LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~
2017年6月17日(土)神戸ワールド記念ホール
2017年6月24日(土)25日(日)さいたまスーパーアリーナ
2017年7月1日(土)日本ガイシホール
Report:武市尚子
LiSAが初のアリーナツアーを発表したのは、2016年11月に行われた横浜アリーナのステージだった。
彼女はこの時、目の前に広がる、夢に見てきた想像以上の景色に向かい、さらに広がっていくアリーナツアーを自らの口で告知したのだ。そこに在った彼女の想いは、同じくこの日に初めて新曲として披露された「Catch the Moment」に詰め込まれていたと感じた。
“叶えても叶えても 終わらない願い 汗をかいて走った 世界の秒針が いつか止まった僕を置いていく あと何回キミと笑えるの?”
そう歌われるこの曲のサビは、“1個1個大切にファンのみんなと作り上げて来た今日が、いつの間にか連れて来てくれた場所だった”というLiSAの素直な想いがそのまま綴られた歌詞である。LiSAは、そう思えたからこそ、“この先も、みんなと一緒に目の前にあるものを一生懸命に作り上げていったら、みんなとずっと死ぬまで<永遠>に遊び続けていられるのかもしれない!”と思えたのだろう。
それまでの彼女は、常に不安ばかりを抱えていた気がする。1つずつ叶えられていく自分の夢が現実の景色に変わっていく流れの中で、この歌詞に描かれた想いと同じ想いを抱きながらも、この想いをいままでは、なかなか前向きな気持ちで歌う事が出来ていなかった気がする。むしろ、夢が1つずつ叶う度に、喜びと同時にLiSAは、それ以上の不安を募らせていた様に思えてならなかった。
“いつかみんなが目の前からいなくなっちゃうんじゃないか……”という不安だ。
しかし、彼女は、「Catch the Moment」を残せた事で、この曲を多くの人たちが愛してくれたことで、その想いを前向きに叫べる様になったのだ。
自分の嫌いな部分も、臆病な部分もちゃんと愛せる様になったLiSAは、みんなもそれぞれが自分をしっかり愛せるようになるようにと願って、4枚目のアルバム『LiTTLE DEViL PARADE』を生み出したのだ。
まさしく。そんなアルバム『LiTTLE DEViL PARADE』は、アリーナツアーを意識して作られたものだったのである。
LiSAの最大の武器は、一瞬たりとも隙間を与えない緊張感のある難解な楽曲を、感情たっぷりに完璧に歌いこなす絶対的な歌唱力とパフォーマンス力にあった。しかし、彼女は、このアルバムで、“もっと人間がやっている温かみのある音で構成された音楽”を追求することへと目を向けたのだ。
それは、“30歳”という年齢を迎える彼女が、ずっと歌い続けていくために辿り着いた、“歌い続けるための歌への向き合い方”でもあった。ただただ勢いだけではなく、来てくれた人たちそれぞれが“音楽”を楽しめる楽曲を作り、歌っていきたいという、歌い続けるための決意表明でもあったのである。
そんな彼女が今回のライヴの1曲目に選んでいたのは「LOSER 〜希望と未来に無縁のカタルシス〜」だった。
これぞ、まさに決意表明。何があっても、どこまでも立ち向かっていくぞという強い意思を感じ取る事が出来るこの曲は、アルバムの中でも1番牙が剥き出しになった1曲だ。LiSAは、ギターを弾きながら、今作で彼女が1番に表現したかったオルタナティブなロックに仕上げられたこの生っぽい楽曲を、荒々しく無骨なボーカルで見事に歌いこなした。
正直、この始まりは意外だった。いままでの彼女ならば、頭からもっとSHOW要素全開で、みんなをただただ楽しませることだけを考えた構成のライヴを目指したと思うのだが、今回のツアーでは、そんな“魅せるライヴ”は中盤に温存しておいての、メリハリを付けた構成になっていたのだ。
6月24日さいたまスーパーアリーナでは、「L.Miranic」「crossing field」と間髪入れずにロックチューンで盛り上げると、MCを挟み、ここでダンサーのドーナッツを呼び込んで【イチゴダンス】を伝授し、「Merry Hurry Berry」へと繋げ、参加型のライヴでオーディエンスを楽しませたのだった。
花道の先端のサブステージで、電子ドラムを自らが叩きながら届けられた「Peace Beat Beast」では、これまでになかったSHOW的要素に新鮮さを感じていたオーディエンスは、LiSAとのコールアンドレスポンスを全力で楽しんでいた。
ひぐらしの鳴く声から始まった「オレンジサイダー」では、オーディエンスが客席をオレンジの光で埋め尽くし、その曲の演出となっていたのもとても印象的だった。
それらの魅せ方1つ1つには、LiSAが目指した“オーディエンスと一緒に作りたかったライヴ”が在った。
中盤からは、ローラ、リップ、バットン、モコ、スケーター、ハカセ、ボイン、ビック、ボコ、アンドゥトロア、ドローンとトローン、スパイダーという、今回のツアーメンバーでもあるダンサーたちによるメガ・ドーナッツたちがステージに登場し、「キモチファクトリー」「そしてパレードは続く」で、最高にきらびやかな景色を届けたのだった。
「パレード」はまだまだ続く!