25th ANNIVERSARY「QUARTER CENTURY」 QUATTRO GALAXY TOUR
〜STAR TRAINに想いをのせて〜
2024年12月27日(金)渋谷CLUB QUATTRO
この日のライヴは、2024年の最後を飾った『QUATTRO GALAXY TOUR~STAR TRAINに想いをのせて~』のファイナル。地球防衛軍のDAISHIとAYA、それぞれ異なる星からやってきた宇宙人のLida、seek、YURAサマの5人は、「アクリエ」(『シラサギROCK FES』会場と同名)なる漆黒の隕石から地球を守るために奮闘中だ。
ピアノの静かな音色で始まったSEはドラマチックに展開し、これまでのいきさつを語るDAISHIのナレーションが重なる。機関車が走り出す音とともに、STAR TRAINの発車を告げるアナウンスが響いた。音楽だけではなく、物語の世界を楽しませてくれるのが彼らの大きな魅力のひとつだろう。会場にいる人たちをSTAR TRAINに乗せて、宇宙への旅が始まった。
汽笛の音から始まったのは、「STAR TRAIN」。ド派手な見た目からは意外なくらい、Psycho le Cémuには良質なメロディとキャッチーな歌がある。伸びやかなサビのメロディに合わせて、元気いっぱいにジャンプ! 体が揺れるのに合わせて心まで躍るようだ。そのまま「あきらめないDAYS」、さらに「命のファンファーレ」と、耳になじむメロディに載せて前向きで明るいメッセージを届ける曲が続く。会場はすでに多幸感でいっぱい。
そんな空気を、「全員でかかって来い!」という、seekの猛々しい声が黒く塗り潰していく。始まったのは、「Revenger-暗闇の復讐者-」。ここからは、いわゆるヴィジュアル系バンド(その枠だけには収まらないのだけれど)でもある彼らの、ライヴバンドとしての魅力が炸裂。激しいヘドバンをはじめ、荒々しいノリが広がり、会場全体が熱を帯びていく。
このまま激しく突き進んでいくはずが、トラブル発生。すぐには復旧できなかった様子で、seekが急遽MCを始めた。ストーリーに登場する銀狼を演じる(?)ハスキー犬のぬいぐるみと戯れるなど、顔を銀色に塗ったヴィジュアルとは裏腹にあざと可愛い一面を出しまくる。姫路という関西の生まれのせいか、MCで爆笑をかっさらうことも珍しくない彼ら。それは、仲良しの5人でステージに立つことが楽しくてたまらない、そんな気持ちの現れでもあるだろう。
アドリブでも十分に会場を沸かせ、再び演奏へ。ラテン調の「VISITOR」で音楽的な幅の広さをのぞかせると(特に、アコギを彷彿とさせるLidaのギターソロには耳を奪われた)、ここからは宇宙を旅するストーリーがお芝居で進行する。5人+銀狼1匹が宇宙のど真ん中までやって来ていることが明らかになったところで、ライヴは中盤戦。ここは、芸達者な5人の見せ所。演技に加えて、楽器を持たずにダンスするという、彼らお得意かつおなじみの飛び道具を発動すると、さらにYURAサマが「JUNGLE×JUNGLE」で華麗に踊り、「AREA」ではその美声を披露する。そしておなじみ「オッハー!」の挨拶からAYAがキュートな魅力を振りまき、続く「You&Me」ではポンポンを持ってダンス! 次から次へと見どころたっぷりだ。
「MOON PRISONR」から再び会場に熱い火を放つように激しくファンを煽り、「ノスフェラトゥ」と、ハードなナンバーを連続して投下していく。ストレス発散とばかりにライヴで激しく暴れるのを楽しむ音楽ファンにとっても、Psycho le Cémuのライヴは十分満足できるはず。さらにこのときは、楽曲が表現する荒々しさに加え、DAISHIの真剣な鋭い眼差しやシリアスな表情が印象的で、熱気が充満する中にも冷たさが感じられ、ゾクゾクするほどだった。
ライヴが終盤を迎えるとともに、ストーリーもクライマックス。銀狼が命と引き換えに漆黒を抑え込んだおかげで、5人はアクリエにたどり着いた。思いがけない別れの悲しみを「哀の雨」に載せて届けるように、物語の展開に沿ってライヴを展開。これまで以上にお芝居とライヴが融合したステージで、彼らならではのエンターテインメントを見せてくれた。本編最後を飾った名曲「REMEMBRANCE」では、感極まったかのようにも見えたDAISHI。思いのこもった特別な演奏に感情を揺さぶられ、喜怒哀楽のすべてを満喫できるライヴとなった。
大満足の本編に続いて、さらにアンコールの最後には、新曲「シラサギ」のライヴ初披露というプレゼントが飛び出す。姫路城の別名である白鷺城から取られたこの曲は、『シラサギROCK FES』のテーマ曲。そして大空を飛ぶシラサギは、夢を追って故郷を離れた自分たち自身を表してもいる。Psycho le Cémuとして夢をかなえるために姫路を離れ、すでに姫路で育った歳月よりも長い時間が過ぎ去っているかもしれない。それでも、彼らがいま、姫路を思う気持ちは熱い。
『シラサギROCK FES』には、Psycho le Cémuを筆頭に、さまざまな魅力を持ったバンドが集まる。最近では、各地でさまざまなフェスが開催され、全国からたくさんの観客が足を運んでいる。そんなフェスのひとつになるであろう『シラサギROCK FES』の記念すべき第一回を、ぜひとも目撃し、彼らの故郷でPsycho le Cémuのライヴをおおいに楽しみたいものだ。