Ooochie Koochie、全国ツアー東京公演2daysで魅せた、ロックの楽しさ。重なる声、重なる音、2つの燃えたぎる情熱が人々の魂を鼓舞

ライブレポート | 2025.09.30 18:00

Photo by 岸田哲平

Ooochie Koochie TOUR
2025年9月11日(木)12日(金)日本武道館

「還暦ということで面白いコンビができました」(Ooochie)と「60歳ということで甘えてやらせていただきました」(Koochie)という2人の発言が印象的だった。異なる個性を持った両雄が並び立つ様子は壮観だった。「混ぜるな危険」という言葉があるが、異質な要素を混ぜることによって、とてつもない化学変化が起こり得るのが、音楽の素晴らしいところである。そうした音楽のミラクルな融合を存分に堪能できたのが、2025年9月11日と12日に開催された『Ooochie Koochie TOUR』の日本武道館2days公演だ。

彼らの初ツアー、そして東京での初コンサートであり、両日ともに超満員の9000人、のべ18000人を動員した貴重なステージとなった。Ooochie Koochieは、1965年生まれ、広島県出身の奥田民生と吉川晃司が結成したユニットである。ちなみにOoochieは奥田、Koochieは吉川だ。高校時代からバンド活動を通じて接点のあった2人が、還暦を迎えるタイミングで、『広島への恩返し』と『裸に帰る』という趣旨のもと、2025年2月に本格的に始動し、6月25日にアルバム『Ooochie Koochie』を発表。全国ツアーは、7月12日の広島グリーンアリーナからスタートし、大阪、福岡、札幌、仙台、名古屋と巡り、一区切りとなる武道館公演2daysを迎えた。

始まりの合図はアルバム『Ooochie Koochie』収録曲「OK」の音源のイントロ部分だった。<えーよ、OKよ>という雄叫びのようなフレーズが鳴り響くと、客席からハンドクラップが起こり、Ooochie Koochieの2人が登場すると、どよめきと歓声と拍手が起こった。Ooochieは赤いスパンコールのジャケットとパンツ、Koochieは素肌にゴールドのロングコートとパンツをまとい、照明に反射して、ギラギラした光を放っている。こんなド派手な還暦はそうはいない。

Ooochie:奥田民生 Photo by 岸田哲平

Koochie:吉川晃司 Photo by 岸田哲平

2人の背後にある巨大なOKのロゴマークの電飾風の照明が赤く輝き、真っ赤な照明の光が会場内を照らしている。還暦の“赤”ではなく、燃えたぎる情熱を象徴する“赤”。その光を浴びながら始まったのは、彼らのテーマ曲とも言える「おちこち」だ。鍛え上げた2人の声が重なった瞬間に、圧倒的なパワーに激しく揺さぶられた。なんと強靭な歌と演奏なのか。<俺達は今 裸に帰るんだ>という歌詞は、彼らの決意表明のように響いてきた。バンドの演奏もヘヴィかつソリッドで、コーラス陣の歌声もパワフルかつソウルフル。バンドのメンバーは、ホッピー神山(Key)、湊雅史(Dr)、斎藤有太(Key)、大神田智彦(Ba)、Chloe Kibble(Cho)、mimiko(Cho)という6人が集結した。

ギターサウンドが全開となった「Do The Shuffle」では、水と油のような2つの異なる個性のボーカルとフェイクの応酬、ギターバトルなどのせめぎあいを堪能した。会場内の全員にエールを送る歌として響いてきたのは、「Three Arrows」だ。この曲の後半で、<広島!サンフレッチェ!>というかけ声を<日本!武道館!>と替えて歌うシーンもあった。広島で発生した熱きムーブメントは、全国各地へ、そして武道館へと広がっていた。

