YATSUI FESTIVAL! 2023
2023年6月17日(土)18日(日) Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest / Spotify O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / clubasia / LOFT9 Shibuya / WOMBLIVE
2023年6月17日(土)・18日(日)今年で12回目の『YATSUI FESTIVAL! 2023』(以下『やついフェス』)が開催された。
コロナ禍以降、2020年はオンライン開催、2021年と2022年は収容人数と会場数を絞って開催、という形で行ってきて、今年2023年は、コロナ禍前と同じ収容人数/声出し解禁/渋谷道玄坂のライブハウス・クラブ8会場10ステージ、2日目は『NAGOYA GIRLS FESTIVAL』とコラボ、という、本来の形での開催となり、多くの参加者が集まった。
O-EASTとduo MUSIC EXCHANGEとWOMBとLOFT9の4会場の模様は、ニコ生で無料で生配信も行われた。(一部プレミアム限定コーナーあり)
まず初日。O-EASTでのオープニングは、オーガナイザーやついいちろうのDJで場をあっためてから、ゲストによる開会宣言でスタートするのが毎年の恒例だが、今年その開会宣言を務めたのは、なんと木梨憲武。
しかし木梨憲武、開場のDJやついいちろうプレイ中から登場し、しゃべりまくったりDJの機材をいじりまくったりした上に、自ら招いたシンガー武田雛歩とAKA、ピアニスト大平勉との4人で、持ち歌を2曲歌いきる、という好き放題ぶり。
やつい、「ほんとは私がお客さんをDJでお迎えして、ノリさんを呼び込んで、今の2曲を歌ってもらうはずだったんですけど、呼び込む前に終わってるんですよ、もう」。そして「そっちがその気ならこっちもやりますよ」と、急遽、木梨憲武に「ガラガラヘビがやってくる」をリクエスト、歌ってもらう、というサプライズ。
それから、 TBSラジオの『土曜朝6時 木梨の会。』にエレ片がゲスト出演した縁で、番組で作ってくれた「エレ片の唄」を、渋さ知らズの演奏とエレ片+木梨たちで歌う、というオープニングになった。
木梨「さあ行くよ、やついフェス、スタート!」と、そのまま渋さ知らズのステージが始まる。コロナ禍以降、人数をコンパクトにしてこの枠に出続けてきた渋さ知らズだが、今日は25人編成で。TBSラジオ「エレ片のケツビ!」のオープニング曲「火男」からライブを始める。
同じ頃、O-WESTはNo Buses、今年から加わった新会場のWOMBでは諭吉佳作/menのライブがスタート。前者は昨年初出演だった4ピースのギターバンド、後者はノートPC1台でライブを行うシンガー。トップの時間にもかかわらず、どちらの会場も入場規制ギリセーフくらいの盛況だった。
O-EASTとWOMBで、音楽のアクトと交互に行われるお笑いコーナーのうち、渋さ知らズに続いてスタートしたO-EASTのトップは、永野、空気階段、キャン×キャンの3組。
永野はオーディエンスによる「ラッセンが好きー!」の大合唱を巻き起こして今年も大ウケ。空気階段は、つかみのフリートークなしで(※コントの演者はこれを入れるコンビが多かった)しっかりした1本ネタをやり(「方言」がテーマの田舎の町役場のコント)、キングオブコント2021チャンピオンならではの腕を見せつける。今年で結成24年のキャン×キャンは、地元沖縄ネタなど、得意の鉄板芸でフロアを沸かせた。
トークショーやゲッターズ飯田の占いトークなどが主に行われるLOFT9に、この13:40から登場したのは、らりるれローテーションズとエレ片劇団。
エレキコミックや片桐仁が所属するトゥインクル・コーポレーションの社長がプロデュースした曲「らりるれローテーション」を歌う、片桐仁・街裏ぴんく等の5人組。彼らの歌を聴いたやついいちろう、「今日出演の239組のうちもっとも、最低な演者でした。お遊戯でしょ? これから出て来る方々、さらにお遊戯ですよ?」と、エレ片劇団を呼び込む。
今立進と片桐仁、エレ片周囲の作家やマネージャー等の素人の集合体であり、毎年この「やついフェス」に出演し続けてきたエレ片劇団、今年はラジオで公募した女性団員2人(内1人は青木さやか)が新たに加わった編成。やついいちろうが書き下ろした、「『サンクチュアリ-聖域-』全8話を8分にしたやつ」を全員で演じきり、客席に爆笑と失笑を巻き起こした。
