
吉田沙良(Vo)と角田隆太(Ba)によるポップス・ユニット、モノンクルが5thアルバム『僕ら行き止まりで笑いあいたい』をリリースする。
2023年に吉田の産休のためにインターバルを取り、約7年ぶりのフルアルバムとなる本作には、先行配信された「HOTPOT」、「GINGUA」、「二人芝居 feat.Daichi Yamamoto」、「奇跡。」を含む10曲を収録。ジャズ、ソウル、エレクトロなど多彩なエッセンスを反映させながら、自らの音楽性を更新する充実作に仕上がっている。
12月5日には代官山UNITでアルバムリリースライブも決定。吉田、角田に、本作の制作プロセス、ライブに対するスタンスなどについて語ってもらった。
2023年に吉田の産休のためにインターバルを取り、約7年ぶりのフルアルバムとなる本作には、先行配信された「HOTPOT」、「GINGUA」、「二人芝居 feat.Daichi Yamamoto」、「奇跡。」を含む10曲を収録。ジャズ、ソウル、エレクトロなど多彩なエッセンスを反映させながら、自らの音楽性を更新する充実作に仕上がっている。
12月5日には代官山UNITでアルバムリリースライブも決定。吉田、角田に、本作の制作プロセス、ライブに対するスタンスなどについて語ってもらった。
── 7年ぶりとなるオリジナルアルバム『僕ら行き止まりで笑いあいたい』が完成しました。“ものんくる”から“モノンクル”への表記の変更、沙良さんの産休などを経てたどり着いた作品ですが、お二人はどんな思いがありますか?
吉田沙良ファンの皆さんに向けて、毎年のように「アルバム作ってます!」「年末ぐらいに出したいです」みたいなことをずっと言ってたんですよ。それがようやく叶って、「やっと出せる」という喜びと「お待たせしましてごめんなさい」という気持ちが両方ありますね。
角田隆太活動的にも紆余曲折があって。順風満帆とは言えなかったかもしれないし、7年もお待たせしてしまったけど、その時間がなかったら今回のアルバムは成立しなかったんじゃないかなと。タイトルに“行き止まり”というネガティブっぽい言葉が入ってますけど、行き止まりに来たからこそ完成したというか。
吉田そうだね。
角田行き止まりが異次元へのポータルになってるって、SFではよくあるんですよ。何かを超えるための場所、普段はつながれないところへ行くための場所みたいな認識もあって。そこで“笑いあいたい”というポジティブなワードを加えることで、ただのデッドエンドではなく、切り替えていこうという意味合いもちょっと込めています。
──とてもいいタイトルだと思います。今の世界も完全に“行き止まり”だし、そこでいがみ合っている状態が続いていて。『僕ら行き止まりで笑いあいたい』にはリアルな現状認識と希望的なビジョンが両方あるというか。
角田ありがとうございます。このタイトルは「奇跡。」の歌詞のワンフレーズなんですよ。この曲のテーマもそうですけど、みんなフィルターバブルのなかでお互いを見ているし、壊れたレンズ越しにしか相手と話せないというか。ただ「人間ってそういうもんじゃないかな」という感じもあるんですよ。SNSなどで可視化されただけで、もともとそういう存在というか。そのなかでも繋がれる瞬間があるはずだし、そういう瞬間を大事にすることを生きていくしかないよねって。それはアルバム全体の雰囲気にも繋がっていると思います。
──この7年間のなかには、沙良さんの産休もありました。家族が増えたことで、価値観も変わったのでは?
吉田尖り方が変わりましたね。3〜4年前はもっとツンケンしていたというか、世の中に舐められないように生きなきゃという気持ちが強かったんです。その後、子どもが生まれて、1回リセットされて。自分のことだけじゃなくなって、半分以上、子どものことを考えなくちゃいけない生活になって、ツンケンする暇がなくなったというか(笑)。
角田制作に対する影響も、ある程度あるかもしれないですね。沙良は「ツンケンする暇がなくなった」と言いましたけど、武装する気が起きなくなったというか。曲にしても、あれこれ武装しないで、そのまま出すようなイメージですね。以前よりもストレートだし、素直にやってる感じがあります。
── では、収録曲について。先行配信された「GINGUA」「HOTPOT」はダンスチューンですが、ここがアルバムの起点ですか?
