴木 へぇ、そうだったんですか。
森男 というのも、音楽でメシが食えなかったんです。「音楽とはこうだ」というこだわりが強すぎて、売れないんですよね。人間椅子って自分たちの音楽にすごいこだわりを持っていて。僕は日本のZZトップみたいだと思っているし、こんなバンドいないと思ってるんです。でも失礼な話、今の世の中では売れないじゃないですか。僕も人間椅子に憧れて、鈴木さんのような音を出したくて、そういう音を出して怒られて(笑)。悩みながらもこだわりを貫いて来たんですけど、「やっぱりダメだ!」と思う時期があったんです。
──でも、今もバンドをやってるということは、そこで音楽を諦めなかったわけですよね?
森男 そう。2年くらい前に意識改革があって、初めてフェンダーのベースを弾くんです。そしたら今までないくらい評価されて、「なんだこりゃ?」と思ったんですけど、結局、楽器が凄いんだと思ったんです。鈴木さんも「アンペグに僕のベースを直で繋げば、凄いシビレる音が出ますよ」ってよく言いますけど、楽器ってやっぱり凄いじゃないですか?
鈴木 そうだね、うん。
森男 鈴木さんの音を子供の頃に聴いて、その音が出したくてずっとやってきたのに、フェンダーを弾いたら認められてしまった。そこで「楽器が凄いんだ」ってことに改めて気付いたり、意識が変わり始めて。ちょうどその頃に後輩のベーシストがたくさん出てきたり、色んな人と出会うキッカケも増える中で、必死で頑張ってる若い子たちを見て、「俺は何をやっていたんだろう?」と思って。改めて音楽で食べていくことを覚悟するんです。
──周りの人が森男さんを変えてくれたところもあったんですね。
森男 はい。そこで結成したのが、森男だったんですが。まずはバンドメンバーを集めて『紅』というアルバムを作って、初ライブの時に「3年以内に日本武道館をやること」「マディソン・スクエア・ガーデンをやること」「人間椅子と対バンすること」を宣言したんです。
鈴木 ほ~、はっはっは(笑)
森男 でも、それは武道館に5,000人集めたいとか、そういう意味じゃないんです。武道館やマディソン・スクエア・ガーデンでライブをやることになった時や森男と人間椅子でライブをやることになった時、そのことに面白さや価値を見出してくれる人を集めて、夢を叶える方法を見せたいんです! だから、今回は中学3年生の時にCDを買って、ずっと憧れ続けてきた人間椅子と対バンをするという、僕の夢を叶えるためのフェスなんです。それもただの夢物語ではなくて、実現可能なロマンとしてのフェスなんです。だから、人間椅子にオファーした時は「きっと出てくれるはずだ」という自信もあってオファーしたんですけど。出演OKをもらった時には、号泣してしまったんです(笑)
鈴木 あ~、そうですか。
森男 だから、“夢の実現”こそが『STAR★ROCK fes』の趣旨であって。1年前に「人間椅子と対バンする」というのを宣言した時、それを聞いてくれていたファンがいて。9月3日には人間椅子と対バンする姿を見届けて欲しいし、「俺、やるって言ったよね!?」って言いたいし、僕が夢を叶えたことを誇りに思って欲しいんです。もちろん音楽は真剣にやりますけど、そんなアホな思想の元で夢を実現していく姿を見せていきたいんです。
鈴木 わはは、いいですね(笑)
──森男さんと鈴木さんが初めて会ったのはいつだったんですか?
森男 15年くらい前に「アイデン&ティティ」って映画で、「バンド演奏をして下さい」って仕事のオファーがあったんですが。あの映画の主人公って、人間椅子の和嶋さんがモデルなんですよね?
