三浦隆一逝去から8ヵ月。2023年12月9日下北沢シャングリラ、空想委員会ラストライブ。「みんなが聴いていれば、生きています!」

ライブレポート | 2023.12.29 18:00

空想委員会ラストワンマンライブ 解散式~委員長ありがとう!~
2023年12月9日(土)下北沢シャングリラ

 2023年12月9日(土)、下北沢シャングリラにて『空想委員会ラストワンマンライブ 解散式~委員長ありがとう!~』が行われた。
 このライブは、2023年5月6日渋谷GUILTYからスタートし、7ヵ月かけて全国15本を回るツアー“空想委員会ワンマンライブツアー「Welcome Home」”のファイナルとして、これまでの活動において、節目節目で彼らがライブを行ってきた下北沢シャングリラ(旧下北沢ガーデン)にて、スケジュールが切られたものだった。
 しかし、ボーカル&ギターであり、大半の曲の作詞作曲を担っていた三浦隆一が、2023年4月3日に、3年にわたる大腸がんとの闘病の末、亡くなった。よって、ツアーは中止となったが、この最終日だけはイベント名を変更して行うことと、そのライブをもって空想委員会は解散することが、7月3日に発表になった。
 また、ギターの佐々木直也は、2023年2月15日からミュージシャンとしての活動を休止し(つまり、他でやっているサポート等の仕事も休んだ)、空想委員会から離れていたが、このラストライブには、ベース岡田典之と共に、メンバーとして参加した。

 ステージ中央に歌詞を出すタブレットが付いた三浦のマイクスタンド、その左後方には三浦の愛器=白ボディに黒ピックガードのギブソンSonexが置かれたステージで、この日演奏されたのは、本編10曲、居残り(「アンコール」を指す空想委員会語)2曲、W居残り1曲の、全13曲。
 1曲目「エンペラータイム」、2曲目「難攻不落ガール」、3曲目「独占禁止法」は、生前の三浦のボーカル・トラック&ギター・トラックと共に、演奏された。三浦のギターで始まる「エンペラー・タイム」では、そこに佐々木が自身のギターを絡ませ、サビでは三浦の声に岡田がハモリをつけていく。
 同曲の間奏で、リズムがブレイクして三浦のギターだけになるところで、「委員長!」と叫んでからソロを弾き始めた佐々木は、この曲を演奏し終えると「始まったばっかだけど、もう三浦くん、来てると思う」と、ファンに告げた。

 4曲目「純愛、故に性悪説」と8曲目の「波動砲ガールフレンド」はGOOD ON THE REELの千野隆尋が、5曲目「ビジョン」と7曲目「八方塞がり美人」はLEGO BIG MORLのカナタタケヒロが、6曲目「春恋、覚醒」はCIVILIANのコヤマヒデカズが、ゲストボーカルとして、三浦の代わりに歌った。そのたびに佐々木や岡田が「今日はGOOD ON THE REELの千野ちゃんじゃなくて、空想委員会の千野ちゃん」というふうに、メンバーとして紹介する。
 なお、コヤマは、自身が歌った「春恋、覚醒」はもちろん、他のボーカリストに歌を譲ったあとも、9曲目までギターで参加し、主に三浦が弾くパートを担った。
 本編ラストの10曲目「マフラー少女」は、岡田典之が歌を担いながらオーディエンスに参加を呼びかけ、岡田とオーディエンス全員がリードボーカルを取る、という状態になった。

 ドラマーは、1曲目から5曲目までが、HAZEこと大宮洋介。再始動以降の空想委員会のサポート・ドラマーで、休止前のサポートであり所属事務所の社長でもあったテディ(大井勇)の、レコーディング時のドラム・チューニングも務めたこともある(ことがMCで明かされた)。
 そして、6曲目からラストまでのドラマーは、テディ。HAZEからテディにスイッチする時、ドラムセットの転換をする間は、フロア左横のスクリーンを使って、空想委員会と仲間のバンドたちの、歴代のオフショットが公開され、それを見てメンバー+ゲストで当時の思い出話をする、というコーナーでつなぐ。
 再始動以降の、もうひとりのサポートドラマーであり、「4ヵ月前から今日を空けていた」「でも出番がなくて、テディさんの機材運びを手伝いに来た」と言うCIVILIANの有田清幸もステージに上がり、そのトークに参加する。