角田どうだろう? 「HOTPOT」はだいぶ前からあって、2022年のサマーソニックに出る前に、インスタライブでコミュニケーションを取りながら「盛り上がる曲を作ろう」みたいな感じで制作したんですよ。
吉田3年前ですね。モノンクルとしては軽めのメッセージというか、「表面的に楽しいことを言ってる」みたいな曲で。ずっとマジメにいたら疲れちゃうし、そういう感じの曲が作れるようになったのは、ちょっと大人になったのかなと。
──確かにそうかも。“遊べる”って大人の余裕がないとできないので。
角田そうですね。8曲目の「Ü?」、10曲目の「プレピローグ」も遊びが入っているんですよ。
──「Ü?」はトイピアノの音を使ってますね。
吉田娘の初演奏です(笑)。(トイピアノの)フタを開けて、きれいな旋律を弾いて、フタを閉じたんですよ。たまたま動画を録ってたんですけど、「天才か!」ってなって(笑)。
角田そのフレーズをサンプリングして。
吉田コードを付けて、メロディとコーラスを書いて。親ばかソングです(笑)。
──「奇跡。」にも小さな子どもの声が入ってますが、あれも……。
角田そうです(笑)。歌声をiPhoneで録音して。
──ドキュメント感がありますね。
角田そう、リアリティがあるというか。子育てしながらの制作だったので、家のなかで完結させるというか、DAW中心だったんですよ。風を吹かせたいときにミュージシャンを呼ぶという感じだったんですけど、制作方法はかなり変わりました。
吉田「プレピローグ」はラジカセで録ってるんですよ。ミックスとかもしないで、そのまま音源にしてます。
角田カセットテープのローファイ感、歪み感がすごくいい感じで。
──セッション中の二人の会話もそのまま入っていて。
吉田そうそう、めっちゃリアルですよね(笑)。
角田録音に対する概念がもっと自由になったかもしれないですね。
──以前のインタビューで角田さんは、「どの曲にも新しい音、聴いたことのない何かを入れたい」という趣旨の話をしていて。そういうスタンスも続いてますか?
角田あ、そうですね。DAW中心の制作って、テンプレートの音を並べがちになるんですけど、毎回できるだけ違う作り方をしたくて。まっさらな状態から始めるようにしているし、それがモチベーションにもなっています。テンプレを使ったほうが効率はいいけど、モノンクルはもっと自由でいたいので。
── 外部のアーティストをフィーチャーした2曲「二人芝居 feat. Daichi Yamamoto」「Who am I feat.AAAMYYY」もモノンクルにとっては新しいトライですよね。
吉田そうですね。二人とも以前から交流があって。Daichiくんは、彼の曲(『Pray feat.吉田沙良(モノンクル)』)に参加していたことがあるんですよ。AAAMYYYは象眠舎(小西遼のソロプロジェクト)で仲良くなって。もともと彼女の歌が大好きだったんですけど、「Who am I」の骨組みが出来たときに、「AAAMYYYの声がほしい!」というイメージがパキッと出てきちゃって。すぐオファーしたら、「やる〜」って言ってくれました。
角田メロディもやり取りしながら作ったんですよ。
吉田自分たちでは思いつかないメロディを入れてくれて、それがすごくいい風になって。AAAMYYYの家で録れたのもよかったです。
角田 「二人芝居」でいえば、Daichiくんが書いてくれた歌詞がすごくよくて。大事なテーマとして“死”があると思うんですけど、最近の作品ではあまり取り扱ってなかったし、曲に深みを与えてくれました。
── これまでは吉田さん、角田さんが二人でモノンクルの世界を作っていた印象があったので、こういう曲はすごく新鮮です。
