インタビュー/牧野りえ
独特な感性と表現力を持ち合わせた4人の奇才からなるエンターテインメントロックバンド、LIPHLICH。2016年1月24日にドラムの小林考聡が加入し、永続性、破壊と創造等の意味を持った“ウロボロス”をテーマに、バリエーションに富んだニューアルバム『蛇であれ 尾を喰らえ』を2月10日にリリース。現在単独公演ツアー「ウロボロス-蛇であれ 尾を喰らえ-」真っ最中の彼らに、4月2日川崎CLUB CITTA’にて開催される単独公演ツアー「ウロボロス-頭-」に向けて話を聞いた。
──新ドラマーとして小林さんの加入も発表された、今年1月24日の赤坂BLITZでの単独公演ツアー「ウロボロス-尾-」はどんなライブになりましたか?
小林孝聡(Dr.) 僕はド緊張しました(照笑)。始まった瞬間、緊張はなくなりましたけど。
久我新悟(Vo.) ニューアルバム『蛇であれ 尾を喰らえ』のリリース前だったので、演奏曲すべて新曲という実験的なライブでしたね。
進藤渉(Ba.) どの曲も世界観を持って作ったんですけど、実際にライブでどう化けるのかっていうのは我々にもわからないところがあって。そこは久我くんが言ったみたいに非常に実験的だったなっていう。と同時に、ライブの冒頭に小林孝聡が加入することを伝えたんですね。だからヘンな先入観を持たれずにこの4人の作品をステージで発表できたのが良かったと思います。
新井崇之(Gt.) ふつうアンコールとかにメンバー加入の発表をすることが多いと思うんですけど、久我くんが冒頭に“この4人でLIPHLICHとして進んでいく。この4人のライブを最後まで楽しんでもらいたい”と話をしてくれて。その姿勢をちゃんと伝えていけるバンドってカッコいいなって思ったし、“新しいLIPHLICHの世界をもっと押し出していきたい”っていう気持ちを持ってできたので、実験的でしたけどすごく手応えのあるライブになりましたね。
──現在、ニューアルバム『蛇であれ 尾を喰らえ』を引っ提げた単独公演ツアー「ウロボロス-蛇であれ 尾を喰らえ-」も後半戦に突入しましたが、ツアーを廻っている中でどんなふうにバンドの変化を感じていますか?
久我 結成して6年目になるんですけど、小林くんが入ったことでちょっと新人バンドのような感覚がありまして(笑)。一本一本やるたびにレベルアップしてると思いますし、ファンからのレスポンスもいいかなと。
新井 もともと小林くんは後輩で、意識しなくても先輩・後輩の壁みたいなものがあるじゃないですか。でもライブの本数を重ねる度にそれがなくなってきてますね。この短い期間でどんどん良い関係が築けている気がします。
小林 最初は自分のことで精一杯なところがあったんですけど、1ヵ月ちょっとツアーを廻って単純に体もLIPHLICHのライブに慣れてきたし、心の余裕も生まれてきて。全体を見渡すことができてきてると思います。
進藤 あと明確に変わってきてるのは、ライブでのあうんの呼吸が自然とできてきたというか、空気の読み方がずいぶん変わったなと思います。プレイヤーなので音を合わせることはできます。彼はそれだけの実力もありますし。ただ、ライブにおける空気感だったり間だったりっていうのは、やっぱりライブを重ねて培っていくものだと思うので。最近は音を出してるときの呼吸の合い方がすごくいいですね。
小林 ほとんど毎日、ずっと一緒にいますからね(笑)
久我 本当に技術は申し分がないというか、超上手いので。逆に初心に返らせてくれるところもあるんです。一番年下で、それなりのキャリアのバンドに食い込むっていうのは、やっぱり根性とか気合い、あと実力もないとやっていけない。それはもう最初から感じられたんで、自分たちも負けてらんないなっていう良い刺激になってますね。
──今ツアーで『蛇であれ 尾を喰らえ』収録曲を演奏してきて、レコーディングでの印象と違うノリが生まれた曲はありますか?