鈴木 正確にはみうらじゅんさんの物語なんだけど、モデルが和嶋くんなんだよ。
森男 それを聞いて制作会社の人に「人間椅子、すごい好きなんです」って言ったら、「今度、撮影に来ますよ」って聞いて、「行きます!」って会いに行ったのが初めてだったんですけど。楽屋を訪ねてご挨拶をさせてもらったら、鈴木さんがおもむろにイーグルベースを僕に掛けてくれたんです。
鈴木 それ、あんまり覚えてないんだけど、なんか偉そうでイヤだよね(笑)
森男 いや、そんなことないです! それで僕、固まっちゃって……。鈴木さんが人間椅子でデビューする時、B.C.リッチのイーグルベースに出会って。そのベースが「ギーザー・バトラーが持ってたんじゃないか?」って逸話があるベースなんですよね?
鈴木 そう、十字架を張った跡があったんですよ。よく知ってるね(笑)
森男 でも僕、イーグルベースを買うと鈴木さんの音が出ちゃうと思って、かたくなに買わなかったんですよ! で、買わずにプロになったんだけど、やっぱり欲しいから、某メーカーでイーグルベースっぽい形のベースを作ったりして。
鈴木 そんな手があるんだ! 作りたいベースがあるんですよ、ウェーブベースが欲しくて。
森男 僕もめっちゃ欲しいんです! ……って、話が逸れまくってますけど大丈夫ですか?
──いや、ベーシスト対談らしくて、すごく良いです(笑)
森男 話を戻すと、初めてお会いしてイーグルベースを掛けてもらった時、想いがバーンと弾けるんです。で、その一週間後にイーグルベースを買いに行って(笑)。その頃、僕はJERRY LEE PHANTOMってバンドをやってて。ファンに鈴木さんの知り合いの子がいたから、「イーグルベース買ったって伝えといてくれ」って話して。その後、宇都宮VOGUE(現・HEAVEN’S ROCK Utsunomiya)でライブがあった日に、鈴木さんが歩いてたんですよ! で、「鈴木さん、何してるんですか?」って聞いたら、「あ~、森男くん。イーグルベースを買ったって聞いて、若いバンドマンでそんな人いないから、友達になって欲しいんだ」って(笑)。あの憧れの鈴木さんがですよ!?
鈴木 はっはっはっは(笑)
森男 で、嬉しくてメールアドレスを交換して、ライブを見てもらったんですけど。その日に限って、イーグルベースを使ってなかったんです(笑)。それから人間椅子のライブにゲストで入れてもらって、兄貴(ドラマーの野崎真助)と一緒に観に行ったりするようになるんですけど。鈴木さん、兄貴の話は覚えてます?
鈴木 (後藤)マスヒロくんが辞めた時の話でしょう?
森男 そうです。「いま、ツーバスで古い音楽が好きなドラムを探してるんだ」っていうから、「ウチの兄貴、ツーバスですよ」って言ったら、「……しまった!」って(笑)
鈴木 いやぁ、あの時はすごく迷ったんだけど、「上手すぎる」ってことでやめたんです。上手すぎるとハードロックの泥臭さが無くなっちゃうんですよね。
森男 え、兄貴のことリサーチしてくれたんですか!?それはウチの兄貴が聞いたら、めちゃくちゃ喜びますよ!(笑) 鈴木さんにお聞きしたかったんですけど、やっぱりドラムが変わると、バンドってそんなに変わるもんなんですか?
鈴木 特にライブは変わりますよ。前はどんよりしたバンドでしたけど、(ナカジマ)ノブになってから、すっかり明るいバンドになったでしょう? ノブは最初の頃、古いファンに「雰囲気を壊さないで欲しい」とか言われることもあって、すごい気にしてたけど。考えに考えて、原曲の良さを壊さないように自分を出せるようにすごい頑張って。そのうち、ファンから「あんなこと言ってすみませんでした。今はノブさんのドラムが一番良いです!」って手紙をもらって、喜んでいたりしましたよ。
森男 そうなんですか。いや~、聞きたいことがたくさんあるから、こうして対談出来て、色々お聞き出来るのが本当に幸せです!