 本編のピークは、ゲスト3人がリードボーカルを担った、9曲目の「空想ディスコ」。間奏では、ドラマー3人がリレーでソロをとる (テディは佐々木&岡田が飲み干した水のペットボトルをスティック代わりにしてプレイ)。
 そして岡田が「チョコレイト!」「ディスコ!」「ウルトラソウル!」「ヘイ!」の、おなじみのコール&レスポンスをオーディエンスと繰り広げた後、佐々木がフロアに乱入する。
 ギターソロ背面弾き→間奏が終わるとギターを手放しフロアに残って大暴れ→オーディエンスを全員座らせて一緒にジャンプして曲を締める──という、さまざまな時代にさまざまな場所でやってきたパフォーマンスを、この日、ここでも見せた。
 ゲストたちが去り、「マフラー少女」で本編を締める前に、再びスクリーンを使って、歴代の映像を観ながら振り返るコーナーが設けられる。
 RISING SUNやROCK IN JAPAN、日本武道館のPerfume Fes.などの各地のフェスやイベント、日比谷野外大音楽堂ワンマン、歴代の『大歌の改新』ツアー、ここシャングリラ(旧ガーデン)で行ってきた数々のライブ、有楽町ヒューリックホールとガーデンでの活動休止ライブ、再始動した千葉LOOK(2021年6月4日)──などを見ながら、佐々木・岡田・テディが解説をしていった。

 前述のとおり、岡田&オーディエンス全員がリードボーカルの「マフラー少女」で本編が終わった後、オーディエンスの「居残り! 居残り!」コールに応えて、3人がステージに戻り、それぞれがMCをする。
 活動休止以降、4年会っていなかったが、今年の2月に下北沢にいた時、三浦が弾き語りライブをやっていることを知り(2月27日下北沢シェルター)、今日会っとかなきゃいけない気がして行った。それが生前最後の東京でのライブだった。そこで新曲を聴いた、「ヘッドホンガール」という曲だった。いい曲だった、天国で完成させてください、ありがとう、三浦くん──と、テディ。
 空想委員会には夢を叶えさせてもらったし、何よりたくさんの出会いをくれた。最近、自分は休んでいたが、今日ステージに立っていろんなことを思い出せたし、改めて空想委員会って本当にすごいバンドで大好きだと、演奏していて思った。今日で終わりだけど、絶対にこのバンドを一生忘れない。みなさんもそうだと思う。何か人生でつまずきそうになったら、空想の音楽を聴いたり、この出会いを思い出したりして、生きていくんだなと思う。僕がいちばん感謝しているのは、三浦くんと岡田くんです、このふたりに出会えたことが僕の宝だと思う──佐々木は、そんな話をした。
 最初は三浦とふたりで始めて、佐々木とテディと出会って、やり始めたのが2010年で、こんなすばらしいバンドになれたことが本当にうれしい。僕たちは本当に思い残すことはない、常にマジで全力で走ってきたから。最後にこんな素敵な景色を見させてもらって、本当にうれしい。このあとも音楽を続けていくが、間違いなくその糧になるバンドになりました、本当にありがとうございました、みなさん──と、岡田は感謝を伝えた。

 と、佐々木が「ここで、ほんとだったら締める人がいるんですけど。やっぱり、何度(横を)見ても、いないからさ」と、また話し始める。
 「もう何回も見た、今日。でも、いなくて。でもこれは現実で、悲しいですし、別れは突然で……イヤなことも、ありますけど、でも、音楽って残っていくんで。みんなが聴いていれば、生きています! それはわかるよね? だから、ずっと空想委員会を……いいよ? たまには違うバンドを聴いていいよ、それは許すよ(笑)。でも、思い出して聴いてくれたら、そこに俺らはいるんで。これからも空想委員会を聴き続けてもらえたらうれしいです、よろしくお願いします」

 そして、再始動アルバム『世渡り下手の愛し方』(2021)のリード曲「全速力ガール」を、三浦のボーカル&ギターのトラックと共に演奏。「♪オーオーオーオーオーオー」のシンガロングが、シャングリラいっぱいに広がる。
 続いて「一緒に歌おうぜ!」という佐々木の雄叫びから始まった「劇的夏革命」(これも三浦のボーカル)で、また大きなシンガロングが起きる。1コーラス終わりで佐々木は「空想委員会大好きだあー!」と叫び、オーディエンスは大歓声でそれに応えた。