新井 『GOSH!』ですね。レコーディングのときにはもっとシリアスな感じの曲だったんですよ。
久我 硬派なロックというか。それがライブで披露したときにですね、進藤くんがぶち壊しまして(笑)。何の打ち合わせもなく急にステージ上で“わたし、この曲で踊りたい!”って言い出しまして。ベースをほっぽりだして踊り始めたんですよ。今ではそれが定着しちゃいましたね。
──進藤さん、ステージで急に踊りたいと思ったんですか?(笑)
進藤 もうレコーディングのときから思ってました。
久我 そっから思ってたんですか!?
新井 硬派がいきなり軟派な感じになっちゃって、天変地異でしたね(笑)
進藤 おかげさまでお客さまには大変喜んでいただいて。
新井 あ、そうなんですか?お客さまの声は今初めて聞きましたけど(全員爆笑)
──お客さんから予想外のノリが生まれた曲もありますか?
久我 ヴィジュアル系ってわりと“はい、ここで頭振って!” “はい、ここでジャンプして!”ってわかりやすく曲を作ってたり、ボーカルが指示するときも多いですけど、僕らはお客さんのノリはあまり考えて作ってないんですよ。
新井 曲作りのときにリズム的なところではライブのことをイメージしますけど、お客さんのノリまでは考えないですね。
久我 実際にライブでやってみて“もっとこうしたいな”って思えばアレンジを変えちゃいますね。
新井 うちはCDと違うアレンジのパターンが多いですね。
進藤 今回のアルバムに収録されている『slow virus infection』は、たまたま昨日整理したらこのツアー中で6パターンありました。
──6パターンですか!?(笑)。毎回セットリストを変えてるということですか?
久我 結構変えてますね。1曲目、どの曲で始まるかも毎回変えてます。
進藤 会場の雰囲気や照明をふまえて“今回はどう始めようか?”ってみんなで話しますね。うちのライブはよく“ショー的なものを感じる”と言われるんですけど、それはおそらくそういうところかもしれないですね。あんまり意識したことはないですけど。
──会場に合わせてセットリストを考えられると。
新井 だから最初にそのライブハウスの下調べをするよね。
久我 そのライブハウスに似合う曲かどうかを考えますね。同じことの繰り返しはしてないので刺激的で楽しいですね。
──さて4月2日に川崎CLUB CITTA’で単独公演ツアー「ウロボロス-頭-」が行われますが、どんなライブにしたいと思っていますか?
久我 (3月上旬現在)そろそろ考えなきゃいけないなって思ってるところなんですけど(苦笑)。何となく考えてることは、もともと映像を使うのが好きだったり、サンドアートの方とかバイオリンの方とかゲストを入れることもあるんですけど、今回は過剰な演出とかセットではなく、4人の音だけ十分勝負できるかなと思ってます。
小林 バンドってよく“センターラインが大事だ”って言われるんですよ。ドラムとボーカルの縦のライン、そこの息の合い方ですよね。それをこのバンドに加入して実感しまして。ドラムが最初のキュー出しをすることが多いんで、やっぱ縦の息が合ってないとライブのノリや運びもうまくいかないんですよね。ライブをする度にそのセンターラインがグッと近づいてきたなっていう感覚があって。ツアー後半戦、CLUB CITTA’に向けてさらに強固なものにして、メンバー一丸となったライブをしたいですね。
進藤 “この4人で”とアピールする場はCLUB CITTA’が最後ですから。次回以降の作品やライブでそんなことを言うつもりは毛頭ないんで。『蛇であれ 尾を喰らえ』を聴いていただいて、これから始まるLIPHLICHのツアーのシメをぜひ観に来ていただきたいなと思っています。
新井 LIPHLICHをより愛してくれるきっかけになればと思うんですよね。ライブを通してLIPHLICHをもっともっと愛してもらえる要素を見つけてもらいたいし、僕たち自身も例えばメンバーに対する発見だったり、曲の持ってる表情とか表現の発見だったりがライブをやる度にあって。残りのツアーを含めて見つけたものをCITTA’で全部吐き出せたらいいかなって思ってます。
久我 一日一日、ものすごく急成長していて。やっぱ人間ですから体調やらいろいろあって常に100%っていうのは難しい部分があると思うんですけど、100%の力を発揮できるようにしたいですし。ファイナルだ!って気張る感じではなく、当たり前にそこにいて、当たり前のようにカッコいいライブをしたいなと思ってますね。