司会:兵庫慎司
撮影:近藤みどり
昨年8月に千葉県市原市の一番星★ヴィレッジで初開催された、新しい形のキャンプ・フェス『PEANUTS CAMP』が今年も行われる。今回は7月22・23日、昨年にひき続きキュレーターを務めるのはカジヒデキ。天候が危ぶまれながらも成功に終わった昨年の経験を踏まえて2回目はどのようなフェスとしてプロデュースしていくのか、そして今年は「ピーキャン音頭を作ろう」という新たな試みがあるというが、何それ?ということを、カジヒデキと一番星★ヴィレッジの菊池久志村長に訊きました。というか、そのおふたりのミーティングに同席してきました。
去年、気がついたら、夕方ぐらいには真っ赤に日焼けしてて(カジ)
──あの、まず、フェスの「村長」というのはなんなのか、教えていただけますか?
菊池村長 一番星★ヴィレッジというキャンプ場が千葉にあるんですけど、そこがあった上で始まった企画が『PEANUTS CAMP』なんですね。
一番星★ヴィレッジは5年前にオープンして……東京ドーム12個分の広大な、1本の林道でしか入れないところなんですけど。まだキャンプ場じゃなくて牧草地だった時に、僕が足を踏み入れて。「キャンプ場を作る」って言い出して、村長になったんです。
で、このフェスのスタッフたちと元々知り合いだったんですけど、「ここで何かやろう」って言い出して。
──あ、じゃあフェスの村長じゃなくて、もともとの場所の村長なんですね。
村長 そうですね。今年はゴールデンウィークからキャンプ場を始めていて、お客さんも……その東京ドーム12個分が全部埋まっちゃうくらいで。最初の年は、夏の1ヵ月間ぐらいのオープンだったんですけど、徐々に期間を広げていって、今では……ゴールデンウィーク、1日2000人ぐらいかな。クルマ400台くらいで。夜とか、光で全体が街みたいになります。
自分がキャンプ好きだったから始めたんですけど。なんか、おしゃれキャンプ場だと思われてるみたいです(笑)。僕の会社で『太陽と星空のサーカス』っていうイベントをやっていて。そこについてくれてるファンが中心になって拡散していった、というのもあると思いますね。
だから、他のイベントと違うところは、『PEANUTS CAMP』の主催側が一番星★ヴィレッジという会場を借りているだけではなくて、一番星★ヴィレッジと一緒に作っているイベントっていうところですね。
──カジくん、去年キュレーターの依頼を受けて、やってみていかがでした?
カジヒデキ そうですねえ……出演者じゃなくて、制作の方でフェスに関わらせてもらうのは初めてだったので。それだけでもすごく大きな経験だったなと思うんですけど、それ以外にもたとえば、当日の天気だったりとか、いろんなことにドキドキするもんなんだなあっていうことを実感したりとか。
特に去年は、初日の午前中がすごい雨だったので、「これは開催できるのか?」って不安になったりとか。でも始まってからは天気も落ち着いて、翌日も台風が来るっていう予報だったんだけど、結局1日晴れて。実際、自分自身が楽しませてもらったというか。
全バンドのライブを観ることができたし、いろいろなワークショップにも参加できたし。気がついたら、夕方ぐらいには真っ赤に日焼けしてて。日焼け止めを塗るのも忘れてしまっていたぐらい、すごく楽しかったので。
村長 スタッフの中でいちばん観てたんじゃないですか、カジさん。ステージ2つを行き来して、交互にライブが始まるのを全部観ていて。メシも食ってないんじゃないですか?
カジ あ、そうそう、フードスペースもいいお店がいっぱい出てて、ほんとはそっちも、もっとゆっくり回りたかったんですけど。
──キュレーターってそこまでするもの?
カジ (笑)いや、べつに誰かに言われたわけではないんですけど、ほんとに楽しかったから。
村長 終わってぶっ倒れたんじゃないですか?
カジ ああ、帰りに……。
マネージャー 帰りのクルマで、高速で運転してたら、後ろから「……冷房切ってもらえる?」って。
カジ 帰りはさすがに疲れて、寝たら寒くなっちゃって。でもそれぐらい、ほんとに楽しいイベントだったのと、お客さんも──。
村長 近かったですよね。
カジ そう、すごく距離が近くて。みんなが声をかけてくれるし、自分もそれに対して普通にお話して。ずっとハッピーな感じですごせましたね。
綾小路さんが、「パイセンの言うことは絶対!」って(村長)
──キュレーターだから、アーティストのブッキングがいちばんの仕事なわけですよね。
カジ そうですね。ひとりでやってるわけじゃなくて、みんなで話しながら考えていくんですけど。今年もいろんなアーティストに声をかけさせていただいて、すごくいいラインナップになったと思います。
村長 去年印象的だったのが、綾小路さん(綾小路 翔/氣志團)が、ステージ上で(拳を振り上げながら)「パイセンの言うことは絶対!」って言ってたじゃないですか(笑)。カジさんだからなんだなあ、俺もこれからパイセンと呼ぼうかな、って思って。
カジ いやいや、普段ああいうふうにパイセンって呼ばれたことはないんですけど。
村長 あれ、すごい盛り上がりましたもんね、お客さん。
カジ 盛り上がりましたね。翔くんには直々に相談に……会って、一緒に飲みながらオファーをさせてもらったので。「全然がんばります!先輩の言うことは絶対だから」って──
村長 やっぱりそうなんじゃないですか(笑)
──カジくん、ボンビングのワークショップを(靴を投げてバケツで受け取るというスウェーデンのスポーツ)をご自身でやってみていかがでした?
カジ ボンビングは、あれ、コート自体はこぢんまりしたものにしたんです。
村長 あ、あれ小さいんですか?
カジ そうなんです。正式なコートは、あれの倍くらいあるんですけど。でも小さくしたお陰もあって、子供たちがいっぱい参加してくれてよかったです。
村長 お母さんたちが喜んでましたね。俺あの時、審判みたいなことをしてたんですけど、お母さんみんな「カジくんが教えてくれるの?いいの?」みたいな感じで。あの感じって、一番星★ヴィレッジや『太陽と星空のサーカス』のコンセプトと同じで。
カジ そう、『PEANUTS CAMP』がすごくいいなと思うのは、まさにその、菊池さんたちがやられている『太陽と星空のサーカス』の延長にちゃんとあるところで。それが母体にあるから、家族、親子、いろんな年齢の人が楽しめる環境があるっていうか。
──今年もキュレーターのオファーが来た時は、すぐ受けました?
カジ はい。去年終わった時は、このフェス自体来年もあるか、まだわからなかったんですけど。すっごい楽しかったんだけど、一回やってみて自分の中でいろいろ反省もあったし。それを改善してもう一回できるっていうのは、すごくうれしいですね。
村長 自分に関してのいちばんの去年の反省点は、もっとたくさんの人に来てもらいたかったな、っていう。「Let’s chill」をテーマに、これだけのいい世界を作ることができたんだから、もっと多くの人に体験してもらいたかった。それに対してはいろんな反省点があるのと、そのためにはその世界観をもっと作っていかないといけないな、と。