「ごきげんよう。Ooochie Koochieへようこそ。大晦日に広島で最後のお祭りはありますが、今日はファイナル的な要素もあります。いかがですか?Ooochie」とKoochieが呼びかけると、「Ooochieです。Koochie!」と互いを紹介しあう場面もあった。「Koochieは最初、『Koochie』と呼ばれるのを嫌がっていましたが、今や、『Koochieと呼んでくれ』と言うようになりましたね」とOoochie。以上は2日目のMCだが、雨が降った初日は、こんな会話が繰り広げられた。「激しい雨の中、そして満員御礼ありがとうございます」とKoochieが挨拶すると、「激しい雨に撃たれて眠りたいぜ、ベイベー」とOoochieが、吉川作品の歌詞をもじって発言。さらに、「Koochieは水に強いから、雨の日はうれしいんじゃろ?」と話すと、会場が笑いに包まれた。気迫あふれる演奏と、緩くて和やかな広島弁でのMCのギャップの大きさも、Ooochie Koochieのライブの大きな魅力だ。高校時代からの付き合いだからこそ生まれる、気心の知れた会話が楽しい。

このコンサートの軸となっているのは、アルバム『Ooochie Koochie』収録曲だ。彼らのデビュー曲でもある「GOLD」では、巨大なミラーボール1つと通常の大きさのミラーボール6つの光の中での演奏となった。Ooochieがハンドマイクを持ち、ダンスしながら歌い、Koochieが軽快なギターソロやカッティングを披露した。会場中がハンドクラップしながら踊り、武道館がディスコのダンスフロアへと化していった。Ooochieの突き抜けるような伸びやかな歌声に、Koochieの深みのある低音のコーラスが見事にマッチしていた。それぞれの音域の違いが、コーラスワークを立体的にしていたのだ。

冒頭の3曲は2人がともにギターを弾きながら歌っていたのだが、中盤の曲は、一方がリードボーカル、もう一方がギターとコーラスを担当する構成になっていた。「全曲がサプライズ」と形容したくなったのは、Ooochie Koochieの2人がそれぞれ、還暦にして初となる挑戦に取り組んでいたからだ。Ooochieがダンスしまくる、Koochieがギターを弾きまくる、互いにコーラスを務める、漫才コンビのボケとツッコミのようなMCを展開するなど。それぞれのファンにとっても、めったに目撃できないシーンが連続する貴重なステージとなったに違いない。Koochieがボーカルを取った「片恋ハニー」は、今の年齢だからこその色気とせつなさの漂う歌声が染みてきた。Koochieが高速でステップを踏むと、大歓声と拍手が起こった。

Ooochie Koochieの音楽の柱のひとつがディスコミュージックということもあり、ダンスミュージックの名曲のカバーも演奏された。ABBAの「Dancing Queen」では、Ooochieが伸びやかなハイトーンボイスと華麗なステップを披露。2コーラス目ではChloeとmimikoがステージの前列に出てきて、ダイナミックな歌声を披露して盛大な拍手を浴びた。Koochieのボーカルでのデヴィッド・ボウイの「Let's Dance」は、Ooochie KoochieとChloeとmimikoによる4声のコーラスでの始まりとなった。Koochieのエモーショナルな歌声はもちろんのこと、デヴィッド・ボウイを彷彿とさせるスタイリッシュなパフォーマンスも見事だ。間奏では、Koochieがギタースタンドに設置したフライングVを弾く場面もあった。さらにエンディングでは、Ooochieが自らのギターを肩からぶらさげたまま、そのスタンドのギターでブルージーなフレーズを演奏するトリッキーなエンディングに観客が沸いた。それぞれ豊富な音楽のキャリアを積んできたからこその魅力たっぷりのカバーとなった。カバーと同様に、オリジナル曲も今回のツアーがライブ初披露となるため、すべてが新鮮だ。テレビ番組『帰れマンデー見っけ隊!!』のテーマソングである「マンデー」では、Koochieの広がりのあるノスタルジックな歌声が会場中に染み渡った。

Photo by 三浦憲治

大きな見どころとなったのは互いの曲を交換して歌うコーナーだ。これは双方のファンにとっても嬉しい企画だろう。吉川の初期の代表曲のひとつ、「LA VIE EN ROSE」のイントロが演奏されてOoochieが歌い出した瞬間に、ウオーッという声とともに、たくさんのこぶしが上がった。Ooochieがハンドマイクを持ち、上手へ下手へと自在に移動して腰を振りながら歌っている。Koochieがハモり、ギターを弾いている。フィニッシュの瞬間、Ooochieがエアギターならぬ、エアシンバルキックをすると、盛大な拍手と笑いとが起こった。

