Orangestar ONEMAN LIVE "And So Henceforth," Tour
2024年7月19(金)東京ガーデンシアター(有明)
暗転して雨が降り注ぐ音が流れると、Orangestar本人のほか、夏背(Vo)、サポートメンバーのpino(Ba)、遼遼(Vo/Gt)、もやし(Gt)、きこり(Gt)、初穂(Dr)、ナサガシ(Key)がステージに登場する。やおら演奏が始まると、その音は徐々にスケールを増し「快晴」へとなだれ込んだ。Orangestarと夏背によるオクターブのユニゾンやハーモニー、ふくよかなバンドサウンドが夏の訪れを高らかに告げると、「滑走」をBGMにツアータイトルが映し出され、突き抜けた青空へと連れ出すように力強い「白南風」、高揚感に溢れた夏背と遼遼のツインボーカル曲「Surges」とたたみかける。仲間とともに作り出す清涼感とエモーションで、鮮やかに『And So Henceforth,』への世界へと連れ出した。
Orangestarは2年ぶりに東京ガーデンシアターでライブができること、前回は制限されていた声出しが今回は可能であることに触れ「皆さんの声があってうれしいし、やりやすいです」「今日はとにかく楽しいライブにできたらと思っている」と笑顔を見せる。「Henceforth」では客席からもシンガロングが起き、「霽れを待つ」は夏背がソロボーカルでパフォーマンスし、楽曲の主人公の心情をより純度高く描き出した。
青々としたギターロックが続くなか「心象蜃気楼」でさらに熱量を高め、間髪入れずにダンスロックナンバー「Nadir」のイントロにつなぐ。その後はセンチメンタルな夜を仰ぐ「MOON-VINE」、アグレッシブなバンドサウンドが痛快な「Aloud」と駆け抜けた。8人の歌と演奏は、我々の夏の記憶を媒介にしながらも、頭のなかでしか実現できなかった理想の夏を立ちのぼらせる。知っているのに新鮮な、見たことがないのにずっと知っていたような、現実と非現実の境界線が曖昧になればなるほどOrangestarの作り出す夏の濃度は高くなっていく気がした。
「皆さんの声が聞けて楽しいライブになっています」と夏背が喜びの表情を見せると、Orangestarも「ここから(アルバム曲以外にも)いろんな曲をやっていきつつ、過去のライブのリバイバル的演出もあるので、最後まで盛り上がってくれたらうれしいです」とここからの展開の期待を煽る。するとステージに紗幕が下り、Orangestarと夏背がステージを後にした。
その後すぐに披露された「Pier」は紗幕VJとVOCALOID・IAのボーカルと音源に、もやしがギターを重ね、「Alice in 冷凍庫」からOrangestarが言及した“リバイバル演出”が施された。バンドの生演奏に合わせてIAの声が響き、アウトロでは紗幕にバンドメンバーひとり一人のシルエットとクレジットが映し出される。間髪入れずに「Uz」へ移ると紗幕が落ち、再びOrangestarと夏背がステージに登場。VOCALOIDと生歌生演奏、2次元と3次元が融合する演出はOrangestarの楽曲世界との親和性も高く、会場は大きく沸き立った。
「ノクティルーカ」の後、同曲を収録した『Postscript - EP』のレコーディング合宿の思い出話に夏背と遼遼が花を咲かせると、Orangestarは同EPの表題曲が『And So Henceforth,』の13曲目のイメージで制作したと告げ、「Postscript」を披露する。「追伸」という意味を持つpostscript、「これから」という決意の意味を持つhenceforth、「枯れぬまま 生きて、歌う!」という歌詞を体現するような歌と演奏は、まだまだ夏は終わらないと告げるようだ。
「夏色アンサー」「残灯花火」「濫觴生命」と新旧織り交ぜたセットリストで走り抜け、ピアノとアコギ伴奏の「回る空うさぎ」ではあたたかいハーモニーやしゃぼん玉がピュアなムードをさらに引き立てる。色とりどりの楽曲で会場を盛り上げると、本編ラストはOrangestarの代表曲のひとつである「アスノヨゾラ哨戒班」。客席からは盛大なシンガロングが起こり、夏背のハイトーンボーカルにはこの日いちばんの歓声が沸く。ステージと会場の熱量が渦巻いた、盛大な締めくくりだった。
アンコールはOrangestarと夏背の掛け合いがドラマチックな「空奏列車」、初音ミクの歌唱もアクセントとなった「シンクロナイザー」で再び会場の熱を上げると、Orangestarは「終わりたくない」と率直な気持ちを吐露する。そして「2年前のライブはいい思い出ではあるものの、いっぱいいっぱいで。でも今回のツアーではお客さんを見る余裕が出て、最高に楽しかったです。声出しやペンライトで盛り上げてくれてありがとうございました」と頭を下げると、客席からも大きな歓声と「ありがとう」の声が次々と湧き上がった。
「八十八鍵の宇宙」であたたかく包み込むと、イントロから盛大なコールとクラップが巻き起こった「DAYBREAK FRONTLINE」ではどこまでも遠くまで飛んでいくような無敵感迸るエネルギーで会場を巻き込む。それは終わらない夏へのファンファーレのようだった。彼にとって初のツアーは、より自身の描く夏の世界の彩度を上げた日々だったのではないだろうか。8人の迷いのない歌と演奏が、「これから」への道をまっすぐ照らしていた。
SET LIST
01. 快晴
02. 滑走
03. 白南風
04. Surges
05. Henceforth
06. 霽れを待つ
07. 心象蜃気楼
08. Nadir
09. MOON-VINE
10. Aloud
11. Pier
12. Alice in 冷凍庫
13. Uz
14. ノクティルーカ
15. Postscript
16. 夏色アンサー
17. 残灯花火
18. 濫觴生命
19. 回る空うさぎ
20. アスノヨゾラ哨戒班
ENCORE
01. 空奏列車
02. シンクロナイザー
03. 八十八鍵の宇宙
04. DAYBREAK FRONTLINE