KAMITSUBAKI WARS 2026 神椿横浜決戦 IN ぴあアリーナMM
DAY-2 花譜 5th ONE-MAN LIVE「宿声 / 深愛」
2026年3月1日(日)ぴあアリーナMM
暗闇のなかでSEが流れ、しばらくすると会場周辺を彷徨う花譜の姿を捉えたオープニングムービーが流れる。ピアノの音色に乗るスポークンワードの後にバックバンドの演奏が鳴り響き、シームレスに2018年に公開された花譜初のオリジナル曲「糸」のイントロへとつないだ。花譜がステージに登場すると、それに続いて彼女の背面モニターには大きな本が現れ、それぞれのページにグラフィックと歌詞が映し出される。それは今年5月にリリース予定の5thアルバム『深愛』の起点が小説『カミュの歌鳥 花譜小説集』であることへの暗喩であると同時に、これまで彼女が歩んできた物語を読み進めるようなライブになることを示唆しているのではないかと感じた。実際この日セットリストの展開や選曲はすべて、彼女の歩んできた軌跡が軸となっていた。
「過去を喰らう」では開いたそれぞれのページに、現在の花譜と過去の花譜の姿が映し出され、「雛⿃」「心臓と絡繰」でも同様の演出が施された。そしてここまで4曲すべてが1stアルバム『観測』収録曲である。当時抱えていた気持ちを蘇らせるように、かつ当時の自分を愛でるように一言一言に感情を込める彼女の歌声からは、原点と成長をどちらも感じ取れた。過去の積み重ねにより今の彼女が、花譜の物語があるのだと、あらためて噛み締める。
花譜はファンと同じ時間を共有し、大好きな楽曲を歌うことができるライブという空間が生きがいであること、配信を通じて日本はもちろん世界中の人々とつながれることへの喜びをあらわにする。「この調子でたくさん歌っていくので、ついてきてね!」と微笑むと、ステージの天井よりキネティックライトが現れ、花譜の足元には横断歩道が、背面のモニターには街を模したグラフィックが施された。「畢生よ」「景色」と2ndアルバム『魔法』収録曲を立て続けに披露し、傷を抱えながらも意思を貫くようなボーカルで観客の心を揺さぶる。すると「皆さん調子はどうですか? 次の曲、もうわかりましたか?」と語りかけ、「戸惑いテレパシー」「私論理」と鮮やかに駆け抜けて、不安を抱えながらも好奇心とともに広い世界へと飛び出していく姿を存分に体現した。
彼女が花譜として活動を始めたのは高校生の頃だ。今回のライブリハに入るなかで、レコーディングをした当時の自分と歌い方や声が変わったと何度も思ったという彼女は、ファンからコメントなどで「大きくなったね」と声を掛けられることがあると語り、家族以外にも長きにわたり見守ってくれている存在がたくさんいることへの喜びと驚きをあらわにする。そして「奇跡みたいなバランスでわたしがここにいて、みんながここにいてくれているんだなと思うと、それだけで力が漲ってくるんですよ」と笑顔を浮かべた。その後披露したのは、ここまでの傾向からも推測できるとおり3rdアルバム『狂想』に収録された4曲である。シンガロングが巻き起こった「それを世界と言うんだね」、健やかなエネルギーが歌の端々に漲る「海に化ける」「人を気取る」、心の叫びを歌に乗せた「邂逅」と、どの楽曲も彼女にとって掛け替えのないものであることが痛烈に伝わる、頼もしく真摯な歌唱だった。


ここまで年表のように歌いつないだ花譜は、その楽曲を歌えば歌うほど、自分が思い描いた景色やイメージだけではなく、自分の思い出が宿ると語る。初めて自分のための歌が出来た日のこと、初めてファンの声を聞き、姿を見た初ワンマンのこと、V.W.Pのメンバー5人で「魔女」を歌った日のこと、花譜の初期楽曲を制作していたカンザキイオリがKAMITSUBAKI STUDIO卒業前に最後に立ち会った「邂逅」のレコーディングのこと、廻花として初めてステージに立った日のこと、昨年秋に上海のホテルのベッドに身を預けながらファンからのあたたかいメッセージを読んだことなどを振り返り、「声にはたくさんの月日が宿っていると思います。歌は変化や成長、記憶、みんなと一緒に育っていくんだと思う。みんなが一緒に積み上げてきてくれた時間が、わたしの声にも編み込まれてるってことなんですよ。ということは、無敵! 年々光を増していく私だけの歌、どれもが宝物です」と素直な思いを伝えた。
そして4thアルバム『寓話』のセクションへ。「ダンダラボッチ」「ゲシュタルト」とキャッチーなリズムの楽曲で会場を盛り上げ、ドラマチックな展開を見せる「カルぺ・ディエム」では音楽に身を委ねながら情感豊かなボーカルを響かせる。そこからバンドメンバー紹介につなぎ、勢いを保ったままなだれ込んだ「代替嬉々」の歌声は、泣きじゃくるような激情と爽やかさを帯びていた。彼女が音楽に対して命と情熱を捧げていることを物語る、まさに青春の一瞬を凝縮させた熱演だった。