続いて、UNICORNの初期の代表曲「Maybe Blue」をKoochieが歌い始めると、この曲をやってくれるのかという驚きと歓喜の声が上がった。憂いを帯びたKoochieの歌声が曲の世界観に見事にマッチしている。Ooochieの描く薔薇色の風景、Koochieの描く青色の風景、どちらもとてもみずみずしい。還暦になった今、それぞれの若かりし日の作品をこんなにも魅力的に描写できるのは、2人ともに豊かな表現力を備えた歌い手だからだろう。

楽しい空気から凜とした空気へと会場内の雰囲気が一変したのは「リトルボーイズ」だ。ともにギターを弾きながらの歌となった。歳を重ねて、深い説得力を獲得してきた2人の歌声によって、子を思う母親の気持ちのかけがえのなさや平和への祈りが真っ直ぐ届いてきて、胸を揺さぶられた。続いての2曲は、再びそれぞれの曲の歌い合いとなった。「ギムレットには早すぎる」では、スウィングするリズムに乗って、Ooochieが躍動感あふれるボーカルと軽快なステップを披露。「御免ライダー」では、Koochieが疾走感と推進力を備えたボーカルで客席を魅了した。

「今回のツアーで、足に筋肉が付いたわ」とOoochie。「自分の世界に帰っても、踊ればいいんじゃないか」とKoochie。爆笑のMCを挟んで、後半はさらに白熱のステージを展開した。歌詞が広島弁で書かれたヘヴィなロックナンバー「ショーラー」では、裸に帰った2人が初期衝動を全開にしてシャウトし、ギターをかきむしった。ゴツゴツとした広島弁がハードでタイトなロックによく似合っている。Ooochie Koochieの奏でるロックには、「屈強」「頑丈」といった言葉がぴったりだ。間奏では2人のギターバトルもあり。観客もハンドクラップで参加。

ユニット名のヒントになったリック・デリンジャーの「Rock and Roll, Hoochie Koo」の日本語カバーをしているKODOMO BANDのカバーも演奏された。KODOMO BANDはOoochieが学生の頃にコピーしていたバンドで、KODOMO BANDのうじきつよしは、Koochieの1985年のツアーを支えたギタリストだ。縁もゆかりもあるカバーを2人が楽しそうに演奏して、会場内に熱気が渦巻いた。「GIBSON MAN」でギターを弾きまくる2人がティーンエージャーのギターキッズのように見える瞬間があった。この曲の歌詞のように、ギターをギャンギャンかき鳴らす2人が、観客の魂を踊らせていた。

本編最後の「OK」では、まるでヒーロー映画の大団円のような胸のすく展開となった。赤いフラッグがたなびき、観客も一丸となって雄叫びを上げ、シンガロングで参加した。渾身の歌とコーラスと演奏が会場内のすべての人の血をたぎらせていく。一体感というよりも“連帯感”と呼びたくなるような熱気が会場を満たした。ロックの楽しさとは、胸に熱き炎を灯してくれるところにある。そんな魅力がたっぷり詰まったエンディングとなった。本編が終わって、メンバーが退場すると、アンコールを求める拍手とともに、客席でウエイブが起こった。

Photo by 三浦憲治

12月31日に追加公演となる広島グリーンアリーナでのライブが残っているものの、この2daysで一区切りということもあり、アンコールで再登場した2人は、どこか名残惜しげだった。「Ooochieと呼ばれることも当分、ないと思うね」とOoochie。「お互いにね」とKoochieが返すと、「でも俺は街で見かけたら、『Koochie』って呼ぶよ」とOoochieが答えた。「俺も寂しくなったら、『おい、Ooochie』って電話しようかな」とKoochie。「60歳になったから、(ユニットを)組むことができたんだよね。みなさんも60歳になったら、そのへんの誰かとコンビでも組んでください」とOoochieが発言すると、笑いが起こった。

アンコールでも互いの曲を交換して歌う展開となり、まずKoochieのボーカルをフィーチャーした「さすらい」が演奏された。<この世界中を ころがり続けてうたうよ>という歌詞は、Koochieにもぴったりだ。Koochieのスケールが大きくて伸びやかな歌声が会場内に響き渡った。曲の終わりは、2人のギターのアンサンブルでの締めだ。

