KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~
2024年1月20日(土) 相模女子大学グリーンホール(神奈川)
笑顔という名の花々が会場内に咲きみだれていると感じた。グリーンという名前のついたホールがカラフルでハッピーな空気に染まっていた。松下洸平の『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~』ツアー初日となる、2024年1月20日の相模女子大学グリーンホール。初日の緊張感よりも、待ちに待ったツアーが始まったという喜びや高揚感があふれるライブとなった。1曲目からステージ上も客席も全開。満員1700人の観客のハンドクラップが鳴り響く中で、松下が気持ちよさそうに歌う姿が印象的だった。「一緒に歌おう!」と叫ぶと、観客も大きな歌声で応えている。
「のっけから素敵なお声をいただきまして、ありがとうございます。今日はR&B色満載でお届けします」と松下。昨年12月にリリースされた最新アルバム『R&ME』からのナンバーを軸にしたステージだ。この新作は、彼のルーツミュージックであるR&Bやソウルへの愛が詰まった楽曲が並んでいる。これまでには見えてこなかった彼の新たな魅力を堪能できるステージでもあった。例えば、彼のファルセットボイスをフィーチャーしたラブソング「This is my love」。グルーヴィーでムーディーでありつつ、クールな魅力も漂っていた。「You&Me」ではフェイク混じりの自在な歌声とバンドの演奏とが一体となって届いてきた。新曲の数々をライブで披露することによって、シンガーとしての松下の幅の広さや奥行きの深さも見えてくるステージだ。アコースティックコーナーも挟みつつのバラエティーに富んだ構成が楽しい。
彼のフレンドリーな人柄もあって、“温かさ”とともに“近さ”を感じさせるステージでもあった。コール&レスポンスとなった時には、「せーの!」「ナイス!」などと声をかけたり、笑顔でピースサインをしたり。彼が客席の反応に心を動かされて、歌っていることも伝わってきた。観客一人ひとりの感動が、彼の歌声にさらに力を与えている瞬間もあったのではないだろうか。
今回のツアーでは、観客に無線制御によるリストバンド型ライト「フリフラ」が配布されている。観客が曲に合わせて腕を振ると、風でなびく花々のように、客席のたくさんの光が揺れていた。彼の歌声に聴き入っている観客の思いがそのまま色鮮やかな光となり、可視化されているかのようだ。ゆらゆら揺れる光は、うっとりやワクワクやドキドキという感情の表れ。その光景をうれしそうに見つめる松下の姿も印象的だった。ステージ上と客席との相互のコミュニケーションの濃さを感じる初日だ。
「今日は初日なんで、もっともっと歌いたいし、もっともっとみんなと踊りたい。もっと声を聞かせてくれ!」という声に応えて、観客もハンドクラップや歌声で参加。ソウルフルな歌声の根底から情熱がにじんでいると感じたのは「漂流」だ。ディープでありながら、不思議な浮遊感を備えたグルーヴがクセになる。レゲエ、ヒップホップ、ラテンのダンスビートがミックスされたバンドの演奏で会場内が揺れたのは「FLYFLY」。エネルギッシュな歌声によって、会場内に開放的な空気が充満していく。しっとりとしたムーディーな歌の世界から躍動感あふれるダイナミックな歌の世界まで。『R&ME』という作品の楽曲の数々が、松下のステージにさらなるダイナミズムをもたらしていることが実感できる。松下が「声を聞かせて!」とシャウトしながら、歌い踊っている。観客も歌い、ハンドクラップし、そして踊っている。松下が客席の感動と熱狂を全身で受け止め、そして、歌うエネルギーへと変換していた。
「コロナの真っただ中でデビューしたので、声出しが大丈夫なライブは、今日が初めてです」というと、大歓声と拍手が起こった。「みんなが声を出せる状況になって、ライブを楽しめるようになって本当に良かったと思います。“ここはみんなと歌えたらいいな”と思いながら作った曲ばかりなので、今日こうしてみんなの声を聞けて本当にうれしいです」とのMCもあった。確かにこれまでに行われた彼の3度のツアーは、2021年1月~3月、2022年1月、2022年11月~2023年3月といずれも“声出し厳禁”の中で行われたものだった。4度目のツアーで、彼の1つの念願が叶ったのだ。
「歌ってて良かったなと思える瞬間は、曲がみんなの元に届いて、共鳴できた時です」との言葉もあった。共鳴の連続、そして熱狂と感動の連続。花の名前のついた歌がやたらと染みてきた。音楽は人の心に彩りを添えるという点では、花と似たところがある。彼のR&Bへの愛と情熱が、音楽という形で、見事に花開いていると感じた夜でもあった。大好きな音楽を観客に届けたいという彼の純粋な思いに、胸が熱くなる瞬間もあった。客席に咲いた光の花とたくさんの温かな歌声は、松下洸平のライブが新たな段階に突入していることを示していた。ツアーは3月13、14日の東京ガーデンシアター2daysのファイナル公演まで続く。共に歌い、踊り、跳ねる参加型のコンサート。胸の中だけでなく、体全体が温かくなるのは間違いないだろう。発声練習と準備体操をしてのぞむのがおすすめだ。