HONEBONE リスタートツアー2021 FINAL
2021年11月21日(日)Shibuya WWW X
北海道・中国・四国・九州・北陸を回ったHONEBONEのツアー『リスタートツアー2021』のファイナル公演が、11月21日(日)、Shibuya WWW Xで開催された。このツアーは、2020年12月リリースのベストアルバム『一本勝負』のリリース・ツアー『“一本勝負”ツアー 2021』の後半の日程を、『リスタートツアー2021』と名前を改めて、行ったもの。ボーカルのEMILYが主演し、HONEBONEが音楽を担当した映画『リスタート』(監督:品川ヒロシ)が、夏に公開されたので、それを受けて、そうしたのだと思われる。このファイナルの日の模様は、ツイキャスで生中継があり、11月28日までアーカイブ配信も行われた。以下のレポは、そのアーカイブ配信を観て書いたものです。
ステージに出て、深々と一礼するEMILYと、アコースティック・ギターを抱えたKAWAGUCHIの間には、加湿器などが載ったカウンターテーブル。その加湿器を指して「潤ってる?」と問うKAWAGUCHI。「いや、もう、乾燥がひどいのよ、本当に。いるらしいよ、歌う時に持って来る人」と答えるEMILY。「HONEBONEと申します。今日初めて来たんだ、って人、どれぐらいいるの?」と手を挙げさせ、「いるんだあー! いっぱい。嘘ぉ、すごいね、賢者だね賢者!」などと喜び、1曲目「赤ちょうちん」へ。
2曲目ではEMILY、ギターとオーディエンスのハンドクラップに乗せて、次の曲のモデルである、週に何度も通うほど好きなごはん屋さんの、顔なじみのおねえさんがやめてしまった、という話を始める。その話が延々と続いたが故に、まずハンドクラップが止まり、次にKAWGUCHIのギターも止まる。ただし、KAWGUCHI、彼女を止めたりはせず、むしろ言葉を足して、火に油を注ぐ──。
という具合に、ほとんどの曲間に「ギター漫談」とも評されるMCがはさまりながら、ゆっくりと進んでいくライブ。「グッズが売れない!」と在庫のダンボールを持ち出し、買って帰れとオーディエンスに迫って拍手を浴びたり、8曲目「満月こわい」ではみんなを立たせて「ホネーズブートキャンプ!」と号令をかけ、両腕の上げ下げを延々と繰り返させたりする。基本的に、笑える、おもしろい、楽しいステージである。
EMILYとKAWAGUCHIのキャラクターのせいだろうが、演者とお客さんの距離が、近い。行きつけの居酒屋でよく隣になる、常連の客同士くらい、近い。にもかかわらず、馴れ合いみたいな、生あったかい空気には、ならない。ピンとはりつめた緊張感のようなものが、そこはかとなく、常にある。コロナ禍でオーディエンスが声を出せないから、というだけではなく、そんな緩い空気と相反するものを、HONEBONEの楽曲が放っているから、そうなるのだと思う。そして、オーディエンスが求めているのも、まさにそこだと思う。
どの曲も、すさまじく切っ先が鋭い。というのは、そもそも音源がそうなわけだが、ライブで、EMILYの歌とKAWAGUCHIのギターに、表情や身体のアクションがついてくると、それがさらに生々しく、リアルに伝わってくる。どの曲も、「自分対世の中」や「自分対他者」に端を発しながら、自分の底の底まで潜っていく。自分のもっとも隠しておきたい部分、もっとも棚に上げておきたい部分を、自分の手で暴き出す。そのように自分を斬ることによって、それを聴く者もばっさり斬られる。「曲で自分ごと聴き手を斬る」感覚、というか。
7曲目に「甘い生活」をやる前に、「胃もたれするような曲が続いてしまったので、少し息抜きの曲を」とKAWAGUCHIは言ったが、確かにこの曲ぐらいだった、そういう機能を果たしていたのは。最初の2曲、「赤ちょうちん」と「オムニマッ」は、この人たちの曲の中では、やや明るめだったり、牧歌的だったりするトーンだが、それでも、悲しみや疲れがべったりとはりついている曲だし。
コロナ禍で、私は本当の友達が増えた。本当に大事な人が見えた。みんなも、もしかしたら、そうなんじゃないかと思う。次の曲は、私がイヤな人間だったから、そのまま死にたくないな、と思って書いた曲です。みんなが私を突き離さないでいてくれたから、私は今もここで歌わせてもらっていると思う──。3曲目の「冷たい人間」を歌う前に、そんなMCをしたEMILYは、なんとか堪えようとしたが、歌う前に涙腺が決壊してしまった。オーディエンスは、黙ったままで、拍手を送った。何かそれが、「がんばれー」と応援する、みたいな感じではなくて、「途中で言葉にできなくなっても、曲を聴けばちゃんと伝わるから大丈夫ですよ」と、オーディエンスが彼女に伝えているように、僕には思えた。強力な曲だらけ、ハイライトだらけのライブだったが、歌を歌っていたわけではないこの瞬間も、ハイライトのひとつだったと思う。
SET LIST
01. 赤ちょうちん
02. オムニマッ
03. 冷たい人間
04. 悲しいニュース
05. 捨てられない花
06. そうじゃなかったじゃん
07. 甘い生活
08. 満月こわい
09. メロディ
10. 生きるの疲れた
11. バンドマン
ENCORE
01. リスタート
02. サラバ!