ラストの曲、「Juicy Jungle」のイントロが流れると、ハンドクラップが起こり、「東京!」とOoochieがシャウトすると、熱烈な歓声が起こった。Ooochieがこの曲の歌詞にあるように、アナコンダを首に巻くポーズやフラミンゴのポーズを取りながら、しなやかな歌声を披露した。さらに、ギターを演奏しているKoochieの背後に立って、彼の頭に触れながらアナコンダを巻くポーズを取る場面もあった。2人の厚き友情は、こんな瞬間からも感じ取れる。ここでも、Ooochieのエアシンバルキックでのフィニッシュとなった。「ありがとう!」とOoochieが言い、さらにKoochieにハンドマイクを向けると、Koochieも「ありがとう!」と挨拶。

認め合い、リスペクトし合い、切磋琢磨し合っている者同士が奏でるからこそ、人々を鼓舞する音楽を届けられるのだろう。『広島への恩返し』から始まった彼らの旅は、『全国各地の人々への恩返し』へと広がっていた。歌、コーラス、演奏、パフォーマンス、そしてMC。すべてがあまりにも楽しすぎて、最後は少し寂しくなった。こんなにも魅力的な還暦も存在するんだな、年を重ねることの良さも大いにあるのだなと再確認した。Ooochie Koochieの活動に関しては、年末の広島公演以降のことは一切不明だ。還暦の次は古希のタイミングになるのだろうか。いや、機会があるならば、もっと早く「Ooochie!」と「Koochie!」と呼び合う2人の姿を目撃したい。

SET LIST

01.おちこち
02.Do The Shuffle
03.Three Arrows
04.GOLD
05.片恋ハニー
06.Dancing Queen
07.Let's Dance
08.マンデー
09.LA VIE EN ROSE
10.Maybe Blue
11.リトルボーイズ
12.ギムレットには早すぎる
13.御免ライダー
14.ショーラー
15.Rock'n Roll Hoochie Koo
16.GIBSON MAN
17.OK

ENCORE
18.さすらい
19.Juicy Jungle

【2カ月連続!奥田民生×吉川晃司 Ooochie Koochie WOWOW Special】

WOWOWで2025年11月に「Ooochie Koochie TOUR」から日本武道館ライブの模様が独占放送・配信されることが決定。さらに前月の10月にはツアーの舞台裏に密着したドキュメンタリー番組や2021年にスタジオライブで共演したWOWOW番組も放送・配信される。

⚫︎番組タイトル:INVITATION/吉川晃司 ※コラボゲストに奥田民生が登場した2021年制作番組
オンエア日時:2025年10月25日(土) 午後6:00~

⚫︎番組タイトル:Ooochie Koochie ドキュメンタリー 奥田民生 × 吉川晃司 ~奇跡のユニット舞台裏~
オンエア日時:2025年10月25日(土) 午後7:30~

⚫︎番組タイトル:Ooochie Koochie TOUR at 日本武道館
オンエア月:2025年11月放送・配信 ※日時など詳細は追って発表

詳細はWOWOW公式サイトをご確認ください。

奥田民生 INFO

■奥田民生「MTRYツアー2026“春 Ooh La La”」
2026年1月11日(日)千葉・市原市市民会館
2026年1月18日(日)埼玉・さいたま市文化センター 大ホール
2026年1月23日(金)滋賀・滋賀県立文化産業交流会館
2026年1月31日(土)福岡・福岡市民ホール 大ホール
2026年2月1日(日)熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール
2026年2月7日(土)神奈川・相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)
2026年2月11日(水祝)新潟・新潟テルサ
2026年2月14日(土)北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
2026年2月20日(金)岡山・倉敷市民会館
2026年2月22日(日)京都・ロームシアター京都 メインホール 
2026年2月28日(土)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2026年3月7日(土)宮城・仙台サンプラザホール
2026年3月14日(土)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
2026年3月15日(日)広島・上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
2026年3月20日(金祝)石川・本多の森 北電ホール
2026年3月22日(日)大阪・梅⽥芸術劇場メインホール
2026年3月28日(土)東京・昭和女子大学 人見記念講堂
2026年3月29日(日)東京・昭和女子大学 人見記念講堂

 

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受付期間:受付中~9月30日(火)23:59
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吉川晃司 INFO

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  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 岸田哲平

    撮影

    岸田哲平

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    三浦憲治

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