Saucy Dog ARENA TOUR 2022 "Be yourself"
2022年6月10日(金)日本武道館
6月9日(木)・10日(金)、日本武道館にて、Saucy Dogがライブを行った。このバンドが日本武道館でワンマンをやるのは、2021年2月5日以来二度目だが、前回はコロナ感染予防対策で入場者の上限を抑えたので、フルキャパで開催するのは初めて。かつ、この日本武道館2デイズを皮切りに、6月14日(火)名古屋ガイシホール、6月16日(木)大阪城ホールを回る、アリーナ・ツアーを行うのも初である。
客席は、ステージ後方のスタンドまでびっしりオーディエンスを入れた360度仕様で、チケットはソールドアウト。後方の席からも見えるように、三面が映る網状のLEDが、ステージ上に設置されている。
客入れのBGMが、川のせせらぎの音や鳥の声に切り替わる。それが波の音になったあたりで、影アナのアナウンスが入り、締めの言葉の「まもなく開演いたします」に拍手が起きる。
そして、波の音がじわじわと大きくなった末に、突然客電が消え、海の中にギターとベースとドラムが沈んでいって、海底都市に着地する映像を経て、石原慎也のギターが響き、1曲目の「BLUE」が始まる──というオープニングだった。
その「BLUE」の終わりで石原慎也、「Saucy Dog、初めてのアリーナ・ツアー、『Be yourself』、始めます!」と挨拶。
3曲目は、「僕が言われて、今までいちばん悔しかった言葉です」という言葉をはさんで“私達ね、もう大人だからね好きなだけじゃ一緒にいられないのはもう分かっているよね?”と、「煙」を歌い始める。
6曲目「真昼の月」では、巨大なミラーボールが回る。曲が終わると、「あなたらしく、自分らしくという意味なんですが──」と、ツアータイトルの「Be yourself」に込めた思いを言葉にしてから、「まだサブスクにも出してない新曲です、あなたに歌います」と、「Be yourself」を披露。
8曲目の「シンデレラボーイ」では、ステージのあちこちで火柱が上がる演出が。そして10曲目の「魔法にかけられて」から、スペシャルゲスト=ピアノの村山☆潤が加わる。
続く「煙草とコーヒー」「いつもの帰り道」は、アコースティック編成。ドラムのせとゆいかが前に出て、タンバリン片手にリード・ボーカルをとる。Saucy Dogのワンマンでは恒例のコーナーだが、今回は、そのまま村山☆潤も加わっている。
前回の日本武道館は、Saucy Dog をここまで連れてきてくれたみんなへの感謝の気持ちで「Send for you」というタイトルを付けたが、今回の「Be yourself」には「コロナからの脱出」という意志も込められている、と、せとゆいかは説明した。
13曲目の「結」では、さらに「ひかりストリングス」の4名が加わる。2021年10月27日に公開された『THE FIRST TAKE』でのバージョンの再現である。続く「ノンフィクション」も、石原慎也曰く「アルティメット・バージョン」ということで、その8人編成のまま、アッパーな演奏を聴かせた。
石原慎也&せとゆいかのツインボーカル曲「リスポーン」から、3人に戻ってリスタート。秋澤和貴のベースで始まり、スモークとレーザーでステージ上が一気に華やかになった「雷にうたれて」では、石原慎也、両端や後方まで動いて、オーディエンスに感謝を伝える。「ゴーストバスター」では、吹き上がる火柱に加えて、演奏する3人の頭上から火花が降り注ぐ。
「もう1曲、新曲やっていいですか? こんな時代だから、あなたに伝えたい曲」という石原慎也の言葉から始まった「優しさに溢れた世界で」では、曲に合わせて画面に歌詞が映し出される。
「あなたを乗せて、この先めちゃめちゃ大きいステージに、どんどん行けたらなって思っています。ラッキーだぜ、ラッキーな日だぜ!どこまででも一緒に行きましょう!」と始まった「バンドワゴンに乗って」では、曲の性急なテンポに合わせて、サーチライトがグルグルと場内を照らした。
ここにいるみんなの人生を、僕らが直接変えることは、もちろんできないと思っている。でも、助けることはちょっとできるんじゃないか。手をひっぱってやろうとか、背中を押すとか、かっこいいことは言えないけど、一緒に進むことはできるんじゃないか──。
という言葉で始まったMCを、「がんばっているあなたに」と締めた石原は、ラストの「猫の背」を、オーディエンスに捧げた。この曲でも、画面に歌詞が映し出された。
アンコールは「いつか」と「グッバイ」。前者は「(ここに集まった)みんなと、またいつか会えますように、という気持ちを込めて」歌われ、後者は「みんな、心の中で歌える?」という石原の呼びかけから始まった。
約2時間半、全22曲を終えた3人は、まず正面に向かって、長い時間をかけてお辞儀。そして、ステージ右端に移動して同じくお辞儀し、左端と後方でもそれを繰り返し、最後にもう一度、正面を向いて深々と頭を下げてから、ステージを下りた。
その後、画面に映し出されたスタッフロールは、「Thanks to all of you」でいう言葉で終わった。オーディエンスは、おそらくこの日いちばん大きな拍手で、それに応えた。
ゲストの数とそのミュージシャンたちが奏でる音も、照明や特効や映像等の数々の演出なども、これまでのSaucy Dog のライブで、もっとも大掛かりなものだった。ワンマンとしては、ここまでのキャリアにおいて、もっとも多くの人が、生で一緒にSaucy Dog のライブを体験する場であったことに相応しい仕掛けが、随所に施されていた。で、そのことも、集まったオーディエンスを楽しませていた。
しかし。にもかかわらず、Saucy Dog の3人は、いつもと変わらない佇まいだった。もちろん、このツアーをやれることの喜びを何度も表しながら演奏してはいたが、何年も何百本もライブハウスを回り続けて来たロック・バンドが、アリーナやスタジアム規模のアーティストに成長していく際に、引き換えに失う何かが、不思議なくらい感じられなかった。
そんな、王道だけどマジカルな時間が、今回の、Saucy Dogの日本武道館だったと思う。
SET LIST
01. BLUE
02. メトロノーム
03. 煙
04. シーグラス
05. 雀ノ欠伸
06. 真昼の月
07. Be yourself[新曲]
08. シンデレラボーイ
09. 東京
10. 魔法にかけられて
11. 煙草とコーヒー
12. いつもの帰り道
13. 結
14. ノンフィクション
15. リスポーン
16. 雷にうたれて
17. ゴーストバスター
18. 優しさに溢れた世界で
19. バンドワゴンに乗って
20. 猫の背
Encore
01. いつか
02. グッバイ