角田時代的にもコライトが主流になってますからね。以前は「個人のなかで研ぎ澄ませる」という感じのアーティストが多かった気がしますけど、今はお互いにシェアししつ、どんどん高めていく傾向があって。そういうマインドには、僕らも影響を受けていると思います。僕はAbleton(楽曲制作ソフト)を楽器みたいに使ってるんですけど、インスタに映像をアップすると、海外からめっちゃコメントが来るんですよ。
吉田フランクにね。すぐ「曲を作ろう」って(笑)。
── 1曲目の「青天白日」も素晴らしいです。エレクトロと生楽器のバランス、歌詞のメッセージ性を含めて、アルバムを象徴する曲の一つなのかなと。
角田ありがとうございます。「青天白日」は今年の頭くらいにデモを作って、ライブでもやってたんですよ。そのときは「普通の曲だよね」という感じだったんですけど、アルバムのために大きくアレンジを変えて。最初はもうちょっとロックっぽかったんですけど、エレクトロの感じを入れて、最終的に生のストリングスも録って。有機的な要素を入れることで完成した感じもありますね。
吉田歌詞は“青春”“学生”という感じですね。高校生の頃の、伝えられないけど伝えられない恋心というか。
角田思いを伝えらないって、すごく行き止まり感があるじゃないですか。それを伝えることで関係が崩壊するかもしれないし、乗り越えたときは世界がめちゃくちゃ広がって。「いちばん最初にぶち当たる行き止まり」を表現した曲でもあるし、アルバムの1曲目にふさわしいのかなと。
── なるほど。2曲目の「Interstellar」はいつ頃の曲なんですか?
角田沙良が妊娠して、1回活動がストップして。そのときにインスタで自分の演奏動画を上げてたんですけど、そのなかの一つが「Interstellar」のもとになってます。なので最初はインストだったんですよ。
吉田「この曲、めっちゃ面白い」と思って、メロディと歌詞を付けてもらいました。
角田フリージャズっぽいところもあって、そこで扉が開いて、中に入ったらサイバースペースがあって。宇宙感もあるし、面白い曲になったと思います。沙良が英語で歌ってるんですけど、モノンクルとしてはあまりなかったよね?
吉田そうだね。他の現場ではけっこう歌ってるんですけど、モノンクルで英語の歌詞を歌うのは新鮮でした。
角田ラップもあるし、今まで聴いたことがないモノンクルが詰まっているというか。
吉田別次元のモノンクルだね。
── 新しさと“らしさ”が共存しているアルバムですよね。この後の活動のビジョンは?
吉田どんどん動いていきたいですね。来年以降も曲を作りたいし、みんなに早くいろんな作品を届けたくて。
角田7年ぶりのアルバムというと集大成的に感じられるかもしれないけど、自分たちとしては始まりの1枚だと思っていて。次につなげていきたいし、今もそういうスタンスで動いてます。これまでの経験も活かされていると思いますね。技術と経験によって、今まで見えてなかったものも実感できるようになって。ルーツを忘れず、新しいこともいい感じで取り入れていけたらなと。
吉田二人とも生の音楽、人間が奏でる音が好きなんですよね、結局。
角田それが自然だしね。
吉田人と何かを作ることも続けていたいし、それがいちばん楽しくて。そこは2人とも共通していると思います。
── 12/5に代官山UNITで開催されるアルバムリリースライブも楽しみです。
吉田私たちも楽しみです。アルバムの曲をしっかりお届けしたいですね。
角田これから準備するので、どうなるかわからないですけどね(笑)。
吉田音源と違う部分もあるだろうし、音源と同じところも楽しみにしてほしくて。絶対に再現不可能な、その日限りのものですからね、ライブは。
角田収まりきらないのがライブの良さだと思っていて。どうしても飛び抜けちゃうところがあるはずなので、それを体感してもらえたらうれしいです。
PRESENT
直筆サイン色紙を1名様に
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