
Sundae May Clubなみなみならぬツアー
2026年8月29日(土)渋谷CLUB QUATTRO
Peach Pitの「Seventeen」をSEにメンバーが登場すると、青い光のなかでスポットライトに照らされた浦小雪(Gt./Vo.)がギターを鳴らしながら「月が出た!」を歌い出す。はやる気持ちが爽やかで粗削りな爆音に乗り、会場は瞬時に純粋で濃密な空気に満たされた。
続いての「ハッピーバースデイ」で浦が歌詞に合わせて一瞬子どものようなあどけない声で歌うと、会場からは歓声が沸く。カジュアルな装いにミントグリーンのギターを抱え、ロングヘアーに星型のヘアピンをつけたスタイリングは、彼女の持つ少年性と少女性をどちらも引き立てていた。「幽霊まぼろし」ではみやはら(Gt.)がステージ前方にせり出して熱いギターソロを展開するとフロアも負けじと歓声を上げ、その様子を後ろから見守るヒロト(Dr.)も豪快で硬派なビートを繰り出す。普段はクールな面持ちでドラムを叩く彼であるが、この日は非常にほがらかな表情を多く浮かべていた。
観客の多くはメンバーそれぞれのバンドマンとしてのキャラクターを把握しているようで、彼らならではのプレイを浴びると反射的に興奮を表明する。そんなフロアに触発されてか、3人ものびやかに自身の等身大や、満員のCLUB QUATTROに懸ける熱い思いをむき出しにした。そんな無邪気なフロアとメンバーをスマートに支えるのが、サポートベースのとものしんである。彼は的確でパワフルなプレイだけでなく、1曲目からさりげなくクラップを煽ったり、各メンバーとも積極的にアイコンタクトを取るなどして、会場全員が気持ちよくライブを楽しめるムードを作っていた。ステージとフロアが呼応して熱量を高めていく様子は、大きな波を眺めているように壮観だ。
浦はフロアを見渡しながら「みちみちだなあ。ソールドアウトありがとうございます!」と笑顔を見せる。そしてここでまた驚嘆の光景を目の当たりにした。浦がMCで話す内容をまとめているMCノートを持たず、堂々といま湧き上がる自分の言葉を届けているのだ。そういえば彼女はこの日、トレードマークのメガネも登場の段階からかけていない。これは変化を楽しめている、はたまた新しい世界にどんどん飛び込んでいきたいという意思表示かもしれない。「おかげさまで本当に本当に音楽が楽しくて。めちゃくちゃいいアルバムができて、今がいちばんかっこいいと思うので楽しんでいってください」と宣言すると、会場からは大きな歓声と拍手が沸いた。
その後も、4人がコミュニケーションを取りながらアンサンブルを作り上げた「しとろんの週末」、浦が「歌って!」と呼びかけると盛大なシンガロングが起こった「PLAY!」、ポップソングを荒々しい演奏で彩る「Teenager」と、勢いのあるロックナンバーをたたみかける。この日のSundae May Clubにクールダウンやペース配分という概念はなさそうだ。浦はあらためてソールドアウトへの感慨に浸り「みんなのおかげでどんどんでっかい夢を持つことができている」「みんなにも夢を見てほしいし、サンデメをでっかいところで観たいと思ってもらえたらうれしい」と未来に熱い視線を送る。そして「バンドを始めた頃の“なんでもできるぞ!”という気持ちをずっと忘れずに活動していきたい」と胸を張った。
Sundae May Clubの楽曲はギターソロが多く、さらにこの日のセットリストは『なみなみならぬ』というアルバムやツアータイトルと連動してかハイテンポのロックナンバーが多いため、頻繁にみやはらのギターソロと、その際の豊かすぎる表情を味わえることも小気味よい。そんな彼の様子を、浦もヒロトもあたたかい眼差しで見守っている。いなせでありながらもどこかファニーな空気感を纏っているのも、Sundae May Clubの味である。大学で出会った頃の3人も、こんなふうに笑い合って関係を深めていたのだろうか。彼らの空気感には、今も学生時代ならではのときめきが息づいている気がしてならない。
「サボン・セシボン」ではバンド活動の充実と歓喜の念が漲り、浦の独白のような「ひとり・ゆくえ」では曲に綴られた切なさをダイナミックな演奏があたたかく包み込む。そこからドラムのつなぎとみやはらの掛け声に合わせ、観客が高らかにカウントすると「夜を延ばして」になだれ込んだ。メンバーそれぞれの素朴でありながらも際限のない情熱が嘘なく混ざり合う様子はとても美しく、しばらくこの音に身を委ねていたいと思うほどに包容力に満ちていた。
