兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第27回[3月の巻~後編~]

コラム | 2019.04.06 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブについてひとことレポしていく連載の2019年3月後半編、今回は7本でした。最後の空想委員会だけ、事情が事情なので「ひとこと」ではなく長めに書きました。ではどうぞ。

3月16日(土) ビクターロック祭り2019 @ 幕張メッセ国際展示場 ホール9~11

ビクターのアーティスト組が、2つのステージに登場するこのイベント、オフィシャルサイトの即レポ仕事で行きました。私が書いたのは以下です。ぜひ。
BARK STAGE:むぎ(猫)、キュウソネコカミ、Nulbarich
ROAR STAGE:LOVE PSYCHEDELICO、THE BACK HORN

3月18日(月) クリープハイプ @ NHKホール(東京)

尾崎世界観の機嫌やメンタルやコンディションはどうか、今どんなことを考えているか、ギター小川幸慈・ベース&ボーカル長谷川カオナシ・ドラム小泉拓の(以下同)──ということに、ステージ一回一回、ツアー一本一本ごとに、視覚と聴覚を注ぎながら観るのが、僕にとってのクリープハイプのライブだったのだが、このツアー、そこが大きく変わった気がした。
メンタルがどうあろうと、コンディションが最良ではなかろうと、ここだけは揺るぎない! みたいな、大きくて強いものが常に鳴っている、そんなバンドになった気がした。今後ずっとそうなのか、このツアーだけなのかはまだわからないけど、そこがすばらしかった。

3月23日(土)ハンブレッダーズ @ 渋谷CLUB QUATTRO

東京初のワンマンでこのハコがソールドアウト、というかこの日から始まるツアー5ヵ所が全部ソールドアウトしたそうなので、破竹の勢いと言っていいと思う。THE BLUE HEARTSやMONGOL800を想起させるストレートで素朴な歌メロ、青春を謳歌したいけどその能力に著しく欠けていて叶わない少年・青年の心のさまを描くリリック、自らのルーツに忠実だけど、時々、いやしょっちゅうその定型から素敵にはみ出していくギター・サウンド。いずれもキラキラと輝いていて、ああ、これ、半年後にはクアトロ満員どころじゃない按配になっているな、ということが手に取るようにわかるステージだった。
あと、パッとしない日々の中で唯一の救いが音楽である、そのことを歌うとものすごい力を発揮するのもいい。「DAY DREAM BEAT」のサビの、「ひとり 登下校中 ヘッドフォンの中は宇宙」のところ、今後ずっと日本のロックに残るパンチラインだと思う。聴くたび位泣きそうになる、何か。

3月27日(水)小林克也&ザ・ナンバーワンバンド @ 日本青年館

このDI:GA ONLINEで何度もインタビューしてきましたが、小林克也の超長寿洋楽番組『ベストヒットUSA』の企画で行われた小林克也&ナンバーワン・バンドのスペシャル・ライブ。行われた日は、克也さんの78歳の誕生日。そもそものナンバーワン・バンドのメンバーにゲスト・プレイヤーとして難波弘之と藤井尚之が加わっているし、高橋幸宏、鈴木慶一、白井良明、鮎川誠、といったゲスト陣が次から次へと出て来るし、挙句、ナンバーワン・バンドのメンバーだけど、今回はスケジュールが合わなくて自分の代わりを盟友のギタリスト柳沢二三男に依頼した斉藤誠も、結局大丈夫になったらしく、後半で参加。まさにステージ上にレジェンドしかいない状態。その中にあっても飄々と場を仕切りドスの効いたボーカルを聴かせる小林克也、さすが。
あと、MC多いし、そのたびに笑わせるし、基本的にリラックスした空気の楽しいライブだったんだけど、アンコールで全員登場で「Satisfaction」(ザ・ローリング・ストーンズ)でパーッと盛り上がったあと、小林克也&鮎川誠で「Imagine」(ジョン・レノン)の詞の朗読をして終了、というシリアスな終わり方だったのも、とてもグッときた。なぜそういうエンディングにしたのかを考えながら帰途につきました。

  • 兵庫慎司

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