
ASOBI同盟 初ホールワンマンライブ 〜ぼくらの秘密基地〜
2025年11月15日(土) ヒューリックホール東京(有楽町)
暗転すると、ステージバックのプロジェクターにフィルム映画風のカウントダウンの後、ASOBI同盟の誕生と歴史を振り返ったムービーが流れる。ビートに乗せてステージに現れたとくみくすがギターを唸らし、それに続いてりみーがステージに登場すると、「私が絶妙にブスなだけ」でこの日の幕を開けた。今年5月にSNSでショートバージョンが公開され、8月のFCライブでワンコーラスを初披露した未発表曲で冒頭から勢いをつけると、りみーが「もっと一緒に盛り上がっていけますか!?」と呼びかけて「王様だーれだっ」へ。男女のシチュエーションを効果的に用いた楽曲とボーカルが小気味よく響き、観客も軽快なコールを飛ばした。
「だるまさんが転んだ」でさらに会場を盛り上げると、りみーは念願の初ホールワンマンについて「すっごく楽しみにしてた」と目を輝かせる。そしてりみーのトークにとくみくすが軽妙な合いの手を入れ、観客とコミュニケーションを取りながら会場の空気をほぐした。
するとアコギに持ち替えたとくみくすがアルペジオを奏で、それに乗せてりみーが「みんなは好きな人はいますか?」と語り掛ける。そして自身の過去の失恋を振り返り、「ごはんが食べられなくなって、目の前が真っ暗になって、心にぽっかり大きな穴が開いちゃって。そんなふうに前を向けなくなったときに作った曲を歌います」と続け、「あのね、」を歌い出した。恋する女子の可憐さと寂寥感が滲んだりみーの歌声と情感豊かなとくみくすの歌声は異なる趣を持つものの、大切な人に向けた愛しさと、離れ離れになった悲しみがひしひしと伝わることは共通している。ハーモニーやアコースティックアレンジも、楽曲に込められた真心を十二分に引き出していた。
ソフトなボーカルとオケの電子音、アコギの音色が重なり浮遊感を作り出した「地球滅亡」で観客をやわらかく包み込むと、ふたりがダルマに扮したアニメーション映像を挟み、衣装チェンジをして再びステージに現れる。そしてYouTubeなどでもお馴染みの弾き語りカバーメドレーを、ライブ限定スペシャルバージョンとして届けた。今年のヒットソングを中心に、幅広い時代とジャンルの楽曲をテンポ良くつなぐ。様々なキーの楽曲を次々とスムーズに演奏するとくみくすのギターの手腕も存分に発揮されていた。
「僕はストーカーです」でポップながらに緊張感のあるボーカルで会場の空気を掴んだ後は、リクエストコーナーへ。観客から「歌ってほしい曲」をその場で募り、どんな楽曲も即興で弾き語りで届けるという内容だ。次々と手が挙がる客席を歩きながら3人ほど指名し、リクエストを受けた自身のオリジナル曲「結婚行進曲」、Adoの「新時代」、King Gnuの「白日」を歌唱する。リクエストした当人の目の前で披露するというサービス精神にも、ASOBI同盟のフランクなスタンスが表れていた。
TVアニメ『夜桜さんちの大作戦』EDテーマに起用されたドラマチックな「結婚行進曲」、ダークでユーモラスな「バッドバースデー」、『夜桜さんちの大作戦』のインスパイアソング「夜桜#1」と知名度の高い既存メロディをASOBI同盟色に昇華した楽曲で会場を高揚させると、ポップなバンドサウンド「思い出メモリー」では青春を彷彿とさせる爽やかで情熱的なボーカルや、とくみくすのギタープレイを溌溂と響き渡らせる。ASOBI同盟の音楽性の振れ幅の広さをあらためて強く印象づけるカラフルなセクションだった。
りみーはJRバス中国のTVCMソングに起用された最新曲「てるてる坊主」について、ASOBI同盟の大事な日には決まって雨が降るため、それが晴れることを願って制作した旨を語る。そして「わたしたちの大事な思い出には必ず雨が降っていて。雨が嫌いなわけではないわたしたちにも、晴れてほしい大切な日があります。わたしたちにとって、みんなにとって大切な日が、これ以上雨でなくならないように」と続け、同曲を披露した。客席と一丸となった“明日天気になあれ”の掛け声や、途中で傘を持ち込んだパフォーマンスなど、開場は雨上がりのように澄んだ空気に満ち溢れた。
アンコールではふたりが客席後方から登場し、観客へ手を振ったりハイタッチをしながら「誰も彼も何処も何も知らない」を歌唱する。ステージへと戻ると、記念写真だけでなく、風に揺れるてるてる坊主の動きを観客が模して「てるてる坊主」のSNS用の動画を撮影した。観客を自身のコンテンツにまで巻き込むという距離の近さも、彼らがファンから深く愛される理由のひとつだろう。
そしてりみーが「うちら背中合わせで座って動画撮って、YouTubeに動画上げてるやん。ここにみくす(とくみくす)も座って、動画撮れへん?」と提案する。そしてASOBI同盟結成のきっかけともなったSEVENTHLINKSの「p.h.」のカバーを披露した。動画がそのままステージに現れたような構図と息の合ったふたりの迫真のボーカルは、現実と映像、過去と現在を交錯させ、その立体性が心地のいい不可思議さを生んでいた。
本編で披露した「王様だーれだっ」をアコースティックバージョンで届けた後、りみーは「大事なライブの日に大雨を降らせちゃったり、ミュージックビデオの撮影中にギターが壊れちゃったり、急に声が出えへんくなったりとか、全然うまくいくことばっかりじゃないけど、そんな困難もみんなと一緒に楽しみながら乗り越えていけたらいいなと思っています」と告げ、ふたりで深々と頭を下げて感謝をあらわにする。そして「来年の結成5周年に向けてふたりで一歩ずつ頑張っていきます」と高らかに宣言し、最後に「キミと私の5年後の話」を優しく丁寧に歌い上げた。観客がシンガロングすると、りみーはその様子に感極まって声を詰まらせる。それをカバーしようととくみくすがりみーのぶんまで声を張り上げて熱のこもった歌を響かせるシーンも、観客の心を射止めた。
ふたりがステージから去り、エンディングムービーが流れてASOBI同盟の初のホールワンマンは幕を閉じた。終演後はメンバーが観客一人ひとりのお見送りをし、会場を出る瞬間までASOBI同盟のアットホームなエンターテインメントを体感できる空間となった。これだけふたりが様々な趣向を凝らしたライブや動画を展開するのも、すべてはリスナーに喜んでもらいたい、リスナーに新鮮な驚きを与えたいからだろう。笑顔の絶えない、多彩なギミックがたっぷりと詰め込まれたプレミアムなワンマンライブだった。
SET LIST
01. 私が絶妙にブスなだけ
02. 王様だーれだっ
03. だるまさんが転んだ
04. あのね、
05. 地球滅亡
06. メドレー(弾き語り)
07. 僕はストーカーです
〜リクエストコーナー〜
08. 結婚行進曲
09. バッドバースデー
10. 夜桜#1
11. 思い出メモリー
12. てるてる坊主
ENCORE
01. 誰も彼も何処も何も知らない
02. p.h.(SEVENTHLINKカバー)
03. 王様だーれだっ(Acoustic Ver)
04. キミと私の5年後の話
















