NEMOPHILA TOUR 2023「Seize the Fate」
2023年2月10日(金)Zepp DiverCity(TOKYO)
今年1月からZepp Fukuokaを皮切りに国内全8ヶ所で開催されたNEMOPHILA TOUR 2023「Seize the Fate」。5人にとって初のワンマンツアーであり、会場によっては初の観客声出しOKのライブであり、2ndフルアルバム『Seize the Fate』のリリースツアーでもあり、さらに初日はmayu(Vo.)の約2ヶ月間の産休からの復帰ライブとなった。そういった要素がすべてはたらいてか、国内ツアーファイナルであるZepp DiverCity(TOKYO)公演は、新しいスタートを切ったフレッシュな5人の姿を観ることができた。
むらたたむ(Dr.)の打音から「Seize the Fate」の痛快な爆音で幕を開けると、「雷霆 -RAITEI-」でさらにギアを上げる。巨大なバックドロップもバンドのアイコンである家紋に加え、石碑のようなロゴと鵺(ぬえ)があしらわれ、キャッチーさとイカツさがより底上げされていた。その後もその鵺が歌詞に登場し能楽や三味線を取り入れた「炎天 -ENTEN-」など『Seize the Fate』の楽曲を演奏。新曲でありながらも何年も演奏していたのかと思わせるほどバンドに馴染んでおり、あらためて『Seize the Fate』の楽曲群がフルメンバーで初の有観客ワンマンを経て制作されたものであること、何より短期間ながらにこのワンマンツアーで5人が観客とともに新曲を育ててきたことが窺えた。
続いての「Waiting for you」では5人が曲前に、チアのコールが入る箇所での人文字を観客へ丁寧にレクチャー。その甲斐あって観客のモーションも完璧で、ステージを闊歩しながら観客と目を合わせる彼女たちの笑顔も非常に明るい。NEMOPHILA史上最もキュートと言っても過言ではないポップパンクがより鮮やかに響いた。
メンバー紹介のコーナーでは、むらたたむがmayuの叩くドラムに乗せてお立ち台の上でY字バランスを披露したり、ハラグチサン(Ba.)やmayuがツアーで知ったメンバーの意外な面を語りツアーならではのMCを展開。葉月(Gt.)は新潟でうまくいかなかったというコール&レスポンスをリベンジし、SAKI(Gt.)は観客を煽るなど、観客の声ありきのコミュニケーションを楽しんだ。結成直後にコロナ禍に突入し、インターネットを活用してきた彼女たちゆえに国内外にファンも多く、mayuは常に配信での視聴者にも気配りを見せ、SAKIは流暢な英語でのMCも。ファンへの思慮を忘れない姿勢も、彼女たちの魅力のひとつだ。
愉快なトークを繰り広げた後は“ヘビーなグルーブとハイパーラップ! ぜひ皆さんノリノリになっちゃってください”というmayuの台詞から「STYLE」へ。重厚感溢れるサウンドの中で、mayuのハスキーなハイトーンボイスが輝く。この日のライブでは、明らかに彼女の身軽さを感じた。mayuにとっての2022年は、一人の命を抱え、守りながら初ツアーや初の海外公演を行うなど、果敢にステージで攻め続けてきた日々だっただろう。SAKIが彼女のことをインタビューで“責任感が強すぎる”と語っていたが、身重ながらにフロントを張るなかで壁に当たることも多かったと推測する(DI:GA ONLINE「NEMOPHILA、新AL『Seize the Fate』を引っ提げ日米ツアーへ!楽器隊4人の思い」)。だがそれを乗り越え、我が子との対面を果たしてステージに帰還した彼女は、またひとつ洗練されているように見えた。「now I here」の可憐さと優しさを感じさせるボーカルは、今の彼女だからこそ発信できる逞しさと包容力に満ち溢れていた。
mayuが一旦ステージから去ると、楽器隊4人による“NEMOPHILA quartette”のセクションへ。1stフルアルバム『REVIVE』の楽曲のリフを中心にメドレーでつないでいく。途中にハラグチサンがお立ち台に正座をして「さくらさくら」を演奏したり、リズム隊のみのセクションを設けたり、弦楽器隊が動きを合わせるなどして緩急をつけ、観客もクラップと歓声で参加して大いに場を盛り上げた。4人の演奏に乗せてmayuが合流し「ZEN」へ。mayuのスクリームとヘビーなサウンドに加え、曲中では4人がむらたたむの前に集まり来迎印を掲げてフォーメーションを組むなどし、NEMOPHILAならではのギミックの効いたステージを堂々と見せつけた。
メンバーがサングラスを着用し曲中にパラパラを踊る80’sロック×ユーロビートナンバー「Night Flight」はニューアレンジでさらにド派手に進化し、その盛り上がりのまま「SORAI」と「DISSENSION」で本編をフィニッシュ。それぞれの持つ得意技を詰め込んでいくようなラストに、会場はまだまだ熱気が冷めやらない様子だ。アンコールは『Seize the Fate』のラストを飾る「Soaring」でスタート。シンガロングパートを歌唱しながらmayuがステージに現れると観客もより歌に熱を込め、SAKIと葉月のギターソロもさらにエモーショナルに突き抜けていった。
mayuは2019年9月にZepp DiverCity(TOKYO)で行われた「METAL WEEKEND 2019」でLOUDNESSやHAMMERFALL等のオープニングアクトとして初ステージを飾ったことを語ると、“自分たちのワンマンでこれだけ人が入ったことがうれしい。ファイナルがこの場所で良かった。NEMOPHILAをやっていて良かった”と喜びと感謝を露わにする。そして5月から開催されるZepp対バンツアー「NEMOPHILA Zepp Tour 2023 ~二兎を追うものは二兎を得る~」と7月に東京ガーデンシアターと神戸国際会館 こくさいホールで開催する初のホールツアー『NEMOPHILA 4th Anniversary -Rizing NEMO-』に触れると、“これからの予定は希望に満ち溢れているので”と爽やかな笑顔を浮かべた。
その後キラーチューンの「REVIVE」と「OIRAN」を立て続けに演奏すると、“ツアーファイナルだから特別な日にしたいです。最後にここにいる皆さんと、配信で観ている皆さんとひとつになりたいと思います”とmayuが言い、最後に届けたのは今ツアーで初めて演奏した「Life」。歌詞を一つひとつ噛み締め、観客に届けるように歌う彼女の姿が印象に残った。観客も力強く拳を掲げてシンガロングで思いを重ね、SAKIも耳の後ろに手を当てるなどして呼び掛け、むらたたむ、葉月、ハラグチサンもフロアを穏やかな表情で眺めていた。
最後にmayuが“終わりは始まりですから、ここからもっと成長するNEMOPHILAをあったかい目で見守ってくれたらうれしいです”と呼び掛けると、観客はBGMに乗せて情熱的なシンガロングを届けた。さらにバンドとして新しいスタートを切ったNEMOPHILA。2023年の快進撃を約束するような、堂々たるツアーファイナルだった。
SET LIST
01. Seize the Fate
02. 雷霆 -RAITEI-
03. 炎天 -ENTEN-
04. Back into the wild
05. Waiting for you
06. Rock’n’Roll Is?
07. STYLE
08. 徒花 -ADABANA-
09. now I here
10. リフメドレー(NEMOPHILA quartette)
11. ZEN
12. Night Flight
13. SORAI
14. DISSENSION
ENCORE
01. Soaring
02. REVIVE
03. OIRAN
04. Life