the shes gone・兼丸(Vo&Gt)、楽曲とともにバンド結成10周年を振り返る。4月から始まる全国ライブハウスツアーについても訊いた

インタビュー | 2026.04.02 18:00

──結成10周年おめでとうございます。10年という数字に対する実感はいかがですか?

9年までは特に気にしていなかったんですけど、2桁になるとさすがに、ちょっと引きますね。「わあ、すごい!」というよりかは、「おお、10年やったんだ……」みたいな。元々「音楽でご飯を食べていきたい」というつもりで結成したバンドではないので。「今を頑張らなきゃ」という気持ちで続けてきました。だから10年続いたことにびっくりしてます。

──このインタビューでは10年間を振り返っていければと。兼丸さんがギターの西尾マサキさんに声を掛け、the shes goneを結成したのが2016年。2017年には、オーディションで優勝して「COUNTDOWN JAPAN 17/18」に出演。2018年リリースのシングル『想いあい/young』は各店舗や通販サイトで品切れ状態が続くなど、大きな反響を呼びましたね。

この時期が一番つらかったんじゃないかな? どのバンドも最初はそうだと思うんですけど、the shes goneとしてのアイデンティティがまだ確立されていない時期で。自分も含めメンバー全員学生だったので、バイト・進路・バンド・プライベートのバランスや心持ちがそれぞれ違っていたんです。「もっとバンドに時間を割こうよ」という話になっても、「割きたくない」というメンバーもいる。当然ですよね。学生でお金もないんだから。とはいえ「ボーカルだから」と僕がいっぱいお金を出すのも違うし、そもそも自分にもお金はない。なので、MVやCDを自分たちで作ったり、オーディションを片っ端から受けたりしていました。

──メンバーそれぞれモチベーションは違いつつも、兼丸さんは、卒業後もバンドでやっていきたかったんですかね?

そうですね。就活だと思ってバンド活動をしていました。だからこそ、みんなとの意識のズレがすごくつらかったです。「COUNTDOWN JAPAN」オーディションの時期とかもけっこうつらくて。幕張でのOA出演の前日まで「想いあい」のレコーディングをしてたんですけど、サークルを優先して練習をしていない人もいたり、自分が録っている最中に他のメンバーが寝てしまっていたり……。

──それは……。

「遅くまでバイトしてた」とか「次の日一限の授業がある」とか、いっても学生なのでそれぞれ事情もわかりますし、しょうがないんですけどね。その上で、僕がブッキングのメールの確認したり、グッズの発注をしたり……全部自分でやっていたから、つらかったという。

──つらくてもやめなかったのは、なぜでしょうか?

バンドをやるのが好きだったからですね。というのも、自分のために投資してあげたことがあまりなかったんですよ。正直大学受験の時も、「行きたい学校とかないけど、大学は卒業しておかなきゃ」という感じで。だけど「バンドが好き」という気持ちはずっと温めてきて……ライブハウスにめちゃくちゃ通っていたタイプではないんですが、TSUTAYAのなかで一番大きな渋谷店にわざわざ行って、インディーズCDをたくさん借りて帰るとか、そういうことをしていたんです。だからバンドを組んで楽器を買ったり、スタジオ代を払ったりするのも、自分への投資という感じで嬉しくて。そこから「もっと自分のために時間を使ってもいいんじゃないか」ということで、「25歳まではバンドをやってみよう」と思えたんです。

──好きだから頑張れたと。「いつか報われるはずだ」という感覚もあったんでしょうね。

ああ、そうですね。「報われろ」とも思ってました。「想いあい」のMVは完成に2ヶ月かかったんですよ。でも、これでバンドが評価されたらメンバーに認めてもらえる一因になるだろうし、形になる以上、費やした時間は絶対に無駄にはならないので。当時、分からないながらに手を動かしたことで、自分で発信する力も身につきました。やってきたことは全部今に活きているなと思います。

初期の楽曲の歌詞から見えてくる、当時の心情とは

──「想いあい」もそうですが、特に初期は、「自分は相手から選ばれず、置いていかれる側である」という自己認識を持つ人が、多くの楽曲の主人公になっているように感じました。この主人公像は、兼丸さん自身のどういった部分から出てきているんでしょう?