15:05からのO-EASTには当フェスの常連、新しい学校のリーダーズが登場。過去何度も出演しているが、初めてO-EASTでパフォーマンスした昨年の出演以降に大ブレイク、「10代女子が選ぶ2023年上半期流行ったヒト」1位に選出されるなど、国内でも海外でも人気を集める存在になっての、言わば『やついフェス』凱旋公演である。
1Fも2Fも限界まで膨れ上がった超満員のオーディエンスが、4人の一挙手一投足に熱狂的な反応を返す中、45分で10曲を歌い踊る。TikTokで大バズリした「オトナブルー」は6曲目に披露され、フロアの熱がさらに高まる。
毎年出続けている常連も多いがニューカマーも多いお笑いコーナー。この日3回目のブロックは、アイデンティティとエレ片の常連2組と、ヨネダ2000とや団の初登場2組。
ヨネダ2000は、『M-1グランプリ2022』の決勝で世間の度肝を抜いた餅つきのネタで、誠の「♪絶対に、成功させようねー!」をオーディエンスも一緒に叫ぶ、という、世にもめずらしい光景がくり広げられる。
アイデンティティは、田島のおなじみ野沢雅子っぷりがさえまくり、爆笑をさらう。初登場のや団は、『キングオブコント2022』の決勝で披露したバーベキューのネタで、みんな中身を知っているのに大ウケ、拍手まで起こる。
エレ片の3人は、今年2月に東京・大阪で行った単独公演のネタのひとつ『彼女できる講座』を舞台にかけたが、やついいちろうがニコ生での炎上を心配するあまり、途中で大暴走&大脱線した末に「暗転!」と叫んで無理やりコントを終わらせた。なお、この出番でやついは完全にノドをつぶし、以降の1日半、苦しむことになる。
「これぞ『やついフェス』」である大人気コーナー、O-EASTでの『やついフェススペシャル歌合戦』は、毎年Calmeraがバックバンドを務めてきたが、彼らは1ヵ月前、大阪と東京のワンマンを最後に活動休止。今年はCalmeraのリーダー西崎ゴウシが編成する、スペシャルバンドが演奏した(5人編成で、キーボード以外の4人はCalmelaとCalmelaの元サポート)。
初日の司会は、やついいちろうと堂島孝平、審査員はいとうせいこうとしまおまほ、というおなじみのメンツ。去年は『トップガン・マーヴェデリック』のトム・クルーズに扮したしまおまほ、今年は池田エライザ、と、本人は言い張る出で立ちである。
トップは初出場の、ぽんぽこ高木ひとみ〇。中島みゆき「地上の星」を二番のサビだけデスボイスで歌う、という芸だったが、歌い始めるや否や、中島みゆきそっくりで驚きの拍手が。そして、二サビのデスボイスでも拍手喝采。
二番手は、いきなり現れた虹の黄昏が延々と騒ぎまくり、「歌合戦をやってください!」とやついに咎められる。その虹の黄昏の紹介で、三四郎の相田周二と超新塾のアイクぬわらが現れ、歌ったのはスピッツの「ロビンソン」。やつい「私は相田さんだけを呼んだつもりだったんですが。どういうことなんですか?」。
三番手は、カンニング竹山と森恵とCalmera西崎ゴウシの新ユニット、竹森ゴウ。このフェスの前日に配信になったデビュー曲「人間失策」を披露。森恵のケタ外れの歌唱力に、フロアが息を呑んだ。
最後は、前回優勝の大槻ケンヂ。今回で「歌合戦」は卒業、と決めたそうで、「ラストに歌うのはこの曲かなと思って」と「マイウェイ」を熱唱する。いとうせいこう、「もう大槻くんの人生が見えちゃうんだもん。これでやめるわけにはいかないだろう!」と激賞。
いとうせいこうとしまおエライザまほによる審査の間、Sundayカミデ・やつい・堂島で、このフェスのキャンペーンソング「フェスタ!」を歌ってつなぐ。そして審査の結果、初日のMVPに輝いたのは、大槻ケンヂだった。いとうせいこう、「やめたいなら、あんな歌歌うなよ!」。
この初日にはふたつ、大きなトピックがあった。ひとつめは、『歌合戦』と同時刻にO-Crestでライブをやった、2年連続二回目の出演の江沼郁弥。タイムテーブルには「江沼郁弥 with ???」と記されていて、その後、インスタやnoteで参加メンバーは明かされていたが、この日のステージで江沼、「江沼郁弥with DOGADOGA改めDOGADOGA(ドガ)です。もうバンドなんて一生やるかと思ってたら、こうなりました。初ライブです!」と、新バンドであることを正式に宣言。