 W居残りを求めるコールを受けて、またステージに戻ったが、「なんかしゃべる?」「いやあ、もうけっこうしゃべったよ?」などと言いつつ、なかなか演奏に入ろうとしない佐々木と岡田。
 言葉に詰まった佐々木、「いやあ、でもほんとに……会える時に、会いに行きなさいよ。ほんとに、教えてくれたよ」と、しみじみと言うが、その瞬間、絶妙なタイミングで、フロアから声が飛ぶ。
「会いたい人が休んでた」
 場内、爆笑&拍手。「それはごめんよ!」と返した佐々木、「これからどうすんの?」という声に「予定は未定ですけど、けどやっぱり、音楽はやめれないでしょ」と答える。
 「岡田くん、MOSHIMO行くよー!」という声を受けて、岡田も自身の活動(そのMOSHIMOや三浦祐太朗のサポート等、多数の仕事をしている)のことを伝え、「これからも岡田のベースを観に来てください」と挨拶する。
 という話が終わっても、演奏に入ろうとしない時間がしばし続いたあと、佐々木と岡田が本音を漏らした。「名残惜しいだけだよね」「そう、名残惜しくて今ダラダラしてんの」。
 というわけで、しゃべることがなくなって、「……なんかない?」などと言っているふたりに、声が飛ぶ。
 「今日初めて空想のライブに来ました!」
 「マジでぇ? おまえ今まで何やってたんだよ、もっと早く来いよ! でもありがとね、喜んでるよ、三浦くんも」と、佐々木が応える。
 それから、客席から声を拾う等の「意図的なダラダラ行為」をしばし続けた末に、いよいよ最後の曲へ。
 自分のイベントに空想委員会が出た時に、この曲を聴いて「2ヵ月に1本しかライブやってないの? がんばってみればいいじゃん、かっこいいんだから」と声をかけた、この曲と出会ってなかったらそう言わなかっただろう(テディ)。大塚MEETS(初ライブの会場)に向かっている途中の交差点で、新曲を書いているという三浦にちょっと歌ってもらった。衝撃だった、「売れた!」と思った。今でもそれを思い出せるくらい、空想委員会にとって大事な曲(佐々木&岡田)。と、この曲について話す3人。
 「今日は全員が空想委員会っていうことで、ライブ前のあれをやろうよ」とテディが提案する。そして、空想委員会がステージに出る前に必ずやる、佐々木の音頭による「ワッショイ!」を全員で叫んでから始まった「完全犯罪彼女」で、空想委員会の最後のライブは終わった。もちろんこの曲も、三浦のボーカル&ギターのトラックに、3人の演奏とオーディエンスの歌が寄り添う形でプレイされた。
 本日の出演者全員で手をつないで一礼し(三浦のギブソンSonexは佐々木と岡田が掲げた)、ステージに誰もいなくなったあと、終演SEとして「完全犯罪彼女」がかかった。オーディエンスは誰も帰らず、もう一度最後までこの曲を歌った。

 それから。空想委員会は、歌手/女優の上野優華と共に、「上野優華×空想委員会〜優想委員会 デビューツアー〜」と銘打って、2022年10月30日徳島club GRINDHOUSEと2023年1月22日渋谷GUILTYの2本、ライブを行った。結果として後者が、空想委員会としての最後のステージになったわけだが、その2本のために、彼らは「優想委員会」として新曲を作り、上野優華と共に披露した。
 「欲しがり」というその曲の、デモに入っている三浦のボーカルを使って、上野&佐々木&岡田&HAZE&時乗浩一郎(空想委員会のプロデューサー)でレコーディングをし、音源として完成させた。これが、空想委員会(優想委員会でもある)の、最後の新曲になる。
 その曲を、この日のオーディエンス全員にプレゼントすることが、途中のMCで発表された。「今日来れなかった友達にあげるのはいいけど、SNSにアップはやめてね」と、メンバー。

 というわけで、会場を出る時、その曲をダウンロードできるQRコードが、全員に配られた。
 歌詞とクレジットと、三浦と上野の歌う完成バージョンと、三浦のデモ・バージョンが入っていた。
 聴いた。ファンにお礼をしたい、特別な何かを贈りたい、というメンバーの気持ちはわかるが、しばらく経ってからでいいから、この曲、販売か配信をするべきではないかと思う。この日、ライブに来た人とその友達、数百人が聴くだけでは、あまりにもったいない曲なので。

SET LIST

01.エンペラータイム
02.難攻不落ガール
03.独占禁止法
04.純愛、故に性悪説
05.ビジョン
06.春恋、覚醒
07.八方塞がり美人
08.波動砲ガールフレンド
09.空想ディスコ
10.マフラー少女
居残り1.全速力ガール
居残り2.劇的夏革命
居残りダブル.完全犯罪彼女

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