ライブ中は心理的な飢餓感から解放され、幸せを感じられていると明かす浦は「歌うのが好きで生まれてきたと思います。なのでめちゃくちゃ歌います!」と告げ、凶暴なポップロック「フロム・ヘル」から「晴れるな」「やまない」「少年漫画」と雨や青空をモチーフにしながら反抗心や閉塞感を瑞々しく落とし込んだ楽曲をたたみかける。それらを堂々と歌う浦は、当時の自分もすべて抱えて突き進もうとする気概に溢れていた。いつも彼女を突き動かしてきたのは信じたいという無垢な願い、信じるという強靭な意志だったのかもしれない。それはみやはらやヒロトも同様だろう。自分自身やメンバー、心を揺さぶられる音楽、Sundae May Clubというバンドを信じてきたからこそ、3人は希望も不安もエネルギーにすることができたのだ。
そしてスペシャルゲストとして少年キッズボウイのきもす(Tp)をステージへと招き入れる。2024年に少年キッズボウイが自主企画ライブにSundae May Clubを招いたことがきっかけで両者は親交を深めた。きもすがレコーディングにも参加した「目黒シネマロマンス」でロマンチックな空気に様変わりさせると、続いての「渦中ロック」にもきもすが参加する。トランペットの音色が入るとスカパンクのようなテイストも加わり、みやはらととものしんの歌声に観客も歌声を重ねて、ヒロトも笑顔で溌溂としたビートを打ち鳴らすなど、真夏の太陽以上の輝かしい情景が生まれた。
きもすがステージから去り再び4人編成に戻ると、無骨なサーフロック「また夏日」、バンドの固い結束を感じる演奏が胸を打つ「キッズ・イン・スコール」と立て続けに披露し、本編のラストをアルバムの1曲目「だって眩しくて」で締めくくる。まだまだ速度を上げ続けるという野心が音の隅々にまで通い、それを後押しするようにフロアからもポジティブなムード漲るシンガロングが起こった。
アンコールではまず、9月2日にデジタルリリースされる8人組ユニット・ダウ90000 単独ライブ『40000』の書き下ろし主題歌「爆音モノローグ」をライブ初披露する。“どこへだって行ける”というたくましい意志が漲る歌詞とサウンドを、カラフルな照明がポップに輝かせる。その光景はポップネスとロックマインドを併せ持つSundae May Club、演劇とコントの境界線を飛び越えるダウ90000という、カテゴリーにとらわれず自身の表現を自由に追求している彼らならではの軽やかさを視覚化するようだった。
浦が「東京に出てきて、こんなにもたくさんの人に観てもらえて。みんなの顔を見ていると、本当にバンドをやってきて良かったと思います」と感謝を告げた後、「東京も大好きな街になったので、東京の曲を作りました」と言い「東京」を披露する。やわらかい表情で届けられるのびやかな歌声と演奏は頬を撫でる風のように心地よく、その感触からも彼らが東京で様々な良い出会いを得られたこと、地元だけでなく東京にも居場所を見つけられたことがうかがえた。
そして初期曲である1stシングル「春」でセミファイナルに幕を下ろす。だがそのムードはひとつの区切りをつけるというよりは、間近に控えるファイナル、10月からスタートする全国8ヶ所を回るワンマンツアー「爆音モノローグツアー」、2027年やその先の未来を見据えているように感じられた。これまでの歩みもすべて抱きしめて、今この瞬間を噛み締めながらも笑顔で快進撃を続けていく3人の姿は、瑞々しく眩しい。Sundae May Clubが信じてきたものが次々と花開いた90分。この花束とともに、彼らはこの先存分に羽ばたくだろう。
SET LIST
01. 月が出た!
02. ハッピーバースデイ
03. 幽霊まぼろし
04. しとろんの週末
05. PLAY!
06. Teenager
07. サボン・セシボン
08. ひとり・ゆくえ
09. 夜を延ばして
10. フロム・ヘル
11. 晴れるな
12. やまない
13. 少年漫画
14. 目黒シネマロマンス
15. 渦中ロック
16. また夏日
17. キッズ・イン・スコール
18. だって眩しくて
ENCORE
01. 爆音モノローグ
02. 東京
03. 春





