クラブミックスの“KAF DISCOTHEQUE”を挟むと、梟(黒)に衣装チェンジをする。ここまでで4thアルバムまでの楽曲を時系列で披露しており、さらに今回のライブタイトルが「宿声 / 深愛」ということからもこの後の展開は予測できるだろう。ここまでのセクションが彼女の声に宿った思い出や感情にフォーカスした“宿声”ならば、ここからは“深愛”の出番である。
愛の詩の朗読から、壮大なバラード「私の在処」、ひりついたロックナンバー「明滅」、ピアノとシンセストリングスが透明感のあるボーカルを引き立てた「君は水、私は魚」と3曲連続で初披露し、その後もキュートかつセンチメンタルなニュアンスも含んだポップソング「エラーソング」、トリッキーな「学園戦線」、無垢でたおやかな「乳白の宇宙」、切実な愛情が綴られたロックバラード「周波数0の合言葉」と立て続けに届ける。本編のラストはアルバムのラスト歌唱曲となる「オーギュメント」。新たな旅立ちを想起させる高揚感と自身の心に深く向き合うような感傷性を兼ね備えた楽曲と、それを繊細かつダイナミックに声に落とし込む花譜のボーカルは、愛情は想像を超えて様々な奇跡を起こしていく、可能性に富んだものであることを証明するようだ。希望を背負った彼女の姿は、とても眩しかった。
アンコールではまず、初ライブ時のクラウドファンディングで仕立てた衣装・星鴉を身に纏った花譜が「魔法」を歌い出す。彼女が初めてデュエットに挑戦した楽曲をソロで披露するのかと思っていたところに、同曲のデュエット相手である理芽がカットインし、サプライズゲストとしてステージに現れた。息の合った掛け合いやハーモニー、ユニゾンには、ふたりの信頼関係が淀みなく表れる。観客も心を許し合ったふたりのボーカルに陶酔するように身を任せた。
花譜は理芽のゲスト出演について「この曲は絶対に今回のライブに入れたくて。でもこの曲をひとりで歌うのは違う。わたしにとって仲間が増えたあの日、一緒に歌えたあの日は原点(のひとつ)なんです」と打ち明ける。そして星鴉を今の自分に合うように仕立て直してもらったこと、その衣装で現在の衣装を着た理芽とステージにて肩を並べられることへの感慨に浸った。
理芽が去った後、花譜は「次の曲もわたしの原点と言っていいかもしれない。ターニングポイントになった曲だと思います」と告げ、「マイディア」を歌い出した。同曲は彼女が初めてライブで披露した自身の作詞作曲楽曲であり、ファンに宛てて書いたものである。音に包まれながら喜びを歌声にする彼女はとても凛としており、観客が左右に揺らすペンライトがそのムードをより引き立てた。続いて披露したのは、V.W.Pが生まれる前に「魔女」の続編として制作された「祭壇」。同曲は彼女が初ワンマンにて披露し、のちにV.W.Pの楽曲としてリリースされたという背景を持つため、これも彼女の原点のひとつと言っていいだろう。ピアノとシンセストリングスの音色に乗せて、観客一人ひとりに語り掛けるように真心を込めて歌唱した。
花譜は「愛してます! 花譜でした。またね!」と手を振りながらステージを後にし、未来への意欲とファンに向けたメッセージがしたためられたスポークンワードとエンドロールでこの日を締めくくった。今後の彼女の活動には『深愛』のリリースに加え、“組曲2”の第9弾として神聖かまってちゃんとのコラボレーション楽曲を今春リリースすることや、世界各国でのライブ出演を想定した海外プロジェクト「KAF WORLD CIRCUIT 2026 -Global Live Appearances-」などが決定している。この7年半で自身の表現を育み、拡張した花譜は、さらに大きな世界へと羽ばたく。新章が始まった。
SET LIST
01. 糸
02. 過去を喰らう
03. 雛⿃
04. 心臓と絡繰
05. 畢生よ
06. 景色
07. 戸惑いテレパシー
08. 私論理
09. それを世界と言うんだね
10. 海に化ける
11. 人を気取る
12. 邂逅
13. ダンダラボッチ
14. ゲシュタルト
15. カルペ・ディエム
17. KAF DISCOTHEQUE
18. 私の在処
19. 明滅
20. 君は水、私は魚
21. エラーソング
22. 学園戦線
24. 周波数0の合言葉
25. オーギュメント
ENCORE
01. 魔法 feat. 理芽
02. マイディア
03. 祭壇
04. 魔⼥
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