ヰ世界情緒 、初の現地ワンマン、情感豊かなステージで観測者を魅了!創作者として新たな1歩を踏み出す

ライブレポート | 2024.08.14 18:00

KAMITSUBAKI WARS 2024 神椿横浜戦線 IN パシフィコ横浜
[DAY-1]ヰ世界情緒 3rd ONE-MAN LIVE「Anima III」
2024年8月7日(水)パシフィコ横浜 国立大ホール

KAMITSUBAKI STUDIOによる2024年の現地ライブイベント第2弾「KAMITSUBAKI WARS 2024」。その初日として「ヰ世界情緒 3rd ONE-MAN LIVE「Anima Ⅲ」」が開催された。ヰ世界情緒のワンマンとしては初の現地開催。会場には多くの観客が詰めかけ、彼女の5年弱にわたる活動の集大成を見届けた。

ヰ世界情緒の声を元に生まれた音楽的同位体・星界が開演前の影アナを務めると、オープニング映像、バンドとストリングス隊によるシリアスかつ情感豊かなインスト演奏を経て、ネモフィラを模した衣装のヰ世界情緒が下段ステージに登場。「描き続けた君へ」で幕を切って落とす。ライブタイトルの元となる「アニマ」という言葉を歌詞に含む楽曲で、この日に懸ける意気込みを歌はもとより一挙手一投足で表現する姿は、瓦礫に咲く花のようにたくましく美しい。その後も「ディメンション」「暮れなずむ約束」「システムズコア」と勢いのあるパフォーマンスで空間を掌握した。

初の現地ワンマンが開催される喜びをあらわにすると、その後も歌謡曲風のメロディがクールな「そして白に還る」、あどけなさと憂いを感じさせるワルツ「ラピスのお人形」、ラップも耳を引く「グレイスケイル」、陰と陽を併せ持つ「物語りのワルツ」と多種多様のミステリアスな楽曲を届ける。楽曲それぞれの主人公の感情を表現するのに最も適したボーカルアプローチを選択する彼女は、観客たちを物語の奥深くへと引き込んだ。

「ここからさらに編成を変えてお届けします」と告げると、上段ステージがキャバレーのような真っ赤でゴージャスな空間に様変わりし、ヰ世界情緒も黒いドレスに身を包む。演奏陣にもトランペットとサックスが加わり、ふくよかなジャズサウンドの「此処に棘と死を」でマイクスタンドを用いた艶やかなダンスパフォーマンスを見せた。「いろはに咲きて」の後に披露された「ヰ世界の宝石譚」は大胆なライブアレンジも相まって、生演奏ならではの躍動感が生まれる。月や星空、彗星をバックにして歌唱した「シリウスの心臓」は、言葉を一つひとつ大事に愛でるような声が穏やかで切なく、壮大な演奏も彼女が歌に込めた真摯な思いをより純度高く彩った。

白と黄色を基調にした“変異体・マーガレットソル”に衣装チェンジすると、ヰ世界情緒はVALISの5人と共にステージに現れ、6人で「異世界転調リクヱスト」と「ぼくらの逃避行」をメドレーでパフォーマンスする。両者は過去にもライブ共演でフォーメーションダンスを披露しており、ヰ世界情緒の溌溂とした身のこなしからもさらにチームワークを強めていることがうかがえた。VALISが去った後はさらにゲストとしてAiobahnがDJとして登場し、ヰ世界情緒をフィーチャリングした楽曲「new world」をライブ初披露する。電子音ならではの透明感と鋭さ、ヰ世界情緒の息遣いが生きたボーカルが会場の隅々にまで広がり、ラストのファルセットのロングトーンに観客も恍惚とした。その後は黒を基調にした“変異体・マーガレットルナ”にチェンジし、「Capullo」「アンビバレント」と新曲2曲を披露する。変拍子と不協和音を用いた不可思議な前者、妖しさと静かな狂気を感じさせる後者。ダークなムード漂う楽曲をどこか爽やかに歌う、その心地の良い違和感が楽曲の緊張感を増幅させていた。