ボーカル&ギター江沼、ベース藤原寛&パーカッション岡山健二のandymori→銀杏BOYZコンビ、サックス/クラリネット/フルートの渡邉恭一、ドラム古市健太の5人編成。5曲を演奏し、「もう曲がないから!」と1曲目を再度プレイし、「8月にまたライブします!」と言って、江沼はステージを下りた。
もうひとつのトピックは、活動休止から5年のCharisma.comが、この日の18:05からのduoを、復活ライブの場所に選んだことだ。休止と同時にDJゴンチが脱退&引退し、MCいつかのひとりユニットになったCharisma.com、シンセやマニピュレートやパーカッションやギター等を掛け持ちするふたりのサポート(Charisma childrenというらしい)と共にオンステージ。この日を待っていたオーディエンスたちに「今日ほとんど新曲だから。ごめん、自由にやって」などと言いながら、その言葉どおり、どんどん新曲を放っていく。
5曲目にプレイした新曲「FMFM(ふむふむ)」は、松嶋初音が参加する曲。というわけで、曲が終わったところでその夫=やついいちろうもステージにひっぱりだされる。「なんだかはずかしいです、とても」と言うやついであった。
O-EAST、トリのひとつ前のスロットは、スチャダラパー。「GET UP AND DANCE」等でフロアをアゲつつも、BOSE、「いや、四の五のいわんでもわかってる。心のベストテン第1位を待ってるのはわかってる。ただ、申し訳ないことがあるとしたら、みんなが知ってるバージョンではない。2023年度版、これがスチャダラパーが考える『ブギー・バック』」と、LUVRAWがリミックスした新バージョンの「今夜はブギー・バック」を、LUVRAWも参加した編成で聴かせてくれた。
「7人それぞれが話のたとえに出すスポーツが違う」という、斬新極まりないネタのダウ90000、体調不良で欠場したザ・マミィの代打で登場し、エスカレーターのパントマイムを駆使したゾンビコントで爆笑をとったスパイシーガーリック、戦場ネタと「警察に捕まり終えている」ネタで大ウケ、さすが『THE SECOND』の決勝組、超新塾と三四郎を経て、この日のO-EAST最後のお笑いコーナーに登場したのは、第一声が「M1チャンピオンです、どうもー」だったウエストランド。
ネタは当然あるなしクイズで、井口、アドリブ多めで飛ばしまくる。しまいには河本に「活躍しようとすんな!」。河本「そんな答えないだろう」井口「答えじゃない、今のは説教!」。
O-EASTのトリはサニーデイ・サービス。このフェスの最後にみんなで歌うテーマソングを作った人であり、そもそもやついいちろうに「フェスやりなよ」と勧めた人である曽我部恵一、以前はソロでの出演が多かったが、ここ数年はサニーデイでも出るようになっている(翌日にソロでも出演)。なお、ベースの田中貴は、この日、というか毎年、「ラーメントーク」のコーナーにも出演している。
そんなサニーデイ、「海辺のレストラン」「さよなら! 街の恋人たち」「時計をとめて夜待てば」「ロンリ−・プラネット・フォーエバー」「春の風」「セツナ」「サマー・ソルジャー」「青春狂走曲」の8曲を演奏。終始リミッターを振り切りっぱなしのステージだったが、特に後半の「セツナ」以降、熱い音を放っていた。
締めのDJやついいちろうは、「(オープニングが)全然DJできなかったんですよ」と言いながら、m-floや、ジャスティン・ビーバーや、Charisma.com復活を祝して2016年にいつか&いとうせいこうと一緒に作った「YYY」を経て、エレキシ「トロピカル源氏」へ。「TROPICAL」の振付&コールをみんな全然できなくて、やついが怒ってやり直す、というおなじみのくだりの途中で、巨大やつい人形が登場する。
そして、残っていた出演者をステージに呼び入れ、全員でこのフェスのテーマソング「月が今夜笑ってるから、ぼくらそっと東京の空を見上げる」を歌う。いつもは伴奏は曽我部のアコースティックギター1本だが、この日はサニーデイの出番直後だったおかげで、バンドの演奏と共に歌われた。なお、その前にステージに出たエレキコミック今立進は、過度な飲酒で涙もろくなっており、曽我部恵一に「なあんであんなにいい曲なんすかああ!」と、ボロボロ泣きながらからんでいた。
2日目に続く。