関学凱旋 orange pekoe Final Acoustic Duo Live!(ファイナル追加公演)
2026年3月8日(日)関西学院大学 中央講堂
orange pekoeが2026年3月8日(日)、藤本一馬、ナガシマトモコの母校・関西学院大学 西宮上ケ原キャンパスの中央講堂でラストライブ『関学凱旋 orange pekoe Final Acoustic Duo Live!』が開催された。
もともとは3月1日(日)のビッグバンド・ライブ『orange pekoe with the Big Band Party Night FINAL!!!』で“活動満了”の予定だったのだが、メンバーとスタッフの間で「最後に関学でやれたらいいよね」というアイデアが浮上し、いくつかのハードルをクリアして奇跡的に実現した関学でのライブ。オレペコ結成の場所で、メンバーと観客の深い思いが交差する最高のフィナーレとなった。
兵庫県西宮市にある関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス。“スパニッシュ・ミッション・スタイル”を基調とした建物と庭園は本当に美しく、校内に足を踏み入れた瞬間に「うわあ、きれいだな」とつぶやいてしまった。(学校の前にあるレトロな喫茶店“トップコーヒー”もステキでした)
ライブ前のBGMは鳥のさえずり。お客さんのなかには藤本、ナガシマの友達もかなりいて、「久しぶり」という声が聴こえてくる。もちろん、オレペコのファンも数多く足を運び、二人の最後のステージを心待ちにしている。
開演は16時。ガットギターを手にした藤本一馬が美しいフレーズを響かせるなか、ナガシマトモコがステージへ。大きな拍手はすぐに手拍子に変わり、〈そうだ 特別に教えてあげるよ〉という歌へとつながる。1曲目は「愛の泉」。メジャー1stアルバム『Organic Plastic Music』(2002年)の収録曲によって会場が瞬く間に一つになっていく。さらに「みなさんこんにちは。かえってきたよ、関学に。最後まで楽しんでください!」(ナガシマ)という挨拶とともに「太陽のかけら」。暖かい日差しのような歌とギターに包み込まれ、早くも大きな感動が生まれる。スキャットとギターソロの掛け合い、そして、中央講堂のふくよかな音の響きも素晴らしい。
「急遽決定しました、ファイナルの追加公演。しかも関学でやれるって、めちゃくちゃうれしいです! 横浜はビッグバンドだったんですけど、今日はデュオ。みなさんの聴きたい曲をSNSに送ってもらって。そのなかからもやろうかなって思ってます」
そんな言葉に導かれたのは「南風」。アルバム『Grace』、ベストアルバム『orange pekoe All Time Best 2001-2025 春夏秋冬、日々詠歌』にも収められたこの曲は、〈あなたと出会えたことは 偶然じゃなく/この今を共に生きていくため〉というラインが広がるスロウなナンバー。ゆったりとたゆたうギターの旋律と穏やかなボーカルの共鳴が心地いい。続いてはボサノヴァのフレイバーと“君はありのままでいい”というメッセージが溶け合う「Green Flash」。楽曲を重ねるごとにorange pekoeの音楽世界——豊かな奥深さ、心地いい解放感が同時に伝わってくる——が広がっていく。
ライブ中盤のMCでは、ナガシマと藤本が関学についてトーク。軽音楽部での出会い、藤本の曲を聴いたナガシマが「この人と音楽をやりたい」と思ったこと、関学の後夜祭に出演するチャンスがあったのに、藤本が学校に籍があったので出演できなかったこと(詳しくはナガシマのnoteを参照 /https://note.com/tomokonia/n/n7c77bd13cb22)。これが最後のライブだとは思えない、穏やかでリラックスした時間が過ぎていく。
ここで披露されたのは、藤本がナガシマに初めて聴かせた曲、つまりorange pekoe結成のきっかけになった「ホットミルク」。軽妙なスウィング感、古き良きジャズの雰囲気をたたえたメロディが一つになったこの曲は、まさにオレペコの原点だ。
伸びやかなボーカル、豊かなグルーヴをたたえたギター演奏がお互いを高め合う「12ヶ月」からライブは後半へ。ラテンのテイストをたっぷり注いだ「ソングバード」では、観客がクラーベ(サルサ、ルンバなどで用いられるラテン音楽特有のリズム)の手拍子で参加。ギリシャ神話の“月の女神”をタイトルに冠し、慈愛に溢れた愛を歌い上げた「Selene」では、涙を流す人の姿も。少しずつ、ライブが終わっていく。