やっぱり自信のなさからじゃないですかね。当時はバイト・学校・バンド・恋愛の4つで自分の世界が回っていたから、楽曲でも、自分の恋愛や不甲斐なさを取り扱うことが多かった。それが、“選ばれなかった側”の曲が多かった要因だと思います。元々、前向きな言葉をひねり出そうとしても出てこない人間というか。「あの人はあんなことができるけど、自分にはできない」ということを勝手にピックアップして、すごく引きずってしまうタイプなんです。なので、the shes goneで恋愛を扱う時も、他の子よりモテなかったり、「なんであいつはモテてるんだよ」みたいな気持ちを持っている人が主人公になりがちで。(楽曲は)僕がどうにもアウトプットできなかったもの……嫉妬とか嫌な感情の塊ですよね。

──そういう意味では、1stミニアルバム『DAYS』収録曲「shower」(2019年)も印象的でした。音では涼やかな景色を描いているのに、爽やかとは言えない本音がこぼれる瞬間もあって。その人間臭さが兼丸さんらしいなと。

メンバーのうち自分だけが就活を蹴ってバンドを選んだことや、バイト中とかにも感じる「あの人にできることが自分にはできない」という感覚、「明日もバンドとバイトで…一生金がないぞ」という未来の見えない感じ……当時抱いていた感情が全部入り混じって反映されている曲ですね。「shower」というタイトルは、浴びる方のシャワーとにわか雨のダブルミーニングで。「これは土砂降りではなく、長い目で見たらにわか雨だ」と聴いてくれる人も思ってくれたら、というテーマで作った曲でした。

──「聴いてくれる人が少しでも救われれば」という思いもありつつ、こういう曲を書くことで、自分の気も紛らわしていたんでしょうか?

紛れはしないんですが……「この曲を作るためにこの事象があったんだ」と思わなきゃやってられないというか。みんなそういう気持ちを持っているから、SNSで長文を書いたりして、自分の感情を落とし込んでいるんだろうし、僕にとってはそれが歌詞なんですよね。だからこそ、自分の人生や思想が嫌でも投影されるし、しなきゃいけないものだと思いながら書いている。『DAYS』を制作していた頃は、「アマチュアなのに短期間で4曲も書かなきゃいけない!」って状況で、「ああ、もうこれしか書けることがないや」というふうに出てきたのがこれでした。2枚目の『MORE』(2019年)、3枚目の『FACE』(2020年)くらいまでは、いっぱいいっぱいながら頑張って作ってた感じでしたね。

──『MORE』に収録されている「シーズンワン」は、片思い中の人目線の歌で。歌詞にはご自身の人生や思想が投影されるという話でしたが、この曲では、告白を決心したと思いきや、「いつになるか分からない」と続くので……「これ、告白できないまま終わるパターンだ」と思っちゃいました(笑)。

いや、分からないですよ? だって、決意はしてるんですから。もしかしたら下駄箱で一緒になるタイミングがあるかもしれないし、その時にちゃんと伝えるかもしれない。

──そんなタイミング待ってないで、早く言いなよって話ですよ。

そんなことができていたら、こんなにイントロが長くて、決心するまでごちゃごちゃ言うような曲は作ってないです(笑)。

──「ガールフレンド」(2021年)も衝撃作でした。歌詞の冒頭に鍵括弧がついていますが、閉じるのが楽曲の終盤で。つまり空想を歌った曲であるという。

ちょうどサブスクが普及し始めた時期に出したCDの収録曲だったので、「歌詞カードを見てほしい」ということで、そういう鍵括弧の使い方をしました。サビの歌詞から出てきたんですよ。だけど爽やかに「好きだ好きだ」という曲にするのは、なんか嫌だなと思って。それで鍵括弧をつけてみたら……全部辻褄が合ったんですよね。これを思いついた瞬間、「歌詞、楽しい!」ってなりましたね。

公演情報

DISK GARAGE公演

「the shes gone LIVEHOUSE TOUR 2026 ~10th ANNIVERSARY~」

-シズゴの日-
2026年4月25日(土)東京・豊洲PIT

–Spring / Summer SERIES–
2026年6月3日(水)千葉・千葉LOOK
2026年6月13日(土)北海道・札幌cube garden
2026年6月14日(日)宮城・仙台LIVE HOUSE enn2nd
2026年6月27日(土)兵庫・神戸VARIT.
2026年6月28日(日)静岡・静岡UMBER
2026年7月18日(土)熊本・熊本B.9 V2
2026年7月19日(日)広島・広島セカンドクラッチ
2026年7月30日(木)愛知・名古屋 CLUB UPSET
2026年7月31日(金)大阪・大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE

–Fall / Winter SERIES–
2026年9月5日(土)長野・長野LIVE HOUSE J
2026年9月6日(日)新潟・新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2026年9月26日(土)群馬・前橋Dyver
2026年10月3日(土)香川・高松DiME
2026年10月4日(日)滋賀・滋賀B-FLAT
2026年11月14日(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2026年11月15日(日)石川・金沢vanvan V4
2026年11月20日(金)大阪・大阪CLUB QUATTRO
2026年12月4日(金)福岡・福岡BEAT STATION
2026年12月5日(土)岡山・岡山IMAGE
2026年12月11日(金)東京・渋谷CLUB QUATTRO

・「-シズゴの日-」チケット一般発売中!
・「–Spring / Summer SERIES–」プレイガイド先行受付中!
※受付期間は各プレイガイドでご確認ください。

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  • 取材・文

    蜂須賀ちなみ

  • 浅香 郁絵

    撮影

    浅香 郁絵

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