“変異体・エーデルワイス”にチェンジし、ステージが植物に溢れた宮殿に移ると慈愛に満ちたバラード「ANGELIC」、星界とともにデュエットした「シェイク」、『musicるTV』クリエーターバトルで選ばれた新曲「眠りゆく芽吹き」とそれぞれで異なる表情を見せ、多彩な表現力をあらためて強く印象付ける。そしてこの日を迎えられた喜びと約5年の活動への感謝を丁寧に言葉にすると、「(自分が)諦めずに前を向けるのは、あなたがいつだってわたしの歌を信じて、愛してくれていたからです。あなたの言葉が、気持ちが、わたしの世界を変えてくれました」と涙ながらに語った。その後に届けた「ARCADIA」では、MCで話した真心がひしと伝わるまっすぐな歌声が、観客一人ひとりを清らかに優しく包み込んでいた。

しばし時間を置いて新衣装“普遍体・サンフラワー”で再登場し、ヰ世界情緒が初めて作詞に参加した楽曲「かたちなきもの」を歌い上げると、彼女はこの日最後に歌う次の曲も自身が歌詞を書いたこと、2019年12月のデビューから今までに感じた気持ちを綴ったことを明かす。創作への熱い思いを語った後に「自分の大切にしているものを受け入れてもらえるのは奇跡のようなこと」と続け、自身の創作を受け止めてくれる人々への愛情を細やかに言葉にした。

「誰だってまっすぐ生きていいんだと、あなたが教えてくれました。だからわたしは創作であなたの力になりたいです。あなたの日々が豊かで自由なものであったらいいなと思い続けています。歌にできることがあるなら、あなたの隣でこれからも歌わせてほしい。次の曲は、わたしがわたしであり続けるための歌だと思っています。もう諦めたりせず、生きている限りは自分のことを信じていたい。そしてまたあなたの前で歌を歌いたいです」と笑顔を見せると、新曲「みらいのかたち」を初披露する。これまでにないほどに凛々しい歌声で、彼女がこの曲に込めた強い意志や決意が直感的に伝わってきた。迷いのないその声はまさに聴き手を照らし、光に向かって咲き誇る向日葵のように眩しかった。

全22曲を歌い切り、あらためて感謝を告げたヰ世界情緒は、「この景色を誇りに思います。これからもあなたをこの場所から応援しています。わたしたちは画面越しにしか会えないけど、わたしの言葉が無責任だと感じたとしても、あなたを信じている人がここにいるって忘れないでほしいです」と言い、自分の胸に手を当てる。そして「ヰ世界情緒としてあなたに出会えて幸せです。これからもAnimaを歌い、作っていきます」と再会を誓い、笑顔で会場の隅々に手を振り、ステージを後にした。

エンドロールの後は過去の「Anima」公演のBlu-rayリリース、バーチャルミニライブ「parallel canvas」から派生するコンセプト楽曲シリーズの始動、2025年冬の「ヰ世界情緒展Ⅱ」の開催などを発表する。活動5周年を間近に控え、初の現地ワンマンにて創作者として新たな1歩を踏み出したヰ世界情緒。彼女の可能性が花開く一夜だった。

SET LIST

01.描き続けた君へ
02.ディメンション
03.暮れなずむ約束
04.システムズコア
05.そして白に還る
06.ラピスのお人形
07.グレイスケイル
08.物語りのワルツ
09.此処に棘と死を
10.いろはに咲きて
11.ヰ世界の宝石譚
12.シリウスの心臓
13.メドレー ①異世界転調リクヱスト ②ぼくらの逃避行
14.new world
15.Capullo
16.アンビバレント
17.ANGELIC
18.シェイク
19.眠りゆく芽吹き
20.ARCADIA
21.かたちなきもの
22.みらいのかたち

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