そして、orange pekoeのブレイクのきっかけとなった「やわらかな夜」。90年代のクラブジャズ、00年代初めのカフェ・ブームなどを背景に登場したオレペコが多くの音楽ファンを魅了し続けてきたのは、普遍的な楽曲と豊かな表現力があったから。「やわらかな夜」はそのことをはっきりと示していたと思う。
情熱的な旋律、〈愛の花咲く 僕らの旅路〉というライン、“LaLaLa〜”のシンガロングが響き合った「FLOWER」、そして、本編ラストは「Happy Valley」。ジャズやラテンが自然に混ざり合い、愛の素晴らしさを高らかに歌い上げる。それはまさにオレペコの魅力そのもの。割れんばかりの拍手と歓声が会場全体を包み込む。
鳴り止まない拍手に導かれ、二人はすぐにステージに戻ってくる。少し涙ぐみながらナガシマは「泣かんとこうと思ってたのに。ありがとうございます!」と笑顔で感謝を伝えた。
「時が経つにつれてorange pekoeの曲に感じ入ることがあって。ナガシマトモコの歌詞に助けられてきたんだなと気づきました。『KUKUI』という曲の〈形あるものはいつか消えるけど/君が“大切にしてきたこと”は消えない〉という歌詞は、ナガシマトモコの核にあるものだなと思います。音楽は儚く消えるものですけど、みんなで共有した記憶はずっと消えないし、永遠に心のなかにある。今日ここにきてくれて、一緒に過ごしてくれたこと“ありがとう”という気持ちでいます」(藤本)
「一馬のメロディがorange pekoeが生まれた理由。こんなに素晴らしい作曲家とここまで一緒にやれて、本当にありがとう」(ナガシマ)
という心のこもった言葉の後は、藤本がいちばん好きな曲だという「little mermaid」。繊細さと大らかさを併せ持った旋律のなかに〈もし僕が消えて/会えなくても/かわらないよ 今 君を愛す〉というフレーズが溶ける場面もまた、この日のライブの大きなハイライトだった。
「最後の『LOVE LIFE』いくで!」(ナガシマ)と笑顔で語り掛け、「LOVE LIFE」へ。手拍子と合唱、この場所にいるすべての人の思いが一つになり、すべてが解放されていく。素晴らしい音楽だけに与えられた、奇跡のような瞬間がそこには確かに存在していた。
観客はスタンディングオベーションで二人を讃え、この日いちばん大きい拍手と歓声が沸き起こる。そんなオーディエンスに改めて感謝の気持ちを伝え、ナガシマはゆっくりと語り始めた。
orange pekoeが満了した後も、二人の音楽人生は続くし、みなさんと一緒に生きていく。そのなかでorange pekoeの曲はいろんな響き方をしてくれたらうれしいし、これからもorange pekoeの曲を歌っていこうと思っていることーー。
「人生のなかで迷うとき、“どっちが真実だろう?”と思ったときに、“こっちやで”と言ってあげられるような、そばにいられる音楽をやり続けます。これからもよろしくおねがいします!」
最後に演奏されたのは、ナガシマのフェイバットソング「Landscape」。マイクを通さず、生声で伝えられた〈愛を胸に この地を行こう〉という歌詞は、観客ひとりひとりの心にしっかりと刻まれたはずだ。
結成から27年、デビューから25年のキャリアのなかでも出色の出来栄えと称すべきステージで活動満了したorange pekoe。ナガシマトモコはTomoko Niaとして、藤本一馬はソロアーティストとして、ここから音楽家としての道を歩んでいく。今後2人が生み出す音楽を心待ちにしているのはもちろん、二つの道が再び交差する日を待っていたい。そんな気持ちを抑えられないのは、筆者だけではないだろう。
SET LIST
01. 愛の泉
02. 太陽のかけら
03. 南風
04. Green Flush
05. ホットミルク
06. 12ヶ月
07. ソングバード
08. Selene
09. やわらかな夜
10. FLOWER
11. Happy Valley
ENCORE
01. little mermaid
02. LOVE LIFE
03. Landscape




















